かなり昔だが、まだレベル的に言うとHey! Say! JUMPくらいの時期の嵐がMCをしていた
「Usoジャパン」と言う番組を知ってるだろうか?

その番組の中で、うちの地元にある、ガス爆発を起こし中に住んでいた何人かが死亡した女子寮
と言うのが特集され、学生やらヤンキーやらがこぞって肝試しに侵入したりしていた。

その女子寮と言うのが特殊な作りで、とりあえず入口が左右に二つ、そこから階段を上っていくと真ん中が吹き抜けでワンフロアーに3部屋ほど、それの4階建 てになっていて、屋上まで行くと丁度真ん中に吹き抜けが続いて、一応柵越しに顔は合わせられるが左右に行き来は出来ない作りになっている。(わかりにくく てごめん)

その女子寮が特集されて数ヶ月。

やはり出ただの見ただの言い出すやからが多数いて、そいつの友達、またその友達と噂に尾鰭(おひれ)がついて、地元中がその話で持ち切りとなった。

その時に一応僕らが聞いた話はこうだった。

なんでも、右の入口から入って三階の廊下突き当たりの部屋。

ここの部屋だけ生活感たっぷりに家具やら衣服やらが綺麗に残っていて、その部屋に残っていた遺留品から出てきた名前が「菜々子」

その菜々子さんが住んでた部屋の中から電話をかけると、女の泣き声が聞こえるやら、帰りに事故を起こすやらと、どこにでもあるような在り来りの都市伝説 だった。

もちろん、僕らも噂の真偽を確かめるため、その部屋に突入して電話をかけたり、友人に至っては壁や家具を破壊し暴れていたが、帰りも事故に遭うことなく、 鼻で笑いながら女子寮の事は徐々に僕らの頭の中から忘れさられていった。

地元でも女子寮騒ぎが落ち着きだしたある夏、友人数人と公園に集まって話をしていた時、ふと一人が悪ふざけを思い付き、それを実行することにした。

その計画とは、集合に遅れて来ると言っていたM君を一人で菜々子ちゃん部屋に突入させると言ったものだった。

早速その計画の発案者HがMに電話をかけ、公園から今女子寮に向かっているからお前も直接女子寮の方に向かって来い!と嘘をつき
着いたら連絡くれ!とだけ伝え電話を切った。

その時は、Mに一人で女子寮をある程度回らせてからネタばらしと言った爆笑コースの可愛いいたずらだったのだが、後にこの事件は本気で笑えないものとなっ た。

電話をかけてから30分くらい経過したときに、ハメられていることを知らないMから着信が入った。

僕らも一人でテンパっているMのあわてふためく姿を想像し、クスクスと笑いながら電話に出た。

だが、当の本人のMの様子が少しおかしかった。

電話をとるなり
「お前ら逃げてないで早く出て来いと」わけの解らないことを言ってきた。

ここで発案者のHが
「菜々子ちゃん部屋で待ってるから早く来い」とだけ言い乱暴に電話を切った。

しかしいくら待ってもMからの電話はなかった。

流石に心配になった僕らはMに電話をかけてみた。

電話をかけてすぐに「通話」の文字がディスプレイに表示されたので、慌てて携帯に耳をやると、縄跳び?みたいな(ヒュンヒュン)と言った音と、狂ったよう な女の笑い声、それとMの「ごめんなさい、ごめんなさい」と言った半泣きの声が耳に入ってきた。

僕らは一瞬どういう状況か解らずフリーズした。だが、Hがヤバイ!!と言って突然走り出したので、とりあえずみんなHの後に続いて行った。

10分くらいで女子寮に到着し、みんな手分けしてMの捜索にとりかかった。

だが以外と早くM発見の報告が入り急いでその場所に行くと、Mは菜々子ちゃん部屋の中でうずくまりながら、しきりに「ごめんなさい」と呟いている。

そしてなぜか背中には薄汚れた麦藁帽子が乗せられていた。

どうしていいか解らず固まっている僕らを横目に、Hが「取り合えずここから連れ出そう」とMの背中に乗っていた麦藁帽子を窓の外にぶん投げたのを合図に、 皆でMを抱え込む形で女子寮を後にした。

最初に集まっていた公園にMを連れていき、少し落ち着いてきた様子のMに事のいきさつを聞いてみた。

Mは最初の電話を受けたあと、すぐに女子寮に向かった。

そして僕らの嘘を信じて一人で中に入ったらしい。

入ってすぐに上の方から話し声や笑い声が聞こえたため、Mは俺達だと思って各階、各部屋を除いて回ったらしい。

だか声はするが俺達の姿が見つからないのでMは一旦僕達に電話を入れた。

そこで菜々子ちゃん部屋に皆居ると信じたMは菜々子ちゃん部屋に走って向かった。

そして「ウラァ!!」と叫びながら勢いよくドアを開けたMの目に飛び込んできたのは、紐のようなものを持った若い女だったらしい。

時間と場所を考えてもここに女一人で居るのもおかしいし、直感的にMはヤバイと思ったらしいが金縛りに会ったように体が動かなくなり、腰を抜かしその場に へたりこんだ。

その女は血走った目でM凝視し、手に持った紐?をこれでもかと言うくらい振り回し、狂ったように笑いながら徐々にMとの距離を詰めてきた。

Mは恐怖で土下座する形で頭を抱え込み、女の笑い声を聞きながら必死に謝っていたとの事。

みんな固まった。

Hに至っては責任を感じ、オイオイ泣いていた。

しかしいつまでも公園に居る訳にはいかないので、その日は一旦解散しようと立ち上がった瞬間、その場にいた全員また固まった。

今の今までMが座っていた場所に、ついさっきHが投げ捨てた汚い麦藁帽子が、ちょこんと置かれていた。

すぐさまHがブチ切れた。

「ふざけんな、誰だ!ぶっ飛ばすぞ!!」

だが投げたH本人も気づいているが、帽子をぶん投げた後は皆でMを公園に連れて来るので必死だったので、誰も帽子を拾いになんか行っていなかった。

取り合えず、帽子をそのままにすることは出来なかったので、コンビニで食塩とライターオイルを買ってきて、皆で手を合わせながら帽子焼いた。

そしてMをHが送っていく形でその日は家に帰った。

次の日の朝早くHから電話がかかってきた。

寝ぼけながら電話をとると、Mが××病院に入院したとの事。

慌てて病院に向かおうとしたが、今は面会謝絶と言うことで、詳しい話を聞こうとHと合流することにした。

Hの話によると昨夜Mを家まで送り、Mの部屋で一服してから帰ろうとしたとき急にMが頭が痛いと呟き、そのままぶっ倒れたらしい。

救急車を呼び両親が付き添ってMは救急病院に搬送された。

詳しい事はHも解らずMの両親の話だと、頭の血管が破裂して今、生死の境をさ迷っている最中とのこと。

Hはその間ずっと病院の外に設置してある小さい祠の前でMの無事を祈っていた。

Mが倒れてから3日後なんとか峠を越えたと両親から聞かされたとき僕達は緊張の糸が切れたことと安堵感で号泣した。

Mはその時の後遺症で少し滑舌が悪くなったが今も元気だ。

ちょっとした悪ふざけのつもりがこんな事になってしまったので、あれから僕達は心霊スポットと呼ばれるところに一切近づいていない。

あれが霊のせいだとは言い切れないが、みなさんも心霊スポットには注意した方がいい。