ある日、大学の講義が終わり、自宅のある区域に向かうJRに乗ってたんだ。
よほど疲れていたんだろう、本来の降りるべき駅を過ぎてしまい、気づいた時
には2駅程離れてしまっていた。慌てて電車から降りて、本来の駅へ向かう電車を
待っていた。まあ、何回かこういうことがあったから、そこは落ち着いて対応
できたと思う。時刻表を見ると、いまから35分後くらいに電車が来ると分かった。
定期だから切符も買わなくていいし、その後10分ぐらいは携帯をいじって暇を
つぶしてた。

携帯をみると時刻は午後八時半。辺りも暗くなり、駅にいるのも自分だけ。
3分後くらいに違う方向へ向かう電車が来て数人増えたが、それでも少ない。
携帯を見るのも飽きて、ふと向こう側のホームに目を向けると、ベンチに
サラリーマン風の男性が座っているように見えた。

見えた、というのも、その人のいるホームはこちら側のホーム同様、薄暗くて
よく見えなかったからだ。(今思い返してみると、その人の周りはなぜか暗かった
ような気がする。)気になったので、あと15分くらいで電車が来ることもあり、
向こう側のホームに行くことにした。(帰る方向の電車は向こうのホームだった)

向こう側に行く階段をのぼっていき、ホームに着いた。だが、見渡すとさっきまで
いたはずの男性がいなくなっている。あれは見間違いだったのか?そう思いながら、
自分はなんとなく男性が座っていたベンチに座った。何分かすると、だんだんと頭や
体がだるく、重くなってきたように感じていた。気のせいだと思いつつも、電車を待ち、
気がつくと何人か人がおり、電車が来る時刻になっていた。

だるい身体をなんとか動かして電車に乗り込むと、少しは身体が楽になり、電車が発車
するころには普通の体調にも戻っていたと思う。10分くらいした時だろうか。正面から
視線を感じる。目を空けると、左前には人はいるが、正面の席には誰もいない。
(四人座りの場所だった)

おかしい。

確かに視線を感じたのに。気のせいか?と思いまた目を閉じる。また感じる。そのうちに
なぜか頭の中が圧迫されたように感じ、目を閉じてみると長い髪をした2,30代の女性が自分
をジ―ッと見ている映像が浮かんできた。こんなことは初めてだったので、なんだこれ、
気分悪い、と思って目を開けるといない。しかし、閉じると同じ映像が浮かんでくる。
そのうち、自分が誰なのか自分でも分からなくなってきてしまった。

頭はどんどん重くなり、声を出そうにも胸が圧迫された感じになっていて、何も
できない。その間にも、視線はあいかわらず私に向いていた。その時、私は何を
思ったか頭の中で、「やめろ。私は、あなたじゃない。」と呟いていた。

その瞬間、身体の中からスーッと何かが抜けていくような感覚がし、それと同時に
視線も、頭の中の映像も消えてしまった。その後は何事もなく、帰路に着くことが
できた。ただ、ひとつ謎の後遺症があったけど。