書く前に、あらかじめ言っておく。怖い話というのは、大なり小なり、フィクションの部分が存在する。
それを踏まえて、この話を書く。
ある小さな南の島で、ボランティア活動を行っている日本人青年がいた。
彼がその地になじみ始めた頃、事件が起きる。
ある日、彼が何者かに両足首と両手首を切断され、発見される。幸い命に別状はなかった。
彼は、駆けつけたボランティア団体の役員にこうつぶやいた。
「おれは何も悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない・・・●▲X”#$」
最後の言葉は、日本語ではなく、どこかの言葉らしい。役員がなだめ落ち着かせると、
彼はなぜこのようなことになったか、ゆっくりと語りだした。
彼の祖父は、戦時中、兵士として出征していた。当時はこの島は、日本軍の占領下であった。
軍も制圧したが、いまだ残党が残っており、祖父も残党狩りにかり出された。
ある日、リーダー核の男が捕らえられた。その男は、見せしめに兵士からの虐待を受けた。
男は海岸に連れて行かれ、浅瀬にいるシャコ貝に無理やり手足を突っ込まれたのだ。
シャコ貝はビックリして、貝殻を閉じる。万力でつぶされているような、激しい痛みが男を襲う。
そのまま男は放置された。潮が満ちてきても、溺れないように筒で呼吸をとらせた。
祖父は男の見張りを命じられた。男は怒り狂い何かをひたすら叫んでいた。
日がたつにつれ、だんだんと男はおとなしくなった。ある日、祖父が横で食事を取っていると男が話し掛けてきた。
言葉はわからないが、どうやら腹が減ったらしい。泣きながら懇願してくるので、思わず祖父は食事を与えてしまった。
しかし、その少々の善意があだとなった。
祖父が男に食事を与えているところを、他の兵士に見られてしまったのだ。
祖父は非国民だと責められ、バツとして己の腹をかっさばくか、男の命をその手で絶つか
選ばされた。もちろん祖父は死にたくない。男を直接手にかけることにした。
祖父はノコギリを手渡され、まず手首を切断するよう命じられた。手首に刃を押し当て、ぎこぎこと
切り出す。しかし渡されたノコギリ、錆びていた。しかも傷口から噴出す血と油で滑って
なかなか切れない。男はノコギリの動きに合わせ、悲鳴を上げる。2時間が経過した。
いつのまにか、潮が満ちてしまった。水中では、もう切ることは出来ない。
「また明日にしよう。」他の兵士が言った。
次の日、祖父は汗だくになり、なんとか片方の手首を切断した。
「よし、次は左だ。」言われるがままに、祖父はもう片方を切断し始めた。
ににゅににゅににゅににゅににゅににゅ・・・・・・・・・にゅぎこぎこぎこ
皮膚、筋肉が切断され、骨が見えてくると音が変わってくる。
ぎこぎこぎ・・・・・ごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅ
潮が満ちる前に、両手首を切断することができた。
「よし、次は足だ。あしたもがんばれよ」
いっそ一思いに殺してやればいいものを、そう思ったが祖父に
訴える予知はなかった。次の日も、祖父は汗だくで作業を行った。
もはや作業としか言いようが無かった。男はすでに発狂している。
「●▲X#$7・・・・」何かをつぶやいていた。
結局、両方の足首を切断する前に、男は筒から呼吸することができなくなり
溺死した。遺体から首を切断したところで、祖父は解放された。
その後戦争は終わり、祖父は帰国する。「あのとき、みんなどうかしてたんだ。」
繰り返し、その話を聞かされていたのだという。
この島を訪れた青年は、何か祖父の罪滅ぼしになればと、ボランティア活動に参加
したのだという。その矢先だった。彼は何者かに両手足首を切断された。
手足を切断された青年は、島の病院に入院していたのだが、しばらくして姿を消してしまう。
何日かして、再び発見されたときは異様な様相であった。
遺体は、二枚貝のように折りたたまれ、それを囲むようにシャコ貝の貝殻に、切断された
手、足、首が入れられ置かれていた。
遺体の胸には「●▲X#$&・・・」と意味不明の文字。
原因はなんなのか、役員は島民に聞いてまわったが、この事件に対し島民はみな口を閉ざす。
ある老人から、古い手紙をうけとった。
戦時中に虐待され、殺された男が書いたものだという。
「日本人の孫が来たら、これを渡せと言われた。」老人は
現地の言葉でそういった。そこには青年の背中に書かれた文字が記されていた。
島に古くから伝わる呪いの言葉だそうで、島民でもあまり知る者はいないという。
その横に、小さく「見ろ。お前の孫は死んでるぞ。」と書かれていた。
青年の祖父にあてて書いたような文面で・・・。
後日、ボランティア団体は島から撤収。間もなくして、青年の妹が日本の自宅で怪死。
自室で発見されたとき、体が反対側へ折り曲げられ、二枚貝のようであったという。
どうやってそのようになったのかは不明。両親に疑いがかかったが、発狂して病院おくり。
手、足、首は水槽の中に入れられていた。
二枚貝みたいな死体、まだ出てきてるみたいよ。