2chの怖い話

連続幼女誘拐殺人事件 宮崎勤が新聞社に送った犯行声明全文

連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤が今田勇子と名乗ってで新聞社に送った
犯行声明文と犯行告白文の内容です。

【犯行声明文全文】

今野まりちゃん宅へ、遺骨入り段ボールを置いたのは、この私です。
この、真理ちゃん一件に関しては、最初から最後まで私一人でしたことです。
私がこうして真実を述べるのには、理由があるからです。
まず、あの段ボールに入った骨は、明らかに真理ちゃんの骨です。
その証かしを立てます。

まず、どうやって連れ去ったかを述べましょう。
去る8月22日、私は、私には、どうしても手をのばしても届くことのない子供
を、今日一日は自分のものにしたい思いにかられ、入間ビレッジの8号棟裏に
車を止め、あのプールでは、親に送り向かえをされない、一人で行き帰りをす
る子供達の方が多いことを、日頃から知っている私は、そのプールの出口付近
に一人で立っていました。

すると、真理ちゃんと、兄弟の男の子と二人が出て来て、ポストの所で別々に
なり、真理ちゃんは、一人で家に帰る様子でした。水着で歩いて行くので、家
が近い筈だとにらみ、つけ回す距離も短くてすむと思ったのです。
・・・思った通り、真理ちゃんは家へ入りました。母親も中に居たようです。
さて、私は、母親の顔を見てから立ち去ろうと思い、7号棟入口付近に立って
いましたが何と真理ちゃんが、すぐに出て来たのです。

・・・そして、真理ちゃんが歩道を渡ると私は確信したので、私は、通りを走
って、歩道橋の向こう側から走ってのぼり、上で真理ちゃんを待ち伏せ、言葉
をかけて、真理ちゃんをつかまえます。うまくいったというより、女同志でし
たので、真理ちゃんは怪しまなかったと説明した方が適切でしょう。
話しが、思ったより、思い通りにまとまり、「私が、車のクーラーを先に行っ
て、かけているから、少したったら来てね。」と言って、先に車へ行き、乗っ
て待った所、すぐに真理ちゃんは一人で来ました。

そして、車を出しました。さすがに、「私をどこに連れてくの。」と、いつ聞
かれるかひやひやしていましたが、急に、「私、泳ぎたいの。」と、真理ちゃ
んが言い出したのです。願ってもない展開でした。即座に、「おばさんもちょ
うど、川へ行きたかったところなの。」と、口を合わせました。

・・・とある川に着き、車を降り、二人で歩いて川まで行きます。やはり数人
の人とすれちがいました。が、私達が、親子に見えたのでしょう。一人も怪し
む人は居ませんでした。

ここに証しの一つを立てましょう。新聞やテレビで、よく真理ちゃんの写真が
掲示されましたが、プールからあがった真理ちゃんのぬれた髪は、その、どの
写真の髪型のものでもありません。これは私しか知らない事実であります。
つまり、たとえ私達を目撃した人が、真理ちゃんを見たにしても、“テレビで
お捜しの真理ちゃん”を見ていないのです。

そこで、真理ちゃんを泳かせ、真理ちゃんを見守るのではなく、私達二人を誰
かが見ていないかどうかを見守ります。居る様子はなく、来る様子さえありま
せんでした。すると、誰も来そうにないという気が集中して、異様な程に、胸
が高まってくると、なぜかモヤモヤしてきました。
そして、子供を産むことが出来ないくせに、こうして目の前に自由な子がいる
という、自分にとっての不自然さが突如としてぶり返し、「このまま真理ちゃ
んを家に帰しては・・・」という思いのよぎりと、「今なら誰も見ていない」
という思いのよぎりが交差し合い、モヤモヤした、とめどもない高なりが一気
に爆発し、目の前の水を武器に、私は、真理ちゃんの髪の毛をつかみ、顔を川
へ沈め、決して自分が、いいというまで、頭を水面から上げさせませんでした。

・・・さあ、今度は隠さなくてはなりません。私は、近くの、背たけ以上もあ
る夏草の茂みの中へ、だっこをして持って行き、そこへ置いて逃げました。
走りながら、おしゃべりをしていると、雨が急に降ってきました。その時、私
に、口実が一つ増えました。「雨が降ってきたから、入間川じゃない川へ行こ
うね。」と言い、さらに、理由良くして、団地から遠ざかります。

とある川に着き、車を降り、二人で歩いて川まで行きます。やはり数人とすれ
ちがいました。が、私たちが、親子に見えたのでしょう。一人も怪しむ人は居
ませんでした。

そこで、真理ちゃんを泳がせ、真理ちゃんを見守るのではなく、私たち二人を
誰かが見ていないかどうカを見守ります。居る様子はなく、来る様子さえあり
ませんでした。すると、誰も来そうもないという気が集中して、異様な程に、
胸が高まってくると、なぜかモヤモヤしてきました。そして、子供を産むこと
ができないくせに、こうして目の前に自由な子がいるという、自分にとっての
不自然さが突如としてぶり返し、「このまま真理ちゃんを家に帰しては・・・」
という思いのよぎりと、「今なら誰も見ていない」という思いのよぎりが交差
し合い、モヤモヤした、とめどもない高なりが一気に爆発。

さあ、今度は隠さなくてはなりません。私は、近くの、背たけのある夏草の茂
みの中へ、だっこをして持って行き、そこへ置いて逃げました。

真理ちゃん宅に段ボールを置いた後の報道以来、犯人は今まで遺体を隠し持っ
ていたと思われていますが、とんでもありません。いちいち持ち運ぶ余裕など、
犯人にあるわけがありません。私は、つい最近まで、私しカ知らない場所で、
真理ちゃんを持ち続け(置き続け)ていたのです。

では、どうして真理ちゃんの遺骨を運ぶようなことをしたのかを説明します。
真理ちゃんを手にかけた翌日、ニュースで「真理ちゃんが不明となり、まだ見
つかっていません。」と聞きました。「ああ、まだ、あのままなのか」と思う
と同時に、「行ってみようかよそうか」の迷いが消えたので助かりました。
ところが別の番組で「真理ちゃんの母親が寝込む寸前」だと聞かされた時は、
今まで「真理ちゃんに悪いことをした。」とだけ思っていたのが、初めて「真
理ちゃんを可哀そうに」と思いました。
私は、今の今まで、一人で苦しんできました。正美ちゃん、絵梨香ちゃんの事
件が起こりました。おそらく、私の事件に、触発された誰かが、面白半分に起
こしたのでしょう。テレビで父親が、「(死んでいても)早く見つかって良か
った。」と、話しているのを見て、初めて私にも何か決心じみたものが芽ばえ
ました。「夜ならば、真理ちゃんの遺体を、そのうちにみつかりそうな場所ま
で運べるかもしれない。」と思いました。

そして、やはり、また、やろうかよそうかと迷い続けてきましたが、先日、や
っと決心が着き、実行することにし、現場へ行きました。
ところが、どうでしょう。てっきり、冷たくかたくなった人間がそこに居ると
思っていたのに、何とそこには、真理ちゃんの骨だけになっているではありま
せんか。私は、思わず「ギャーッ」と悲鳴をあげそうになる程、近づくのもい
やになり、もう私は何があってもたずさわるものかと一目散さんに逃げました。

ところが逃げながらも、故か一つ何かが頭に浮かんだのです。「骨なら箱に入
る。骨だから箱に入れて、人に見られても運んで行ける。」と、急に、利点が
頭に浮かんだのです。そして、逃げるための走りが、実行に移す(箱をとりに
ゆく)急ぎ足へと変わったのです。今の今まで、どうにかして、両親に知らせ
たくてしかたがなかったのですが、今回こうして、真理ちゃんが骨になってい
さえしなければ、家まで帰そうなんて気にはならなかったです。

これは明らかに、真理ちゃんの骨です。遺骨を焼いていたら自然に骨は崩れて
ゆき――人間は骨になると、まず、その骨は、予想以上に小さくて、少なくな
るんですね。箱には、拾った骨を全て入れたつもりです。
今、この一件が、「恨み」だとか、「いたずら」「いやがらせ」「挑戦」だと
か言われていますが、全く違います。私は、あくまでも、真理ちゃんを「帰し」
に来たのです。

私はただただ真理ちゃんを帰しに行ったのです。ですから早く、真理ちゃんの
御葬式をあげてやって下さい。あれが真理ちゃんなのです。本当なのです。
誠に身勝手ながら、私は、やはり捕まりたくはございませんが、このようなこ
とは、もう決していたしません。
先日、テレビを見て、母親が警察から誤報を聞き「これでまた待つ希望が持て
ました。」と話しているのを見た時に、これは、きちんとすませてあげなけれ
ばいけない。このままでは、本当に永久に真理ちゃんに気付かずに、家族は一
生を終わってしまうと思い、これだけはと、急いで声明文を送った次第です。

あの骨は、本当に真理ちゃんなのですよ。

(1989年2月10日、11日)


普通の犬じゃない

「この犬は普通の犬じゃありません。それでもいいんですか?」

それが私が後に八房と名づける犬を引き取ると口にしたときの団体の担当者の言葉だった。
詳しく話をきいてみるとこういうことらしい。
八房は一度ある非営利の動物愛護団体にひきとられたあと、足をへしおられた。
それが偶然であったか故意であったかはさておき、
病院にもつれていかれずに曲がってくっつくまで放置されたのは間違いないという。
動物愛護団体がひきとった筈の犬がなぜそんなことにと問うと。
担当者は泣きそうな顔をして、好きだからやってる所ばかりじゃないんですよねと前置きをしておしえてくれた。
それまでも話にはきいていたが、大衆の同情をひきそうな動物ばかりをひきとって寄付金を狙う団体も少なくなく、
彼を引き取った団体も実態はそういうものだったらしい。
だが八房はその目的、集金のためには不適格だったらしく的確にするためにそんな目に合わされた。
いつもは我々に抗議をしにくる立場の団体の人が萎縮した姿だったのはこれがはじめてだ。
(ちなみにこのときの私の職は保健所の職員である。)
どれだけそれが重大な事と相手が痛感していることか理解して私は追求したりせず話を先に進めた。
どうして、その団体の人が来ないのか。
何故別の団体がもってきたのかと聞くと該当の団体が既に解散していると教えられた。
団体はなくなっても人は残るだろう?とまで問う気はおこらなかった。

「近くの施設で処分していただこうとしていたのですが。この犬ここに来たがってまして」

どういう事かと問うと、抗議用のリストのたばねたファイルをひらいていると
きまってそのリストを凝視したのだという。
施設につれていくことが決定した時も、ここ以外のところに連絡をとろうとすると盛んに吠え立てたという。
静かにしているときはきまってやけに電話の音が遠いとかノイズがやたらとするのだそうだ。

「多分あなたが目的だったんですね」

気遣わしげにこちらをうかがう担当者の前で私は重苦しくうなりながら鼻から息を抜いた。
その時あらためて八房の顔をみると、あることにきづいた。
私は引き取られていく前八房の世話係だった。なつかれていたし、憎からずおもっていた。
しかし上司から一匹ひきとれば次から次。
それで生活が崩壊したものも沢山いると教えられていた為自分でひきとることはなかった。
結果、酷い場所にひきとられ苦しんだ八房は私の行為を裏切りと考えるようになったのだろう。
彼女につれてこられていこうまったく私からそらされない視線には憎悪が宿っているように感じられた。

「どちらにしても。とてもではないけれどうちでは他の引き取り先もみつけられないんです。
かわいそうだけど処分するしかありません。だから引き取っていただけるならこんなに嬉しいことはないんですけど。」

そんなことを言う担当者に私は彼女の抱く懸念ではなく何故引き取り先もみつけられないのか問うた。
彼女はおずおずと封筒を差出し目をそらす、私は中身を見て言葉を失った。
カメラが向けられることをいやがっているからその顔は威嚇と怒りにゆがんでいたが、そんなものはかわいらしい。
どうみても犬やら猫やら動物の顔としか思えない模様めいたものがいくつも浮かんでいたのである。
「カメラをいやがるだけだったらいいんですけど。撮る度こんなではとても支援者のかたにはみせれないんです。」
そういわれているあいだ中わたしは八房をながめた、相変わらず八房は私をにらみつけている。
ケージの中から向けられる射抜くような視線、ケージからだされたら首にでもくいつかれそうだった。
しばらく無言でいたことを担当者はひきとる気が失せたとおもったのか、封筒にいれられた金を出し

「供養はてあつくお願いしいます」と声をひそめた。

「餌代としてもらっておきますよ。これから物入りになりそうなので。そういうことならいいでしょう?」

そういって私がふところにそれをしまうと彼女は驚いて顔をあげた。
にらみあいのあいだに私は彼の名前をすでに用意していた。

「よくも悪くもこんなに霊験あらたかな犬なんてほかにいないでしょ?な、八房」

考えた名をよんでみるとはじめて音で意図を示された、ぐるるという唸り声。
返事をするということは気に入らなかったわけじゃなかろうと。

「でも…危ないですよ。解散した団体にも不可解なことがいくつも」

心変わりをうながそうとする担当者を手で制し。
「これが一番なんです、私にとっては。」
そういいながらどうやって示したものか考え、
思いつきでジャーキーを取りだし試しにケージについた穴に近づけた。
指にかみつかんばかり(というか最初からそのつもりだろう)に勢いよくだがくらいついてはくれた。

「ね?普通の犬じゃこうはいかない。警戒して食わないところです。私ならうまくやってけます。」

すでに八房との生活のプランは頭の中にあった。
自信をもっていうと担当者は八房とわたしをみくらべたあと、しばし話をしてから去っていった。
こうして私は八房の犬となった。

彼は生きている間にかずかずの不幸を私にもってきてくれた。
保健所の中にやってくる犬達の中で情を通わせた犬がいると感づいて吠え立てる。
引き取れと命じるのだ。
基本的にわたしは八房の命令に忠実だった。
だが、家計のためにとやむなく見捨てた時は医者にも原因不明だという高熱に一週間もやられたものだ。
人間が動物に都合をおしつける世の中で、八房だけが動物の都合を人間におしつけられる立場だった。
とはいえそれではこっち餓死するし、そうなると犬達の面倒は到底できない。
さしもの八房も人間の言語まではわからずディスカッションは混迷を極めたが
辛うじて私の生存ラインの出費の範囲内で納得してもらえるようになった。
だがそんな幸せな生活も長くはつづなかった。
彼はたかだか三年私のもとで生きて、亡くなってしまった。
八房の魂がまだ肉の内にとらわれている内になんとか八房との関係修繕をしたかった。

今私は自宅に飼っている犬を人質として辛うじて八房の祟りを免れているに過ぎない。
八房のためにたてた供養塔を撮影してそれは確信に変わった。
引き取る前にみせられたものより格段に犬の顔は増えている。


芽殖孤虫

さて、今から50年ぐらい前に、九州の天草というところに24歳の女性が住んでいたそうです。
この女性の下半身に奇妙なブクブクした皮下の膨らみが現れました。
この膨らみは、徐々にですが、確実に増えて行きました。
誰も診たことのない不思議な膨らみに、意を決したある医師が、思い切ってメスを入れてみました。
すると……

膨らみは皮下に出来た水の入った袋で、中に長さ数cmの白いクネクネした虫が入っていました。
袋はたくさんあり、中にそれぞれ虫が入っている様です。

なんということか!!

早速、何という虫か調べられましたが、条虫(扁形動物)の幼虫らしいのですが、
何の幼虫か、さっぱりわかりません。
この虫は、恐ろしいことに、幼虫でありながら、人の体内で分離して増えているようです。

日本で当時4例目、芽殖孤虫出現す!!!

どこから来たのか、幼虫は人の体内に入り、人固有の寄生虫でないためか成長せずに皮下をさまよい、
そして自分の周囲に水の入った袋を作り、
中で植物が発芽するように枝分かれして増殖し、増えた幼虫はまたさまよい増殖する。

治すには、一匹残らず手術で取らなくちゃいけませんが、
すでに大変な数だったらしく、残念なことにその患者さんは亡くなってしまいました。

化け物……

ヒトを喰い尽くす虫と書きましたが、実際に人を喰っているわけではないと思います。
しかし、増殖する虫が全身を這い回れば、
大変な臓器出血か臓器不全を引き起こすのは必定で、間違いなく命が危ない疾患です。

1990年、50年近い沈黙を破って、芽殖孤虫は忽然と東京に現れました。
さまざまな感染経路が考えられ調査されたそうですが、
結局、虫の正体も感染経路もはっきりしないまま、今日を迎えています。

その後、報告はありませんが、次はいつどこでこの虫は現れるのでしょうか?
感染経路が分からない以上、あなたでないと、誰も言えないのです……
殖孤虫、今の所「皮膚科」で見つかることが多いそうです。
虫さされ程度のポチッとしたふくらみで、赤みもかゆみのないのですが気になって皮膚科に行ったところ、
芽殖孤虫であることが分かるといったケースが相次いでいるようです。

当然ながら皮膚科ではどうすることもでいないので、然るべき医療機関に送られるわけですが、
それは皮膚科の医師が芽殖孤虫の症例を知っていた場合の幸運なケースで、ほとんどの場合は、
何らかの虫刺されやかぶれなどと診断されてしまい、芽殖孤虫とは気づかないままらしい。

またそれ以上に、痛くもかゆくもなく、赤くもなってないごくごく小さな腫脹程度では、
せいぜい市販薬を塗ったりするくらいで気にしない、気づかないという人がほとんどだろう。
寄生から増殖を始めるまで約三ヶ月、最近妙なポツポツができたという人はいませんか?

——————————

ちょっと違うけど私の従妹がボランティアで南米だかに行った時のこと。
現地の人に外に干したものは必ずアイロンかけてくれって言われたそうな。
ところが従妹はそれを忘れて直接Tシャツかなんか着てしまった。

実はその地方にはおかしな虫がいて、成虫が干してある洗濯物にタマゴを産む。
その幼虫は植え付けられた衣類から、人間の体温等で孵化し、人間の肉を食って成虫になるらしい。
そのタマゴを殺すためにアイロンかけろ、って言われたわけで。
(ちなみに現地の人は黒人で肌が硬いから平気らしい)

従妹は後日、腕の下を妙な幼虫がはいずるようになったそうです。
その虫は従妹の身体を食いあらして、つめで押すとぷちっと出てきたらしい。
結局殺虫剤入り塗り薬で直したらしいけどそんなこと焼肉やで言わないでくれよ…。
気持ち悪くて喰えなくなっちゃったじゃないか。


読心術

三年ほど前の夏の話。

友人の部屋で大学の講義をさぼり、何するでもなくダラダラしていた。
他愛も無い馬鹿話、その中で友人がふとこんな事を口にした。
「なあ、もしこの世に読心術できる奴がいてさあ、俺が今読心術の出来る奴って
いるのかなあって考えてる事も読んでるって考えてるのも読んでるのかなあ?」
…人間、暇になると何て非生産的な事を考えるんだとその場は苦笑していたのだが、
翌日からそいつが音信不通になった。
落とせないゼミにも顔を出さず、一緒だったバイトも無断欠勤した。携帯も通じない。
そんな事が三日ばかり続き、さすがに何かあったかと部屋を訪ねて行った。

部屋の前まで来ると、中から妙な音が聞こえる。人の歌のような、機械音のような音。
思いきって開けたドアの向こうに彼はいた。カーテンを締め切った真夏の部屋。
その真中で彼は歌っていた。直立で、一点を見たまま声を枯らして。

放心している彼を何やかやとなだめすかし、事の次第を聞いた。
私と馬鹿話をした日の夜だったという。寝いりばなに電話が来たのだという。
「あの…」聞いたことの無い、掠れた女の声だったという。声が小さくてよく聞こえない。
「…ない…よ」はぁ?「きょう…だれ…」どなた?「…おも…じゃな…」 同じような言葉をニ三度繰り返した後、沈黙が流れた。
気持ち悪くなった彼が受話器をおこうとした時、はっきりとした声で女が言った。

「あなたが今日思った事、誰にも言うんじゃないよ」

それから三日、何も頭に浮かべないように、歌い続けていたのだという。


死者に会える方法

これは叔父さんがイギリスに滞在していた時に、現地のイギリス人の仕事仲間から聞いた話だ。
とある青年がいたと言う。学生で、同じ学年に付き合っている彼女がいた。
非常に仲睦まじく、お互い卒業したら結婚の約束までしていたと言う。
だが、ある日不幸が起きた。彼女が交通事故で死んでしまった。彼女は歩行者で、運転手の脇見運転からなる、悲劇の事故だった。
彼は病院に駆けつけた。死因は脳挫傷で、遺体は眠っているだけの様な、本当に綺麗な物だったと言う。
彼は深く悲しみ、絶望した。葬儀は、彼女の遺族らと共に、深い悲しみの中、行われた。

彼は抜け殻の様になってしまった。
学校へもあまり出席せず、彼女と同居していた古いアパートに篭りっきりの生活をしていた。
少しでも彼女の思い出に触れていたいが為、居間・台所・風呂・玄関・寝室・トイレに至るまで、
彼女との思い出の写真を置き、何時でも目に入るようにしていた。
そんな彼を心配して、友人達が良く部屋に出入りして励ましていたが、あまり効果は無かった。
2Fの真上の部屋は小さな教会になっており、彼と親しく、割と歳も若い神父も励ましにやってきていたが、効果はなかった。
毎日、飢えない程度の粗末な食事をし、彼女の写真を見つめて過ごす日々が続いた。

ある夜。彼は、子供の頃に聞いた話をふと思い出した。

「死者と必ず会える方法がある」

その方法とは、

「時刻は、深夜2時前後が良い。まず、会いたい死者を思い浮かべる。その死者の遺品があればなお良い。
家の門を開けておく。ただし、家の戸締りは必ず完璧に施錠する事。
遺品を胸に抱き、蝋燭1本にだけ火を灯し、部屋の灯りを消し、ベッドに入り目を瞑る。
そして、死者が墓場から這い出てくるのを想像する。生前の綺麗な姿のまま…
死者は、ゆっくりゆっくり、自分の家に歩いてくるのを想像する。
1歩1歩、ゆっくりと…そして、門を通り、玄関の前に立つのを想像する」

想像するのはそこまで。そして、絶対に守らなければいけない事は

「死者が何と言おうとも、絶 対 に 家 の 中 に は 入 れ な い 事」

だった。
扉越しにしか話せない、何とも切ない事ではあるが、それがルールらしい。
青年は、漠然とそんな話を思い出していた。会いたい。迷信だろうが作り話だろうが。もう1度会って話したい。
もちろん、迷信だとは頭では思っていたが、もしも「彼女と話した様になった気がしたら」 いくらか心も休まるかもしれない。
と、自分へのセラピー的な効果も期待し、それをやって見る事にした。

時刻は、深夜2時ちょっと前。オートロックなんて洒落た物は無いので、アパートの門を開けておく。
生前、彼女が気に入っていたワンピースを胸に抱き、蝋燭を灯し、部屋の灯りを消し、彼女の「蘇り」を想像した。
アパートは老朽化が激しく、2Fの真上の教会(彼の部屋の天井に当たる)から、何やら水漏れの様な音がする。
ピチャッ…ピチャッ…彼の部屋のどこかに水滴が落ちているらしい。
そんな事はどうでも良い…集中して…生前の…綺麗な姿で…彼女が微笑みながら…部屋にお茶でも飲みに来る様な…

ドンドン ドンドン

ハッ、と目が覚めた。いつの間にか寝ていたらしい。

ドンドン ドンドン

何の音…?隣の住人?隣人も夜型の人だから、うるさ

ド ン ド ン ! !  ド ン ド ン ! !

…違う。自分の部屋の玄関のドアを、誰かが叩いている。時計を見ると、深夜2時50分。
こんな時間に友人…とは考えにくい。…まさか。流石に冷汗が額を伝う。
蝋燭を手に持ち、恐る恐る、玄関に近づく。叩く音が止んだ。

「…誰?」

返事がない。

「00か…?」

彼女の名を呼ぶが、返事が無い。恐る恐る、覗き穴から覗く。
長い髪の女が、後ろを向いてドアの前に居る!!何者かが、確実に居る!!

「00なら答えてくれ…」

青年は、ふいに涙が溢れてきた。楽しかった思い出の数々が蘇る。

「寒い…」

ふいに、女が口を開いた。彼女の声の様な気もするし、そうではない気もする。

「寒い…中に入れて…00」

女は青年の名を呼んだ。涙が止まらない。抱きしめてやりたい!!青年は、ルールの事など忘れて、ドアを開けた。
女は信じられないスピードで、後ろ向きのまま、スッ、と部屋に入った。
青年が顔を見ようとするが、長い髪を垂らし、俯いたまま必ず背中を向ける。
青年が近づこうとすれば、スッと距離を置く。

「とりあえず、ベッドにでも腰掛けてくれよ…」

青年が言うと、女は俯いたままベッドに腰を落とした。
しかし、この臭い…たまらない臭いがした。彼女が歩いた跡も、泥の様なモノが床にこびり付いている。
しかし、彼女は彼女だ。色々と話したい。
死人にお茶を出すのも妙な気がしたが、2人分の紅茶を入れ、彼女の横に座った。
蝋燭をテーブルに置き、青年は語り尽くした。
死んだ時苦しくはなかったか、生前のさまざまな思い出、守ってやれなかった事…
1時間は一方的に語っただろうか。相変わらず彼女は俯いたまま、黙ってジッとしている。
やがて、蝋燭の蝋が無くなりそうになったので、新しい蝋燭に変える事にした。火をつけて彼女を照らす。

…おかしい。ワンピースの右肩に、蛇の刺青が見える。彼女はタトゥーなど彫ってはいない。
足元を照らす。右足首にも、ハートに矢が刺さっている刺青。
というか、黒髪…??彼女はブロンドだ…言い様のない悪寒が全身を走る。
誰だ…!?電気をつけようとしたその時、女が凄まじいスピードで起き上がり、青年の腕を掴む。
凄まじい腐臭。女がゆっくり顔を上げると、蝋燭の灯りの中、見たくもない顔が浮かび上がってきた。

中央が陥没した顔面。合わせ絵の様に、左右の目が中央に寄っている。
上唇が損壊しており、歯茎が剥き出しになっている。飛び出ている舌。
青年は魂も凍るような絶叫を上げたが、女は万力の様な力で、青年の腕を締め上げる。
女が何か呻く。英語じゃない…ロンドンのチャイナタウンで聞き覚えのある様な…
まさか…!!彼女を轢いたのは、在英の中国人女と聞いている…その女も即死している…こいつが!?殺される!!

青年がそう思い、女が顎が外れんばかりに損壊した口を大きく開けた瞬間、
凄まじい雷か破裂音の様な音が室内にこだまし、天井が崩壊してきた。
女は上を見上げ、青年はとっさに後方に飛びずさる。崩壊して落下する瓦礫と共に、大量の水が流れてきた。
女は「ギッ」と一言だけ発し、瓦礫と大量の水に埋もれて消えた。
崩壊は、天井の一部だけで済んだ様だった。
青年が唖然として立ち尽くしていると、上から寝巻き姿の若い神父が、驚愕の表情で穴を見下ろしていた。

その後、アパートは、消防・警察・深夜に爆音で叩き起こされた野次馬達、等で大わらわとなっていた。
調べによると、2Fの神父の教会兼自宅の、バスタブと下の床が腐食しており、それが崩壊の原因だと言う。
ただ、確かに腐食はしていたが、今日の様に急に床ごとブチ破る様な腐食では無い、という点に、警察消防も、首を傾げていた。
さらに、神父は月に1度、聖水で入浴していた。その日、バスタブに浸っていたのは聖水だったという。
もちろん、青年は女の事など誰にも話さなかったし、瓦礫の下にも誰もいなかった。
ただ、血の混じった泥の様な物が一部見つかったという。

そして、青年は不思議な事に気がついた。
部屋の至る所に散りばめていた、彼女との思い出の写真立てが、全て寝室に集まっていたのだと言う。
まるでベッドを円形に囲む様に。
青年は、部屋を覗き込む野次馬の中に、微笑む彼女を見た様な気がした。


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