これは私の父が小学生の頃に体験した話です。

放課後、いつものように友人5人と学校でかくれんぼをしていました。(早く帰らなければ先生達から叱られる為、数分で終わるかくれんぼを毎日一回だけして 帰っていました)

その日はジャンケンで父が負け、教室の後ろでしゃがみ込み、顔を手で覆いながら30秒数えていました。

「…にーじゅきゅー、さーんじゅ!もーいーいかーい?」

『まあだーだよー』

そう返されたので、また父は数え始めました。

「…よんじゅはーち、よんじゅきゅー、ごーじゅ!もーいーいかーい!」

『まあだーだよー』

今度は遠くからそう返され、今度は早口で数え始めました。

「ごーじゅはーち、ごーじゅきゅ、ろーくじゅ!もーいーいかーい!」

『もーいーいよ?』

何故かすぐ頭上から声が聞こえました。

上には隠れる場所なんてなく、ましてや最後の声は聞き慣れた友人の声ではないのです。

みすみす自分の隠れた場所から声を出すなんて事はしないのです。

いつもなら問い掛けた後に返事がなければ探しにいけるのです。

そのまま父が固まっていると、どれぐらい経ったか、廊下から走ってくる多数の足音が聞こえました。

「あー、もうお前何やってんだよー」

「○○(担任の名前)に先に見つけられたよ、あーあ」

「あーあ」

「おい、聞いてんの!?」

「○○(父の名前)?」

その時父は酷い顔で泣いていた為、すぐ手をどけられませんでした。

恐怖より友人達が来てくれた安堵で泣いてしまったそうです。

普段、泣く事がなかった父の酷い泣き顔を見た担任に驚かれながら、その日は家まで送ってもらいました。

後日、友人5人にその恐怖体験を話すと、それから卒業するまでかくれんぼをしようと言い出す友人はいませんでした。

もちろん、あの時教室には誰も隠れていませんでした。では誰が隠れていたのでしょうか。いや、隠れていたというよりは…

大人になり子をもった今でも、父は『隠れん坊』は禁断の遊びだと信じています。