2chの怖い話

何故だ

昔、まだ俺が小学生だった頃。

夏休みに入っていて、一日中家でゴロゴロしていた。
しかし、その日は家の近くのヨーカドーで母親と服を買いに行く予定だったので、準備を整えて家を出た。

ヨーカドーまでは徒歩では長く、自転車で行った。
その途中、歩道を自転車こいでいると向こうからよぼよぼの爺さんがふらふらと自転車をこいでいた。
俺は歩道の右側をこいでいたが、爺さんのふらふらな運転のせいで俺の自転車と危うくぶつかりそうになった。

俺がブレーキをかけたので間に合ったようなものだ。
「危ねえジジイだな。。」
と思ってその場から立ち去ろうとしたが、爺さんが急に俺の腕を掴んで
「何故避けられなかったーーーーーーーーーー!!!」
と叫んだ。
「何故左に避けようとしなかったーーー!!!」
と何回も繰り返し叫んだ。

俺は
「爺さんの運転がいけないんだろ・・・」
と思ったが、頑固な年寄りにそんなことを言っても時間の無駄なので、とりあえずひたすらに謝った。
「何故だーーーー!!!何故避けられなかったーーーー!!!!」
「すいません。これから気をつけます。」
「危ねぇだろーーー!!!!!」
「すいませんでした。」
とりあえず謝ったので先に進もうとしたら、爺さんがまた俺の腕を引っ張ってくる。
「何故だーーーーーー!!!」
いい加減ウザくなったので、無理やりに腕を払い、一目散にその場から逃げた

ヨーカドーで仕事帰りの母親と合流し、服を二三点買った。
母親は食料品も買いたいから先に帰ってて、とのこと。

俺は一人で出入り口に向かい、駐輪場に入った。
するとさっきの爺さんが駐輪場のど真ん中に立っていて、俺のほうを睨み付けていた。

さすがに気味が悪くなり、俺の自転車へは向かわずにそのまま店へ戻った。
食料品売り場に行くと、丁度会計を終えた母親がいた。
事のあらましを説明すると、母親も「うーん」と首をかしげた後に一緒に駐輪場に戻ることにした。

「ほらあそこ。」
店の角のところ(駐輪場からは見えない)から、駐輪場の様子を二人で覗き込んだ。
すると、さっきの爺さんはもういなかった。
俺が「よかったー」と安堵の声を漏らす一方で、母親はまだ首をかしげていた。

そして駐輪場―――俺の自転車が置いてある場所―――に戻ると、俺は絶句した。
俺の自転車のタイヤが、前輪後輪共に穴を開けられ、パンクしていた。
しかも、サドルが誰かの手によって無理やり切断されている。

俺は、すぐ近くで自分の自転車を取り出していた母親のところに泣きついた。
俺が自分の自転車を指差すと、母親と俺は一緒にそこまで戻った。

母親は俺の自転車を見て、しずかに
「交番に行きましょう。」
と言った。

ヨーカドー近くの交番へ、二人で行った。俺は怖くて、まだ震えながら泣いていた。
交番へ着くと、そこには優しそうな40くらいのおじさん警官が一人だけいた。
警官は、俺が泣いているのを見てただごとではないと思ったらしく、
「どうされたんですか?」
と驚き顔で尋ねた。
母親は、今までの全てのことを話した。

すると警官が、
「なるほど・・・。じゃあ僕さ、そのおじいさんの特徴とか、覚えてるかな?」
と俺に話しかけてきた。

俺はそのときパニックで何も思い出せなかったが、しばらく交番にいるうちに落ち着いてきて特徴を話し始めた。
茶色い服を着ていたこと、顔が細長かったこと、タモリのようなグラサンをかけていたこと。などを。
「どういう自転車に乗ってたか、って覚えてるかな?」
と警官は尋ねてきた。自転車・・・
「やたらに前カゴが大きい自転車に乗ってました。」
警官は何かを考える素振りを見せ、俺に
「店から一人で出たきたときには・・・自転車はもう壊されていたの?」
と尋ねた。そういえば。あのときはあの爺さんに夢中で、自転車のことなど気にしてなかった!
「分かりません。その人に見られてる、ってことでパニックになっちゃって・・・」
すると警官が、母親に
「ちょっといいですか・・・」
と言って交番の奥に行ってしまった。

十分くらいして母親と警官が戻ってきた。
母親が、警官に
「いろいろとありがとうございました。」
と言って礼を言い、深々とおじきをした。

交番からは徒歩で家へ帰った。
母親と警官がどういう話をしたかが気になったが、何度訊いても
「大した話じゃないわよ」
としか答えてくれなかった。

そしてその夜。もう少しで眠るか・・・と夢うつつだった時。
家の玄関をバンバンと叩く音が聞こえた。
時間は夜中の1時。
しかも、「何故だーーーーー!!!」という叫び声と共に。
俺は震え上がった。家がバレてる・・・

しかし、ふと疑問に思うことがあった。
俺は、母親と一緒の部屋で寝ている。
なのに、母親が一切起きない。

バンバン。
「危ねぇだろーーーーーー!!!」

こんなに大きな音を立てているのに。母親は起きてこない。
俺は母親を起こした。
「何よ、こんな時間に・・・」
「何じゃないよ!ほら、音!!爺さんが玄関で!!」
まだ音は聞こえる。しかし、母親は眉間にしわを寄せて
「あなた・・・やっぱり・・・」
と言って泣き出してしまった。

翌日。ピンポーン。と呼び鈴が鳴った。

「はーい」
と母親が玄関を開ける。
「ああ、いらしてくれたのね。」

玄関の前には、若い男が私服姿で二人立っていた。
男たちは家に入り込み、リビングでくつろいでいた俺のところに来た。

男の一人が俺をひょいと持ち上げ、そのまま外へ連れ出そうとした。
俺は何が何だか分からず、母親のほうを見た。
すると母親は、俺のことを何かおぞましい物をみているかのような目で見てきた。

「え・・・?」

俺を担いでいた男がその手を離し、俺を床に落とした。
「痛てぇぇぇぇぇ!!」
俺は叫んだ。
俺はまた母親のほうを見たが、途端に視線を逸らされた。

もう一人の男が、床に仰向けに転がっている俺の腹に向かって思い切り頭突きしてきた。
「グエッ」
俺は声にもならぬ声を出した。

その男は一度のみならず、何度も頭突きしてきた。
俺は完全に意識を失ったが、
意識を失う直前に全てを理解した。
いつの間にか部屋から出てきた父親の笑顔を見た瞬間に・・・・

end
駄文スマソ

94 本当にあった怖い名無し sage 2007/08/02(木) 12:07:56 ID:TtjLUWUa0
やっぱりこの話分かりづらいか・・・

じわ怖に書いたほうがいいか。。

95 本当にあった怖い名無し 2007/08/02(木) 12:42:50 ID:3k3F7o/dO
3回読んだけどワカラン。
どういう意味?

96 本当にあった怖い名無し sage 2007/08/02(木) 12:55:52 ID:TtjLUWUa0
ヒント:
ヨーカドーに、母親を呼びにいったときの母親の反応。

112 本当にあった怖い名無し sage 2007/08/02(木) 13:39:11 ID:TtjLUWUa0
実は、爺さんや自転車の破壊は主人公の幻覚だったというオチ

113 本当にあった怖い名無し sage 2007/08/02(木) 13:43:43 ID:JCia0NrV0
>>112
どこをどう読めばその解釈に?

114 本当にあった怖い名無し 2007/08/02(木) 13:48:36 ID:3k3F7o/dO
>>112
しかも最後の私服の2人のは?
ボコボコになる意味がわからない。
最初から最後までってこと?

115 本当にあった怖い名無し 2007/08/02(木) 13:53:17 ID:E7uSZSGV0
店内に母親を呼びに行った時点で、母親が
首をかしげるのはおかしくない?
何も見ていない状態なのに。
私服の男が暴行をはたらく意味もわからなければ
何故父親が笑う?普通心配するだろう。

116 本当にあった怖い名無し sage 2007/08/02(木) 13:59:08 ID:TtjLUWUa0
【設定】
主人公は、ちょっと精神がおかしい子で、両親は世話に疲れていた。
それでも、普通に生活ができるようになるまでは・・・と思っていた。

主人公は、実は自転車など持っていなかった。

なのに「自転車が~」などというから首をかしげた。

その夜、ありもしない音に怯える息子を見て
完全に理性を失った、と思った母親は、夫と相談して
障害者である息子を殺害することを決めた。

しかし、我が子を自らの手で殺すのはためらわれたので
殺し屋に頼むことにした。どうせ幻覚を見ているのだから痛みも
感じずに死ねるだろう、と両親は思った。

母親は、完全に頭がイッちゃった息子を見て愛情のかけらも失っていた。
父親も、もうこれで障害者の世話をしなくて済むと思い、安堵した。


黒い物体

初めまして。
早速 体験談を載せますが、これは今年の三月頃に書いて、記録していたものです。

ふと、大学に入ってから気付いた事があった。
大学の講義やバイト、或いは友人との約束もない休日というのは、案外と暇なものであ
る。高校時代は部活や塾などで時間を取られることが多かったからか、それは余計に感じ
ることだった。最近では、それにかこつけて昼前まで寝る堕落ぶりを見せている。
そんな偶の休日、私は散々読み返した小説を読んでいた。ぱらぱらと何気なく頁を捲り、
「展開は当然知っているし、飽きてきたなあ」などと欠伸を噛み殺していると、なにやら
視界の隅っこで黒い物体が動いているのに気付いた。
襖に張り付いているようなのだが、それが妙な動き方で、少し動いては止まり、また動
き始めるといった虫のような奴だった。心なしか、その黒い物体の周囲が蠢いているよう
にも見える。
だが正直な話、虫とは考えたくない。ゴキブリ等ならば、どんなに綺麗な家庭にも居る
ものだが、さすがにここまで堂々としていないだろう。それにもし虫であるならば大きさ
が異常だ。目算(とは言え、横目で見ているから不確かだが)で、15cmほどはあるの
だから、もし虫であったら私も大暴れするしかない。
しかしこのままでは埒が明かない。「虫じゃあ、ありませんように」などと、完全に怖
気付きながらも、ぱっとそちらを振り返ったのだが、
(何もいないじゃないか)
と、肩透かしを食らってしまった。先ほどまでは確かに居たように思えた「黒い物体」
は、その影も形も残していなかった。すこし穴の開いた襖が閉じられているだけである。
あまりにも唐突な喪失であって、気持ち悪かったが、追求しても矢張り怖いので、私は特
に何事もなかったかのように別の本を読み始めた。わざとらしく、「次はこっちでも読む
かなあ」と声をあげたのも、今思えば可笑しなことである。

それから30分ほど経ってか、黙々と頁をめくっていると、先の黒い物体がまたも視界
の隅に現れたのだ。やはり虫のように蠢き、確かな存在感がある。
今度はすぐさま振り返ったが、やはり何も居ない。それがその日だけでも3回はあった
と記憶している。
目の具合か、それとも頭でもおかしくなったのか。前者ならば不安だけですむが、正直、
この手の話はまず後者を疑われるものだ。それに精神的なものだろうから、外傷判断も付
かない。幸いなことに、目の方はコンタクトの定期検査で、眼科の診断を受ける機会があ
ったのだが、さしたる問題は無かった。ならば残る可能性は後者なのだが、それは考えな
いようにしようと思う。鼬ごっこになるのは目に見えているのだ。
そうして何日か過ごしている内に、やはり襖に黒い物体が蠢くことが時々だがあった。
もう前ほどに気にしなくなり、「またか」程度に流せるようになった。
しかしそれが逆に災いした。先日気付いたのだが、冷静に横目で観察してみると、その
黒い物体が、虫ではなく「髪」のような気がしてきたのである。
横目で襖を見てはいけない。私の部屋のタブーである。

以上です。
最近は、それほど見かけないのでホッとしています。


妙なもの

今はもうあまりないんだが、
10代のころは時おり妙なものが見えることがあった。
なかでも複数回見ているモノが以下に書く奇妙なもの。

最初に見たのは学生時代の友人Mのアパート。
友人が実家からでて引っ越してきたばかりのそのアパートは
築何十年とかで見た目にもいかにもなオンボロアパートだった。
イメージとしては4畳半フォークとか男おいどんとかそんな感じw
引っ越し祝いで別の友人Aと初めて部屋に行った時、入った瞬間から
ひどく暗いし、空気も悪いなあと感じた。
まあ立地的にも物件的にも仕方ないのかと思ったとき、そいつが目に入った。

そいつの見た目は50センチくらいの蛇みたいなもの。色は紫がかった黒一色。
蛇というよりはウナギとか(巨大な)ドジョウに近いかも知れない。
目とか口とかは何もないが両端は先細りでどことなく生物めいて見える。
そしてどういう仕組みかは知らないが宙に浮いて部屋の電灯の周囲をただよってる。
煙のようなものではなく明らかに実体がある感じ。
表面の質感としてはゴムのようで光を反射したりは一切してなかった。
時おり体をくねらせる動きもどこか生物っぽい。
もっとも体を二つ折りみたいにしてたし背骨とかはなさそうだが。

MもAもまったく気づいていない様子だったので
なにも言わなかった。
特にAはは少し前にとある恐怖体験をして以来、
俺をその元凶のように思っているのでw
いやな感じがしたので俺は2人を飲みに誘い、そのまま帰った。

数ヵ月後(その間意識して行くのを避けてたので)に
再びMの部屋に行くとそいつはいなくなってた。
心なしか部屋も明るく、空気も淀んではいなくなってた。
その時は別にそんなものもいるのかくらいにしか感じなかった。
まあ、こっちの世界のものとは思わなかったけど。

その後、何回か同様のものを見た。
場所はバイト先の作業場だったり大きなホールだったりいろいろ。
長さはは30センチくらいのものから4,5メートルくらいのものまで
様々だったけど、太さは決まって5センチくらいだった。

そいつはだいたい何もせずに宙を舞っているだけだったのだが、
一匹だけバイト先で知り合ったパートのおばちゃんに
やたらまとわりついているやつを見た。
やはりおばちゃんは気づいていないようだ。
因果関係はわからないがそのおばちゃんはしばらくして
大病を患ったとかでパートを辞めた。
そして、まもなく亡くなられたと聞いた。


コートの女

実体験っす。
確か夏頃。今くらいかな?当時住んでた西東京のH市で、1Kの安アパートに住んでた頃の話。
その日はいつもどおりバイトから帰り、だらだらとテレビを見ながらメシ食って
日付が変わるくらいには寝たと思う。
次に意識を取り戻したのは夜中だった。
物音がして、それで寝ぼけながらも起きてしまったんだ。
木造の安アパートなんて壁も天井も薄いし、住んだ事あるやつなら判ると思うけど
大げさじゃなく隣人の笑い声やら生活音がほとんど筒抜け状態だったし
最初はそういう他人の出した物音だと思った。寝ぼけてたし。

でもすぐに全身の毛が逆立った。明らかに俺の部屋のドア叩く音なんだもん
すぐさまドアが開いて白いロングコートを着た女が部屋に入ってきた
ドアを叩かれた驚きから思考停止してた俺は女にビビるのに時間が掛かった
なんとか大声を出そうとお腹に力を入れるんだけど肝心の声が出ないの。情けない事に。
それでも搾り出すように思い切り力を込めた時

信じられないスピードで女は部屋から出て行った。
良かった、助かった、なんだったんだ、怖い
色んな気持ちが頭の中をぐるぐる回って、ひとしきり放心した後…
さっきの女、酔っ払って部屋を間違えただけか?
という仮説に到達し、とたんに馬鹿らしくなり
女に対する怒りさえこみ上げてきていた
明日だってバイトだってのに…悪態をついてまた横になると

今度は音もなく、玄関先に女が立ってる

cんさlふじこrんヴぃえあ…!もう絶句。
でも、今しがたの仮説で怒りもあったせいか、
絶対に大声で威圧してやろうって気持ちになってた
面白いもんで、それでも声が出ないのね
なんとかしようと頑張ってると女がズームするみたいにスーっと近寄ってくる
明らかに歩いてない、コート揺れてないし
怖くて怖くてやっとかすれた声を出すことができた

するとまるで壊れたビデオみたいに女の距離が少しだけまき戻った
でも結局それだけの話、すぐさまコッチに向かって滑り寄ってくる
俺は馬鹿みたいにわー、わーって叫んでその度に少しずつ距離を戻す。
でも徐々に戻り幅が減っていって近くなってきてるんだよ…
そして目と鼻の先、俺の顔のド正面に女が迫った
(余談だがそれだけ近づいているのに結局女の顔は真っ黒で表情が見えなかった)
そこでついに渾身の大声を出し…

…俺は絶叫しながら布団から跳ね起きた
全身寝汗びっしょり
馬鹿らしいくらいにマンガみたいな寝覚めをしてしまったとヘコむ
耳を澄ますと隣人が室内を歩く音とか聞こえてくる
結局コートの女の姿だけ消えて、いつもと変わらない俺の部屋

今度こそ本当に脱力して、倒れこむように布団に寝そべった
疲れてるのにもちろんすぐに寝付けるわけないよ
半泣きでため息ついて目を開けたとき
俺の左側にコートの女が立って俺を見下ろしてる!

ここに至って驚きとかじゃなくなる、もう勘弁してくださいって感じで
うんざり?なんかガッカリするんだよ。
でも不思議なことに襲ってこない。ただ見てるだけ。
もちろんそれだけで怖いんだけど、さっきより何倍もマシだった

結局女はいなくなっていた。

落ち着いたあと勇気を振り絞って電気の紐に手を伸ばすと
部屋の壁には、ところどころ黄ばんだ白いコートだけがかけられていた

結局あれがなんだったのか判らず仕舞いです。
コートはいまだに持っていて、春先にはたまに着たりしてます


マネキン

私には霊感がありません。
ですから、幽霊の姿を見たことはないし、声を聞いたこともありません。
それでも、ものすごく怖い思いをたった一度だけ、中学生の時に体験しました。
その話を聞いていただきたいと思います。

14歳のころ、父を亡くした私は、母の実家に引っ越すことになりました。
母方の祖父はとうに亡くなっていたので、祖母、母、私と、女3人だけの暮らしとなります。
私は、親が死んだショックから立ち直れないまま、新しい環境に早急に馴染まなくてはいけませんでした。
不安はあったのですが、私の身の上に同情してか、転校先の級友も優しく接してくれました。
特にS子という女の子は、転校してきたばかりの私に大変親切にしてくれ、教科書を見せてくれたり、話相手になってくれたりしました。
彼女と親友になった私は、自然に周囲に心を開いてゆき、2ヶ月もたつころには、みんなでふざけあったり、楽しく笑いあったりもできるようになりました。

さてそのクラスには、F美という、可愛らしい女の子がいました。
私は彼女に何となく心惹かれていました。
もちろん変な意味ではなく、女の子が見ても可愛いなと思えるような、小柄できゃしゃな感じの子だったので、同性として好意を持っていたのです。
(私はちょっと地黒で背も高いので、今考えると、多少の羨望もおそらくあったのだと思います)
好かれようとしていると効果はあるもので、席替えで同じ班になったことからだんだん話すようになり、彼女が母子家庭であることがわかって、余計に親しくするようになりました。
もっともF美の場合は、死に別れたのではなくて、父親が別の女性と逃げたとか、そういうことだったように聞きました。
彼女も女だけで生活しているということを知ったとき、この子と友達になってよかったな、と心底思いました。
ただそれも、彼女の家に遊びにいくまでの短い間でしたが・・・。

その日、私が何故F美の家を訪ねることになったのか、私は覚えていません。
ずいぶん昔の話だからというのもありますが、それよりも、彼女の家で見たものがあまりに強い印象を残したので、そういった些細なことがあやふやになっているのでしょう。
その時S子もいました。
それまでも、S子はF美のことをあまり好いておらず、私が彼女と仲良くすることを好ましくは思っていないようでした。
それなのに何で彼女がついて来たのか、私には思い出せません。しかしとにかく、学校の帰り、家が全然別の方向なのにもかかわらず、私とS子は何かの用事でF美の家に寄ったのでした。

彼女の家は、正直古さの目立つ平屋で、木造の壁板は反り返り、庭はほとんどなく、隣家との間が50センチもないような狭苦しい場所にありました。
私はちょっと驚きましたが、おばあちゃんの家も年季は入っていますし、家計が苦しいのはしょうがないだろう、と思って自分を恥ずかしく思いました。
「おかあさん」
F美が呼ぶと、少ししわは目立つものの、奥からにこやかな顔をしたきれいなおばさんが出てきて、私とS子に、こちらが恐縮するほどの、深々としたおじぎをしました。
洗濯物をとりこんでいたらしく、手にタオルや下着を下げていました。

「お飲み物もっていってあげる」

随分と楽しそうに言うのは、家に遊びに来る娘の友達が少ないからかもしれない、と私は思いました。
実際、F美も「家にはあんまり人は呼ばない」と言ってましたから。
もしF美の部屋があんまり女の子らしくなくても驚くまい、と私は自分に命じました。
そんなことで優越感を持ってしまうのは嫌だったからです。
しかし、彼女の部屋の戸が開いたとき、目にとびこんできたのは、予想もつかないものでした。

F美がきれいだということはお話ししましたが、そのぶんやはりお洒落には気を使っているということです。
明るい色のカーテンが下がり、机の上にぬいぐるみが座っているなど、予想以上に女の子らしい部屋でした。
たった一点を除いては。
部屋の隅に立っていて、こっちを見ていたもの。

マネキン。

それは間違いなく男のマネキンでした。
その姿は今でも忘れられません。
両手を曲げて縮め、Wのかたちにして、こちらをまっすぐ見つめているようでした。
マネキンの例にもれず、顔はとても整っているのですが、そのぶんだけその視線がよけい生気のない、うつろなものに見えました。

マネキンは真っ赤なトレーナーを着、帽子を被っていました。
不謹慎ですが、さっきみたおばさんが身につけていたものよりよほど上等なもののように思えました。
「これ・・・」
S子と私は唖然としてF美を見ましたが、彼女は別段意外なふうでもなく、マネキンに近寄ると、帽子の角度をちょっと触って調節しました。
その手つきを見ていて私は、

鳥肌が立ちました。

「かっこいいでしょう」
F美が言いましたが、何だか抑揚のない口調でした。
その大して嬉しそうでもない言い方がよけいにぞっと感じました。

「ようこそいらっしゃい」
といいながら、トレーにケーキと紅茶を乗せたおばさんが入ってきて、空気が救われた感じになりました。
私と同じく場をもてあましていたのでしょう、S子が手を伸ばし、お皿を座卓の上に並べました。
私も手伝おうとしたのですが、お皿が全部で4つありました。あれ、おばさんも食べるのかな、と思い、ふと手が止まりました。
その時、おばさんがケーキと紅茶のお皿を取ると、にこにこと笑ったままF美の机の上におきました。

それはマネキンのすぐそばでした。

とんでもないところに来た、と私は思いました。
服の中を、自分ではっきりそれとわかる、冷たい汗が流れ続け、止まりませんでした。
F美はじっと、マネキンのそばに置かれた紅茶の方を凝視していました。
こちらからは彼女の髪の毛しか見えません。
しかし、突然前を向いて、何事もなかったかのようにフォークでケーキをつつき、お砂糖つぼを私たちに回してきました。

私はよほどマネキンについて聞こうと思いました。
彼女たちはあれを人間扱いしているようです。
しかもケーキを出したり、服を着せたりと上等な扱いようです。ですが、F美もおばさんも、マネキンに話しかけたりはしていません。
彼女たちはあれを何だと思っているのだろう?と考えました。
マネキンの扱いでは断じてありません。
しかし、完全に人だと思って、思い込んでいるのだとしたら、「彼」とか「あの人」とか呼んで、私たちに説明するとかしそうなものです。
でもそうはしない。
その、どっちともとれない中途半端な感じが、ひどく私を不快にさせました。
私がマネキンのことについて尋ねたら、F美は何と答えるだろう。
どういう返事が返ってきても、私は叫びだしてしまいそうな予感がしました。

どう考えても普通じゃない。

何か話題を探しました。
部屋の隅に鳥かごがありました。
マネキンのこと以外なら何でもいい。
普通の、学校で見るようなF美を見さえすれば、安心できるような気がしました。

「トリ、飼ってるの?」
「いなくなっちゃった」
「そう・・・かわいそうね」
「いらなくなったから」

まるで無機質な言い方でした。
飼っていた鳥に対する愛着などみじんも感じられない。

もう出たい、と思いました。
帰りたい、帰りたい。
ここはやばい。
長くいたらおかしくなってしまう。

その時「トイレどこかな?」とS子が立ち上がりました。
「廊下の向こう、外でてすぐ」とF美が答えると、S子はそそくさと出ていってしまいました。
そのとき正直、私は彼女を呪いました。
私はずっと下を向いたままでした。
もう、たとえ何を話しても、F美と意思の疎通は無理だろう、ということを確信していました。
ぱたぱたと足音がするまで、とても長い時間がすぎたように思いましたが、実際にはほんの数分だったでしょう。
S子が顔を出して「ごめん、帰ろう」と私に言いました。
S子の顔は青ざめていました。
F美の方には絶対に目を向けようとしないのでした。
「そう、おかえりなさい」とF美は言いました。
そのずれた言い方に卒倒しそうでした。

S子が私の手をぐいぐい引っ張って外に連れ出そうとします。
私はそれでもまだ、形だけでもおばさんにおいとまを言っておくべきだと思っていました。
顔を合わせる勇気はありませんでしたが、奥に声をかけようとしたのです。
F美の部屋の向こうにあるふすまが、20センチほど開いていました。
「すいません失礼します」
よく声が出たものです。
その時、隙間から手が伸びてきて、ピシャッ!といきおいよくふすまが閉じられました。
私たちは逃げるようにF美の家を出ていきました。

帰り道、私たちは夢中で自転車をこぎ続けました。
S子が終始私の前を走り、1メートルでも遠くへいきたい、とでもいうかのように、何も喋らないまま、自分たちのいつもの帰り道まで戻っていきました。
やっと安心できると思える場所につくと、私たちは飲み物を買って、一心不乱にのどの渇きをいやしました。
「もう付き合うのはやめろ」とS子が言いました。
それは言われるまでもないことでした。
「あの家、やばい。F美もやばい。でもおばさんがおかしい。あれは完全に・・・」
「おばさん?」
トイレに行った時のことをS子は話しました。

S子がF美の部屋を出たとき、隣のふすまは開いていました。
彼女は何気なしに通りすぎようとして、その部屋の中を見てしまったそうです。

マネキンの腕。
腕が、畳の上に4本も5本もごろごろ転がっていたそうです。
そして、

傍らで座布団に座ったおばさんが、その腕の一本を、狂ったように嘗めていたのです。

S子は震えながら用を足し、帰りにおそるおそるふすまの前を通りました。
ちらと目をやると、こちらをじっと凝視しているおばさんと目が合ってしまいました。
つい先刻の笑顔はそのかけらもなくて、目が完全にすわっています。
マネキンの腕があったところには、たたんだ洗濯物が積まれてありました。
その中に、男もののパンツが混じっていました。
「マ、マネキンは・・・?」
S子はついそう言って、しまったと思ったのですが、おばさんは何も言わないまま、S子にむかって、またにっこりと笑顔を見せたのでした。
彼女が慌てて私を連れ出したのはその直後のことでした。

あまりにも不気味だったので、私たちはF美が喋って来ない限り、彼女とは話をしなくなりました。
そして、だんだん疎遠になっていきました。
この話をみんなに広めようか、と考えたのですが、とうてい信じてくれるとは思えません。
F美と親しい子にこの話をしても、傍目からは、私たちが彼女を孤立させようとしているとしか思われないに決まっています。
特にS子がF美とあんまり仲がよくなかったことはみんな知っていますから・・・。

F美の家にいったという子にこっそり話を聞いてみました。
でも一様におかしなものは見ていない、と言います。
だから余計に、私たちに状況は不利だったのです。
ただ一人だけ、これは男の子ですが、そういえば妙な体験をした、という子がいました。

F美の家に言ってベルを押したが、誰も出てこない。
あらかじめ連絡してあるはずなのに・・・と困ったが、とにかく待つことにした。
もしかして奥にいて聞こえないのか、と思って戸に手をかけたら、ガラガラと開く。
そこで彼は中を覗き込んだ。

ふすまが開いていて(S子が見た部屋がどうかはわかりません)、部屋の様子が見えた。
浴衣を着た男の背中が見えた。
向こうに向いてあぐらをかいている。
音声は聞こえないが、テレビでもついているのだろう、背中にブラウン管かららしい、青い光がさして、ときおり点滅している。だが何度呼びかけても、男は振り返りもしないどころか、身動き一つしない・・・。
気味が悪くなったので、そのまま家に帰った。

F美の家に男はいないはずです。
たとえ親戚や、おばさんの知り合いであったところで、テレビに背中をむけてじっと何をしていたのでしょう?
それとも、男のパンツは彼のだったのでしょうか。

もしかしてそれはマネキンではないか、と私は思いました。
しかし、あぐらをかいているマネキンなどいったいあるものでしょうか。
もしあったとすれば、F美の部屋にあったのとは別のものだということになります。

あの家にはもっと他に何体もマネキンがある・・・?
私はこれ以上考えるのはやめにしました。

あれから14年がたったので、今では少し冷静に振り返ることができます。
私は時折、地元とはまったく関係ない所でこの話をします。
いったいあれが何だったのかは正直今でもわかりません。
もしF美たちがあれを内緒にしておきたかったとして、仲の良かった私だけならまだしも、なぜS子にも見せたのか、どう考えても納得のいく答が出ないように思うのです。

そういえば、腕をWの形にしているマネキンも見たことがありません。
それでは服は着せられないではないですか。
しかしあの赤い服は、マネキンの身体にピッタリと合っていました。
まるで自分で着たとでもいうふうに・・・

これが私の体験のすべてです。

慣れてなくて、切れ目が多くなってしまいました。ごめんなさい。
あのマネキンの家がどうなったかはわたしも知りません。
母親が再婚して別の家に移ってしまったので・・・

心霊話じゃなくて、あんまり恐くないかもしれませんけど、あの時ほど恐くなったことはありませんでした。


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