臨時放送

5年くらい前、夜中の2時30分頃テレビをつけたらカラーバーが映っていて(あたりまえですが)
ああ、やっぱりこの時間は放送やってないな、寝ようとふと思ったその時急に画面が切り替わってゴミ処理場が映し出されました。

そしてテロップにNNN臨時放送と出てひたすら処理場を遠景で映し続けるのです。

なんなのだろうと思って様子をうかがっていると人の名前がスタッフロールのようにせり上がってきて
ナレーター?が抑揚のない声でそれを読み上げていきました。

バックには暗い感じのクラシックが流れだいたいそれが5分くらい続いたでしょうか、
最後に「明日の犠牲者はこの方々です、おやすみなさい。」と。
それ以来深夜放送が怖くてたまりません。
周りは誰もこの話を信じてくれないし…

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牛の首

最近まで只の噂と思っていた怪談なのですが 、とある口伝でこのような話を仕入れてしまいました。 自分だけ聞いておくにはまことに惜しい話なのでお伝えいたします。
それは、『牛の首』でございます。

牛の首の怪談とは、この世の中で一番怖く、また有名な怪談であるが、あまりの怖 さ 故に、語った者、聞いた者には死が訪れる。よってその話がどんなものかは誰も知 ら ない、という話 。
私も長い間はこんなのは嘘だ出鱈目だ一人歩きした怪談話さと、鷹を括っていたんですが・・・ まあお聞きください。

明治初期、廃藩置県に伴って、全国の検地と人口調査が行われた。これは地価に基づく定額金納制度と、徴兵による常備軍を確立するためであった。
東北地方において、廃墟となった村を調査した役人は、大木の根本に埋められた大量の人骨と牛の頭らしき動物の骨を発見した。調査台帳には特記事項としてその数を記し、検地を終えると、そこから一番近い南村へと調査を移した。
その南村での調査を終え、村はずれにある宿に泊まった役人は、この村に来る前に出くわした、不可解な骨のことを夕食の席で、宿の主人に尋ねた。
宿の主人は、関係あるかどうかは分からないが・・・と前置きをして次の話を語っ た。

以下はその言葉を書き取ったものであります。

天保3年より数年にわたり大飢饉が襲った。俗に言われる天保の大飢饉である。
当時の農書によると「倒れた馬にかぶりついて生肉を食い、行き倒れとなった死体を野犬や鳥が食いちぎる。親子兄弟においては、情けもなく、食物を奪い合い、畜生道 にも劣る」といった悲惨な状況であった。

天保4年の晩秋、夜も更けた頃、この南村に異形の者が迷い込んできた。
ふらふらとさまよい歩くその躰は人であるが、頭部はまさしく牛のそれであった。
数人の村人がつかまえようとしたその時、松明を手にした隣村のものが十数人現れ、鬼気迫る形相にて、

「牛追いの祭りじゃ、他言は無用」

と口々に叫びながら、その異形の者を捕らえ、闇に消えていった。
翌日には村中でその話がひそひそと広がったが、誰も隣村まで確認しにいく者はいなかった。また、その日食うものもない飢饉の有様では、実際にそれどころではなかた。

翌年には、秋田藩より徳政令が出され、年貢の軽減が行われた。
その折に隣村まで行った者の話によると、すでにその村に人や家畜の気配はなかったとのことだった。それ以後、「牛の村」とその村は呼ばれたが、近づく者もおらず、今は久しく、その名を呼ぶ者もいない。

重苦しい雰囲気の中で宿の主人は話し終え、そそくさと後片づけのために席を立った。
役人はその場での解釈は避け、役所に戻り、調査台帳をまとめ終えた頃、懇意にしていた職場の先輩に意見を求めた。
先輩は天保年間の村民台帳を調べながら考えを述べた。

大飢饉の時には、餓死した者を家族が食した例は聞いたことがある。
しかし、その大木のあった村では、遺骸だけではなく、弱った者から食らったのであろう。
そして生き人を食らう罪悪感を少しでも減らすため、牛追いの祭りと称し、牛の頭皮をかぶせた者を狩ったのではなかろうか。
おまえの見た人骨の数を考えるとほぼその村全員に相当する。
牛骨も家畜の数と一致する。
飢饉の悲惨さは筆舌に尽くしがたい。
村民はもちろん親兄弟も、凄まじき修羅と化し、その様はもはや人の営みとは呼べぬものであったろう。
このことは誰にも語らず、その村の記録は破棄し、廃村として届けよ。

また南村に咎を求めることもできまい。
人が食い合う悲惨さは繰り返されてはならないが、この事が話されるのもはばかりあることであろう。
この言葉を深く胸に受け止めた役人は、それ以後、誰にもこの話は語らず、心の奥底にしまい込んだ。

日露戦争が激化する頃、病の床についたこの男は、戦乱の世を憂い、枕元に孫たちを呼び寄せ、切々とこの話を語ったという。
この孫の中の一人が、自分である。
当時は気づかなかったが、祖父が亡くなった後に分かったことがあった。
何の関係もないと思われた南村の者が、隣村の民全員を牛追いの祭りと称して狩り、食らったのが真実である。そうでなければ全員の骨を誰が埋められるものか・・・

それゆえ、牛の首の話は、繰り返されてはならない事だが、話されてもならない話であり、呪いの言葉が付くようになった。
誰の口にも上らず、内容も分からぬはずであるが、多くの人々が「牛の首」の話を知っている。物事の本質をついた話は、それ自体に魂が宿り、広く人の間に広まっていくものである。

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小さな手

学校につきものの怪談ですが、表に出ない怪談もあるのです。わたしが転勤した学校での話です。美術を教えているわたしは、作家活動として自ら油絵も描いていました。住まいは1LDKの借家のため、家で大きな作品を描くことができず、放課後、いつも学校の美術室に残って作品を描いていました。今度の転勤先でも同じように、美術室の一角で制作を続けていました。

 ところが、妙なことに気づきました。作品の表面に小さい子供の手の跡が付いているのです。油絵というのは乾きが非常に遅く、完全に乾くのに1週間かかることもあります。わたしが知らないうちに誰かが触ったのかと、あまり気にもせず制作を続けました。手の跡も絵の具で上から塗り重ね、消してしまいました。しかし次の日も、子供の手が跡が付いていました。1個どころではなく、作品の表面全体にびっしり付いていたのです。100号という大きさの油絵ですので、単なるいたずらではないなと感じました。その日は作品全体の手の跡を消しながら描いているうちに、作品の山場にさしかかり、9時,10時,11時と、いつしか夜中になってしまっていました。わたしの筆の音しか聞こえないはずの美術室に、いつごろからか、猫の鳴き声とも赤ん坊の声とも言えない泣き声が聞こえるようになりました。窓を開けても猫の姿はなく、赤ん坊も当然いるわけもありません。気にせず制作を続けていると、どうやら美術室の中から聞こえるようなのです。泣き声のする方向を絞っていくと、美術室の後ろにある工芸用の電気釜の中のようです。電気釜は焼き物を作るときに使う、大きめのゴミ箱ぐらいの大きさのものでしたが、故障なのか長い間使った形跡はありません。フタを開けると、本当に生徒がゴミ箱がわりに使っているらしく、丸めた紙くずなどで内部が一杯です。転勤してきたわたしも片づける暇もなく、放置したままだったのです。

 わたしが恐る恐る電気釜に近づいていくと、泣き声がふと止みました。ひょっとして生徒が子猫を閉じこめたのかもしれない、そんないたずらをする生徒がいるなら作品についた手の跡も納得できる。

わたしはいたずらの正体を見破るべく、電気釜のフタを開け、紙くずを拾い出しました。美術室に響く紙の音は気持ちのいいものではありませんでした。手に取れるゴミは拾い出しましたが、猫など見あたりません。電気釜の底の方には乾いた砂が溜まっていました。わたしは砂に手を突っ込み、中を探りました。指先に手応えがあるので取り出してみると、それは骨でした。動物のもののような骨、わたしは恐くなり、それ以上手を突っ込むことはできず、美術室を飛び出しました。

 翌日校長にこの出来事を話したところ、「すべてこちらで対応するから他言しないように」と強く言われました。その後聞くところによると、わたしが転勤する前、不倫の末妊娠し退職した美術の女教師がいたということでした。その人は、現在消息不明だということです。

 あの小さな手の跡と赤ん坊の泣き声は、一体何だったのでしょうか?

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爺ちゃんの怖い話

私がまだ小学校低学年の幼い子供だったころに、
趣味で怖い話を作っては家族や友達に聞かせていました。
「僕が考えた怖い話なんだけど、聞いてよ。」ときちんと前置きをしてからです。
特にじぃちゃんが私の話を喜んで聞いてくれました。
私はそれがとても嬉しかったんです。熱心に聞いてくれるのと同時に、こわがってくれたから。

そんな折、私の作った話がクラスの中で流行りだしました。
放課後の男子トイレで個室を叩くとノックが返ってくる。といったありがちな話です。
クラスの女子の間であっという間に流行り、噂は学年中、学校中へと広まりました。
「男子トイレの前で手招きする男の子を見た」とか言い出す女子も出てきていて
私がやっとその噂を知って「僕の作り話だってば」と言ってもきかず、
その後もまことしやかに囁かれ続けました。
ついにはそこで肝試しを始めるグループまで現れてしまいました。その肝試しでしたが、なにも起きるわけがないのに、
グループの子供が皆「ノックの音が返ってきた」と言うんです。大変な騒ぎでした。
そんなワケないだろ!?と思って作り話だということをアピールしようとしたのですが
当時の私は皆に冷たくされるのが怖くて言い出せませんでした。
しかし、そのうち私は自分の話が本当になってしまったのではないかと思うようになり、
すごく恐くなって自作の怖い話をすることをやめました。

その騒動があってからしばらくして
じぃちゃんが、怖い話をしなくなった私に「もう怖い話しないのかい」と聞いてきました。
私はもう泣きじゃくりながらその話をじぃちゃんにしたんです。
ほうかほうか、とやさしく聞きながら、こんなことを話してくれました。それはな、みんなが坊の話を本当に怖いと思ったんだ。
 坊の話をきっかけにして、みんなが勝手に怖いものを創っちゃったんだよ。
 怖い話を作って楽しむのはいいけど、それが広まってよりおそろしく加工されたり、
 より危険なお話を創られてしまうようになると、
 いつの日か「それ」を知ったワシらの目には見えない存在が、
 「それ」の姿に化けて本当に現れてしまうようになるのかもな。
 あるいは目に見えるものではなく、心のなかにね。  

 「おそれ」はヒトも獣も変わらず持つもの。
 「おそれ」は見えないものも見えるようにしてしまう。本能だからね。
 だから、恥ずかしくないから、怖いものは強がらずにちゃんと怖がりなさい。
 そして決して近寄らないようにしなさい。そうすれば、本当に酷い目にあうことはないよ。

私は、じぃちゃんも何かそんな体験をしたのかと思って
「じぃちゃんも怖い思いをしたの?」と聞きました。
すると、予期しなかったじぃちゃんのこわい話が始まったのです。昔、じぃちゃんは坊の知らないすごく遠くのお山の中の村に住んでいたんだよ。
 そこで、じぃちゃんの友達と一緒に、お山に肝試しに行ったことがあるんだ。
 そうだね、じぃちゃんが今でいう高校生ぐらいのころかな。
 お地蔵さんがいっぱい並んでいたけど、友達もいるし全然怖くなかった。
 でも、帰り道にじぃちゃんの友達が、お地蔵さんを端から全部倒し始めたんだ。
 「全然怖くない、つまらない」って言ってね。
 じぃちゃんはそこで始めてその場所に居るのが怖くなったよ。なんだかお地蔵さんに睨まれた気がしてね。
 友達を置いてさっさと逃げてきちゃったんだよ。
 そうしたらその友達はどうしたと思う?

死んじゃったの?

 ううん、それが何も起こらないで普通に帰ってきたんだよ。
 でもじぃちゃんはもうそれからオバケが怖くなって、友達と肝試しに行くのを一切やめたんだ。
 その友達はその後も何度も何度も肝試しといってはありがたい神社に忍び込んだり
 お墓をうろうろしたりお地蔵さんにイタズラしたり色々するようになってね。
 周りの人からは呆れられて相手にされなくなっていったよ。 
 人の気をひくために「天狗を見た」なんていうようになってしまった。
 じぃちゃんに「見てろ、噂を広めてやる」なんて言って、笑っていたよ。そして、ある日ふっと居なくなったんだ。
 じぃちゃんもみんなと色々と探したんだよ。
 そしたら…
 山の中の高い木のふもとで、友達は死んでた。
 木の幹には足掛けに削った後がてんてんと付いていてね。
 友達は自分で木に上って、足を滑らせて落ちたんだ。ばかなやつだよ。
 
 坊、世の中には人が入ってはいけない場所っていうのがあるんだ。
 それは怖い場所だ。
 坊だったらタンスの上もその場所だよ。
 落ちるのは怖いだろ。そういうことだよ。
 じぃちゃんの友達には、怖い場所が見分けられなかったんだ。

怖いね。ばちがあたったのかな。

 いいや、怖いのはここからさ。
 友達が死んでから、村の中のひとたちが次々に「天狗を見た」って言い出したんだ。
 じぃちゃんは「あれは友達のでまかせだ」と言ったんだけどね。
 友達が天狗の怒りに触れた、祟りだ、呪いだ、と皆は自分達でどんどん不安をあおっていった。
 夜通しで見張りの火まで焚いたんだ。
 皆が顔をあわせるたびに天狗の話をするので、村の中がじめじめしていた。そんな時に限って具合が悪くてね、村の中でケガをするのが4件続いたんだよ。
 どうってこともないねんざまで数に数えられてね。どう見てもあれは皆おかしくなってた。
 さらに噂に尾ひれがついて、「天狗に生贄を出さなくては皆殺される」とまで酷い話になっていた。
 
 そしてついに、本当に生贄を出そうという話をするようになったんだ。
 友達が死んだのは木から足を滑らせて落ちたからなのに、完全に天狗のせいになってた。
 村の中の皆も、人が入ってはいけないところに踏み入ろうとしていた。
 それはね、人の命だよ。 誰にもそれを奪う権利なんてないだろうに。
 じぃちゃんはね、天狗よりも村の中の皆がすごく怖かったんだよ。
 
 だからね、じぃちゃんは、その村から逃げてきたんだ…じぃちゃんのこの話は、その後もねだって2度程聞かせてもらいましたが
「絶対に内緒だぞ」と言われ、両親の居るところでは決して話しませんでした。
でも、今でも私の家には父方の実家はありません。
農家の次男のじぃちゃんが、庄屋の娘のばぁちゃんと駆け落ちしてきたからだよと、
私の両親からはそう聞いています。

じぃちゃんが私に自作の怖い話を聞かせてくれたのかとも思いましたが、多分違います。
その長い話が終わった時、
じぃちゃんは大粒の涙をぼとぼと、私の小さな手の甲に落としたのですから。

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自殺サイト

ネットやってるといろんなやついるよな。荒らしとか冷やかしとかネット
でお悩み相談してるやつとか。
そんな俺はいわゆる『引きこもり』ってやつだ。何度か自殺も考えたよ。

自殺支援サイトって知ってるよな?一回いったことあるんだよ。
そこでさ、HN『ピロリン』ってやつが仲間を集めてたわけね。
俺も死のうと思って参加したわけよ。
んで、まあやっぱりいかにも過去につらい思い出がありましたってツラの
やつが集まったわけさ、下は15歳ぐらいのガキから上は60超える
ジジイまでな。

でも主催者のピロリンだけが来なかったわけよ。野郎ドタンバでビビリ
やがったな、って思ってよ。しょうがないから主催者抜きで自殺する
ことになったんだ。
で、そしたら死ぬ前に遺書とか残したいじゃん。みんなで遺書書いて
るわけよ。
俺も遺書書こうと思ったけど、どうせなら電話で昔俺のこと虐待して
くれさった親父に文句のひとつでも言ってやろうと思って
親父の携帯に電話したわけさ、
「もしもし」
「もしもし○和(俺の名前ね)今どこにいるの?お父さんが大変なの!」
電話に出たのお袋でよ。親父がぶったおれたらしいんだ。

驚いて自殺のことも忘れてトンで帰ったよ。
病院いったらもう親父死んでてね。
死因聞いたら殺人だとよ。胸にナイフ刺されてたそうな。
まあ俺は親父嫌いだったから死ぬ前に親父の死に目が見れて
うれしかったし、犯人に感謝したよ。つづく・・

でも結局それ以来自殺する機会失っちまってなぁ・・・
そういえばあのとき一緒に自殺しようとしてたやつらな。地方のニュース
でやってたけど自殺成功したらしいよ。
それが問題であの支援サイトも閉鎖になってな。とうとう俺も行き詰まりよ。
なんかその気も失せちゃって、その後はなんとなーくつまらん人生送ってたわけ。

ここまでが19のときの話。んでこっからが20のときの話。

親父が死んでからお袋変わっちまってなぁ・・・
すっかり生きる気力なくして親父の後追うようにお袋が自殺したよ。
俺はっつうと、一人っ子で身よりもなかったし、こんな家いたく
ないからとっとと土地売りはらって仙台に移り住んで
適当に仕事探してフリーターしてたもんよ。

まあでも俺って学歴も資格もしょぼかったんで、都心じゃ道路整備の
仕事とかそんなんしかなくてな。だるい肉体労働生活してたのよ。
そしたらそこで偶然にも中学のときの後輩にあってさ。そいつったら
ヤンキーやってて、今度遊ぼうぜって誘われたわけ。
で、アーケードわかる?あそこって10時すぎるとほとんど店もしまって人通りも
少なくなるから。夜中にそこで待ち合わせしたわけ。まあ今度仙台いってみそ。

そしたらそいつ(陸っつうんだけど)路上で3人ぐらいのババアにかこまれて
「まあカワイイ♪うちの娘の旦那にしたいわぁ~」
とかいわれてて、そのそばで携帯のストラップあるじゃん、あれ売ってる
30ぐらいの親父がいて、その親父のそばには19、20ぐらいのわけぇ
兄ちゃんや姉ちゃんがいてさ、タバコすっとるわけよ。変な光景かな?
なんか話しかけづらいからとりあえず俺もタバコでも
吸いながら地面に座って待ってたの。
10分ぐらいしたかな?そのババアどもが陸にバイバイ
言いながらかえっちって、
「おまたせ」
陸がこっち来たわけよ。
そっから陸にいろいろ友達紹介されてさ、そこにいたやつら、
30ぐらいのおっさんの
ミッチーっつうやつも含めてみんなそいつの友達なんだと。

そっからみんなで飯くい行くことになってな、店で話し込んじまったよ。
で、俺はっつうとそのミッチーってやつとなんか気があっちまってな。
可愛い女のことかもたくさんいたんだけど、朝までミッチーと話し込んでて、
んで皆が帰った後も二人で飲んでたわけ。

ミッチーは32のおっさんで、板前やってるデブで、
それだと若いコとの出会いがないから、
出会いを求めて夜中になるとアーケードで無許可でストラップ売ってるんだと。
そんなことしてると若いコよってくるジャン?
そのときに陸と知り合ったらしくてね。(ちなみに陸は男だぞ)
いっしょにいた兄ちゃんも姉ちゃんもヒマだから
ミッチーの手伝いで客引きとかしてたんだと。

俺も面白そうだなと思って、昼間は道路整備の仕事して
夜になるとミッチーのとこいって客引きやったりしてたわけ。
まあボランティアだから客引きは金にはならんけど。
そのおかげで俺も友達いっぱい出来てさ、女の子の友達も結構出来たわけ。
なんかだんだん人生が楽しくなってきてさ、不思議なもんだよ。
20になるまで死ぬこと考えてた引きこもりが、
気がつくと生きてることがたのしくて
たのしくてしょうがなくなっちまってよ。まだつづく・・

だけど楽しい時間はそんなに長く続かなかったよ。ある日、雨のよく降る日
だったからかなぁ~。すごく記憶に残ってるんだけど、
ミッチーが自宅で首つって自殺したんだよね。
なんか店の経営がうまくいかなくて、いろんなとこに
借金しててさ、毎日とりたて屋が店に来てて、
それが苦になって死んだらしい。
店の経営のことなんて全然話さなくてさ、そんなになるほど苦しんでた
なら相談して欲しかったよ。

ミッチーがいなくなると、俺らもアーケードに行く理由なくなるじゃん。
それにお互いあうとミッチーのこと思い出しちゃうし
なんかいきなしあいづらくなってさ、仕事にしたって
いまいち身が入らなかったんだよね。

んで嫌になってきて道路整備の仕事やめて地元帰ってきちゃったよ。

ここまでが20の話。こっからが21の話。

地元でアパート借りて、そっからは友達とかそういうのなんか嫌で誰とも仲良く
しないようにしながらスーパーのパートやりながら生きてたよ。

久々にネットやっててさ、そういえば、19のときの自殺支援サイトのこと
思い出して、似たようなサイトネットで探したわけよ。
んで見つけて掲示板に面白半分で書き込みしたのね、
僕と自殺しませんか~って。
そしてメールがきたのよあいつから・・・
ピロリンだよピロリン

『         ピロリンさん 200X/XX/XX(木)

 僕は××県のとある社会人です、生きていることが嫌で嫌で
 死にたいです。良かったら僕と一緒に死にましょう   
                             』

なんとなく気になっちゃってさ、メールしてみたのよ。
んであう約束してさ・・・

会社休んでそいつに直で会ってさ、あのときなんで来なかったのか
あれからなんで2年もの間生きてたのか、
どうして死にたいのかいろいろ聞きたくてね。

適当に喫茶店で待ち合わせして、先にいって待ってたら
そいつ昼間から厚手のコート着てでっかい帽子かぶっててさ、
いかにも人目さけてる感じで近づいてくんの。

「お待たせしました、ピロリンです」

なーんかおかしいんだよねそいつ、どっかであってる気がしてさ。
んで、よーく顔みたら似てるんだよね。
似てるんだよ、俺に・・・・

「僕はあなたのことを昔から知っています、2年前にあなたが自殺
したがってたことも、両親が死んだことも、去年あなたの友達が
自殺したこともね。僕の顔、そっくりでしょう。似てるはずですよ。
あなたの父親は昔から女癖が悪くて、結婚してからもよく浮気してたんですよ。
知ってましたか?あなたの父親が浮気相手と作った子供のこと。
それが僕ですよお兄さん。」

そいつは俺の腹違いの弟だった。そしてそいつの母親は親父との結ばれない
関係を苦にして自殺したらしい。
そいつの話だと2年前、通り魔事件で親父を殺したのは
自分だという。そいで親父の息子だった俺にも復讐したかったんだと。

どこから手に入れたのか、そいついきなり拳銃出してよ、
目つむりながら、ああ、俺の人生もこんなもんかって思ったよ。
バーンって音がなって、キャーって店の客が悲鳴あげてよ。

俺は椅子から転げ落ちて倒れこんでよ、

「救急車、店長救急車呼んでください!」

きっと店員さんが俺のために救急車呼んでくれてるんだろうな。
でももうだめだよ、撃たれてるし。どうせならこのまま死なせてくれって
思ってたら。あれ?どこも痛くないんだよね。
起き上がってまわりの様子みたら。俺の弟だっていってたそいつが
頭から血だしてぶっ倒れてるんだよね。

結局そいつは俺にその光景を見せたくて呼び出したらしくて、
そいつも自殺したんだよ。

これでとりあえずこの話は終わりなんだけどさ、2年前のあの日、
あいつは自殺しようとして支援サイトで仲間を集めたけど、
ドタンバで死ぬ前に親父殺すこと思いついて、
んで親父を殺し、そのあとでどうせなら俺の前で死のうとして
俺を2年間探してたんだろうね。
で、地元戻った俺をみつけて、自殺サイトに
たまたま俺が書き込みしてたからうまく連絡とって
会う約束してきたんだよ。

別に怖い話じゃなかったから面白くなかったかもね。
ただなんつーか、誰かに言いたかった。

今でも俺は仲間は作らないようにしてるよ。家族も恋人も友達も
なにもいらん。もう人の死にはかかわりたくないし。

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