オカルト仲間のMから
「廃屋探検に行こう」
と電話があった。霊感看護師のYさんも一緒とのこと。夜勤明けのYさんと病院のロビーで待ち合わせる。
「“見える”人にとってはココもお化け屋敷みたいなもんやけどねー」
Yさんは私の隣を指して、ほら、Sちゃん(私)お婆ちゃんにぶつかりそう、と笑った。(0感の私には何も見えなかった)
買い物して食事して、メインイベントの廃屋探検に向かう。そこは意外と街なかにあったけど、まわりをうっそうと茂った雑木林が覆ってるので結構雰囲気あっ た。田舎の古い日本家屋な感じの建物で、噂じゃ幽霊もでるとかでないとか。
木の引き戸をこじあけて入ると、雨戸が閉まってるんで昼間でもかな~り薄暗い。ふた部屋抜けた奥に階段があったので上がってみる。一階はそうでもなかった けど、上の階はゴミ屋敷かってくらい家財道具が散乱してた。ほこりもひどいし暗いしなので雨戸をちょびっと開けた。
Yさんはなにかピンとくるものがあったのか、床にちらばったガラクタを手にとって品定めし始めた。私はなにもピンとくるものがなかったんで適当に家捜しし た。っても2階はYさんのいる部屋の横に書斎みたいな小さい部屋があるだけだった。
書斎の文机(って言うの?)に古めかしい電気スタンドがあって、紐をひくと明かりついたんでそこいらに落ちてる手紙ひろって読んで見よう…としたけど昔の 崩した字でなにがなにやら。
ちょっと飽きてきて携帯プレイヤーで音楽なんぞ聴いていたら、
「やったー!」
とYさんの歓声。
なによ何よ?と寄っていったMと私はギョッとなった。
「Yさん…それ骨壷じゃないとですか?」「ちょ、イカンでしょうそれは!」
しかしYさんはニコニコして
「これ探しとったんよー」
と凄くうれしそう。変、なんか変。いつもと違う。まさかなんか憑いた?でもまだ時計は昼の2時さしてるしーここで自分の行動に違和感。
…あれ、私なんで廃屋の掛け時計なんかみて安心してんの?もうとっくに停まったままだろうに。
ふと雨戸の外を見てもっかいギョッとなる。日が暮れかけてる。薄闇せまってる。
え?なんで?こんないつのまに何時間も過ぎてんの?1時間もいなかったはず。
「撤退!撤退しよ!Yさんそげなもん置いてこう!」
MがYさんの手から壷をもぎとった。抵抗するかとおもわれたYさんだが、ちょっと残念そうな顔をしただけで私たちと一緒にきてくれた。点けたままのハズの スタンドはいつの間にか消えてた。大体こんな廃屋に電気なんてまだ通ってたんだろうか。
「…あ、いけん、雨戸あけたままやった」
階段下りたところでYさんがつぶやいた。
ちょっと閉めてくる、といい残してあがっていった。
「戸締りしとかんと○○さんにがられる(怒られる)けんねー」
とかいいながら。○○、は聞いた事もない名前だった。
私とMはじりじりしながらYさんを待った、が、降りてくる気配はいっこうにない。
「ちょっと行ってみてくるわ」
しびれを切らしたMが階段を登っていく。私はもう逃げ出したい一心で出口の引き戸のとこまで後退した。はよ来い。はよ二人とも降りて来い。だが降りてくる どころか2階からは物音ひとつきこえない。
もう駄目、トンズラこきます、外で待たせてちょうだい、臆病者でゴメン!引き戸に手をかけ、一気に……あ、あれ?
「えぇ?開かんよ!?」
なして?多少はガタついてたけど入るときはちゃんと開いたのに!
そしてそれが合図だったみたいに、階段からミシリ、と音がした。
みしり、 みしり、 みしり、 ひとりぶんの足音がゆっくり階段をおりてくる。
コイツはYさんでもMでもない、と直感した。なぜだか○○さん、という言葉が頭に浮かんだ。日が落ちて隙間からも明かりが入らなくなった一階はもうほとん ど闇。手元もよくみえない。その闇の奥のほうから足音がゆっくり、確実にこっちにむかってくる。
半泣きになりながら戸をひっぱる、お願い、開いて、あんなの会いたくない!開けって!たのむから!だが「それ」は私の背後にすごく嫌な気配をともなって迫 り、そして、肩に…
てところで汗びっしょりで目がさめた。あ、あはは、夢かよオイ驚かせやがって。
疲れてんのかなー最近、と朝食かっこんでるとメールがあった。
『廃屋探検のおさそい☆です』 Mから。
…外からながめるくらいなら、行ってもいいかな、と思っている。