私の弟から聞いた本当の話です。弟の友達のAくんの実体験だそうです。Aくんが、子供の頃Aくんのお兄さんとお母さんの田舎へ遊びに行きました。外は、晴れていて田んぼが緑に生い茂っている頃でした。せっかく良い天気なのに、なぜか2人は外で遊ぶ気がしなくて、家の中で遊んでいました。ふと、お兄さんが立ち上がり窓のところへ行きました。Aくんも続いて、窓へ進みました。お兄さんの視線の方向を追い掛けてみると、人が見えました。真っ白な服を着た人、(男なのか女なのか、その窓からの距離ではよく分からなかったそうです)が1人立っています。(あんな所で何をしているのかな)と思い、続けて見るとその白い服の人は、くねくねと動き始めました。(踊りかな?)そう思ったのもつかの間、その白い人は不自然な方向に体を曲げるのです。とても、人間とは思えない間接の曲げ方をするそうです。くねくねくねくねと。Aくんは、気味が悪くなり、お兄さんに話し掛けました。
「ねぇ。あれ、何だろ?お兄ちゃん、見える?」
すると、お兄さんも
「分からない。」
と答えたそうです。ですが、答えた直後、お兄さんはあの白い人が何なのか、分かったようです。
「お兄ちゃん、分かったの?教えて?」
とAくんが、聞いたのですが、お兄さんは
「分かった。でも、分からない方がいい。」
と、答えてくれませんでした。あれは、一体何だったのでしょうか?今でも、Aくんは、分からないそうです。
「お兄さんに、もう一度聞けばいいじゃない?」
と、私は弟に言ってみました。これだけでは、私も何だか消化不良ですから。すると、弟がこう言ったのです。
「Aくんのお兄さん、今、知的障害になっちゃってるんだよ。」
分からない方が
占いによって変わった関係
ワタシには親友がいた
彼女は私の悩みを聞いてくれたし、助けてもくれた
ワタシにはライバルがいた
勉強でも、好きな人の事でも張り合った
でも、ワタシは臆病だった
好きな人に好きと言えない事が、悔しかった
しかし、同時に波風の立たない今に満足していたのも正直な気持ちだ
そんな状況がずっと続くわけがないのに、直ぐ先の未来に目をつぶっていた。
A雪は、そんな奥手のワタシに面白い事を教えてくれた
とある掲示板には、謎のURLが時折書き込まれるというものだ。
「C華にぴったりだと思うよ」
それは、よく当ると言われる占いのHPに繋がり、その的中率の高さから密かに広まっていると言う。
彼女はパソコンなどにとても詳しく、初心者にもとても判りやすく教えてくれた。
ワタシはパソコンを持っていないが、母親が仕事で使っているデスクトップと言う物が家にあるので
早速、言われた掲示板とやらを探すが、慣れない事もあってなかなか見つからない。
A雪は「そんな簡単に見つかったら、苦労しない。逆に言えば、見つからないからこそ、見つけた時に
”ご利益”があるんじゃないの?」等と言っていた。
確かにそうかもしれない。
学校から帰ってから、毎夜眠い目をこすりながら掲示板の過去ログなどを探していた。
七日ほどして漸くそのHPを見つけたとき、思わず小さくガッツポーズをした。
それは、何年ぶりのことだろうか?
自分が望んで、そして自分の力で手に入れた物が今、目の前にある。
良い子でいようとして、言われるがままに勉強に打ち込んでいたワタシが、初めて自分の意思で手に入れた
物だった。勿論、他人から観れば取るに足らない事なのだろうが、とても嬉しいことだった。
A雪には、だから感謝している。
占いは午前二時から十分間で行う事
其れが注意事項であり、決して他人に内容を言ってはいけないというものだ。
決まりを守らないと、占いは悪い方向に実現してしまうという。
ワタシは占いをする。
それは当たり障りないようなものだったが、自分で漸く手に入れた”金言”だ。
だから、きっとこの占いで自分が変われると思っていた。
いや、そう信じたかっただけかもしれないが、自分が変わる切欠にはなったと思う。
その占いに沿って行動する事で、何となく自分が”守られている”というような感覚があった事で、他の人が
怖くなくなってきた。
勿論、鵜呑みにしていた訳ではないが、迷った時にはあの占いが方向性を示してくれるから、そういった意味では
日々がとても安心できるものとなっていった。
しかし、ある夜。
いつも通り、占いのHPを開き、占いを始めると・・・
『赤いリストバンドが吉。しかし、其れを誰にも気が付かれなければ。
もし、誰かに其れを指摘されると、吉が逃げる恐れあり。 』
これは何だろうか?
赤いリストバンドか・・・。
確か、一週間前にA雪と買い物に行った時に、幸運のお守りとして買ったっけ・・・。
まあ、腕にしていてもその上から別の物をしておけば、大丈夫だろう。
『見つかる訳ない』
元来臆病なので、そういった予防策はとっておこうと思った。
しかし・・・
M月に気が付かれた・・・・!
何で???
それで、イラついていたら、親友と些細な事で喧嘩した。
『占いが当っている?』
内心偶然と思いながらも、心の底で信じ始めている。
その後も、占いを外した事で、全て自分に不利な出来事が降って来る。
財布を落とした事もあったし、怪我をした事もあった。
ワタシは、この世の全てが怖くて怖くて堪らなかった。
やはり、あの占いは良く当る・・・・!
だから、あの占いが悪い方向で当る時は、大抵クラスメイトが関与している事に気がつくのに時間は掛からなかった。
『・・邪魔だ・・』
ワタシの人生を奪う権利なんて他人にあるの?
ワタシは怒りに震えた。”何か”がワタシを黒く暗く塗りつぶしていく。
占いを見る。
もう止める事なんてできない。
今日は絶対言われてはいけないキーワードがあった。
だから、それなりの格好でぼんやりするするまま、電車を待っている。
と、いきなり声を掛けられ、硬直する。
だ・・誰?・・や・・・・やめて・・・・・・
しかし・・・・。
「あら、綺麗ね。C華。」
又、ワタシの・・・・・
そう思ったとき占いを思い出した
”貴方の失くしもの、誰かが拾い続ける”
お前さえ居なければ、!きっとワタシの占いの成果はいいはずだ
お前が邪魔をした。いつも誰かが邪魔をした。
これからもきっと邪魔をするに違いない
そんな人生嫌だ!!
そう思った瞬間、私の中で何かがはじけた
叫んだのかもしれない
泣いていたのかもしれない
誰かをカバンで殴りつけたような感触が残っている
覚えているのは、それだけだった
誰かに取り押さえられた記憶がある
組み伏せられる
何で?私が!あいつを、捕まえてよ、あいつが私の人生を・・・・・・
【女子高生、飛び込み。現場は一時騒然】
喧嘩していた二人の女子生徒が、誤ってもう一人を突き飛ばし、線路に転落、急行にはねられて即死
『全く。M月もC華も使えない』
”彼”もこれでは学校に居辛くなってしまうだろうに・・・
彼を巡ってあの二人が牽制しあっているのは、学校では噂になっていたことだ
その二人が、喧嘩の末片方が死亡などと・・・・
C華の行動は予想外だった
あの子なら、ショックで引き篭もるぐらいだと思っていたが、まさか直接行動に出るとはね・・。
せっかくHPまで用意して、時間を掛けてM月とC華を克ち合わせたのに、両方リタイアでは予定が狂う。
それでは、面白くないでしょうが・・。
まあ良い。
彼が欲しかったのは事実だが、悪い噂のたった男を手に入れても仕方がないし。
私は新聞をテーブルの上に投げ出すと学校に向かった
まあ、これで暫く退屈しなくてすみそうだ。
その意味ではC華は実に良いネタを提供してくれた
もう会う事はないだろうけど、目の上のたんこぶが一気に二つなくなったのは、私の勝ちという事で
このゲームは終わり。
私の学校では騒ぎが大きくなっていた。
まあ、当然だろう。
優等生の二人が喧嘩した挙句、警察沙汰になるような事件を起こしたのだ。
私は極力、二人との友情を失った事を悲しむ演技をしていた。
他人が自分の手の上で踊る事ほど、痛快な物はない。
しかし、C華はともかく、M月に関しては少し納得がいかない事があった。
あの冷静なM月がああもあっさりと殺されるものだろうか?
あのURLはM月とC華にしか教えていない。
M月はああいったものを信じない性質だから、客観的にしか受け止めないだろうが、C華の行動が変化していれば
鋭いM月なら、「C華があの占いによって影響を受けている」と見抜けるはず・・・。
其れなのに、C華に”殺された”。
やはり、何かおかしい。
勿論、人間だから、予想外の行動に対処できなかった事は考えられるが、M月を最大の障害と考えていた
私にとっては、こうもあっさり終わると、却って納得できるような物ではなかった。
私は葬儀の翌日、M月の家に出向く事にした。
葬儀は学校関係者らが集まって、なかなか盛大に行われたが、ふと気がつくと私の周りには誰もいなかった。
まあ、あの二人の友人として気を使われているのだろう・・・。
違和感がありながらも私はそう考えて、直ぐに忘れた。
M月の日記があった。
そこには意外な事が書かれていた。
(あの占いは危険だと思う。きっとC華はあれを見ているはずなのだが、内容は判らない。でも、危険だと思う。
C華の雰囲気は周りが見えなくなっている”信者”みたいだ。そう、オウム信者のように盲信している雰囲気がある。
私も占いのHPを見たが、ある日を境にガラッと雰囲気が変わっている。それは・・・)
え・・?
私はその内容に驚愕する。
私はそんな事は一度も”M月の情報”に対応する占いは書いていないし、第一”そこまで詳しく”書けるわけもない。
M月は何処のHPを見ていたのだろうか?
家族に許可を貰って、M月のパソコンを操作してみるが、お気に入りに入っているアドレスは私のでっち上げたHP
とは異なる物だった。
そこに記されたものは、真っ赤な画面に黒い文字で、
『このHPを見た人は、三日以内に誰かに殺される』
酷い夢。
私が、誰かに殺される、という夢だ。
友達があまりいない私にとって、小説を作ることが唯一の楽しみ。
昨日は遅くまで小説を書いていたから、そのネタが夢に出たのだろう。
頭痛が酷い。
「あら、綺麗ね。」
私は何気なく、クラスの友人に声をかける。
唯の朝の挨拶にしては不適切かも知れないが、そういわれて怒る人もいない。
昨日は、ずっとパソコンの前にいたからね、仕方ない。
当たり障りのない会話で十分だった。
その時、友人は驚愕の表情と共に、泣きそうに口元を震わせる。
何・・こいつは・・・。
私は少々傷ついたように感じる。
私が声をかけるのがそんなに変なの?!
だが、次の瞬間、彼女は泣き叫ぶように言い放つ。
「どうして、私の邪魔をするのよ!私の人生を奪う権利なんて無いでしょう!!!」
はあ?何言っているんだろ?
私は気の狂ったようなこの子から離れようとする。
朝っぱらから変なのに声をかけてしまった。
少し、引くわね・・こういう子は・・。
しかし、私が背を向けて離れようとした瞬間、私は背中に衝撃を感じる。
え・・・・・?
天地が逆さになり、線路が急速に目の前に迫ってくる。
衝撃と共にホームが見える。
口元を歪めて見下ろすのは・・・
私は、耳に突き刺さる甲高い音と、人の悲鳴を最期に聞いた。
猿夢
9 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2000/08/02(水) 07:03
私は、夢をみていました。昔から私は夢をみている時に、たまに自分は今、夢を
みているんだと自覚する事がありました。この時もそうです。何故か私は薄暗い
無人駅に一人いました。ずいぶん陰気臭いを夢だなぁと思いました。
すると急に駅に精気の無い男の人の声でアナウンスが流れました。 それは
「 まもなく、電車が来ます。その電車に乗るとあなたは恐い目に遇いますよ~」
と意味不明なものでした。 まもなく駅に電車が入ってきました。それは電車というより、
よく遊園地などにあるお猿さん電車のようなもので数人の顔色の悪い男女が一列に
座ってました。
私はどうも変な夢だなと思いつつも、自分の夢がどれだけ自分自身に恐怖心を与え
られるか試してみたくなりその電車に乗る事に決めました。本当に恐くて堪られなければ、
目を覚ませばいいと思ったからです。私は自分が夢をみていると自覚している時に限って、
自由に夢から覚める事が出来ました。
つづく
12 名前: まだつづくぞ! 投稿日: 2000/08/02(水) 07:09
私は電車の後ろから3番目の席に座りました。辺りには生温かい空気が流れていて、
本当に夢なのかと疑うぐらいリアルな臨場感がありました。
「 出発します~」とアナウンスが流れ、電車は動き始めました。
これから何が起こるのだろうと私は不安と期待でどきどきしていました。電車は ホームを出るとすぐにトンネルに入りました。紫色ぽっい明かりがトンネルの中を怪しく照らしていました。
私は思いました。(このトンネルの景色は子供の頃に遊園地で乗った、スリラーカーの景色だ。
この電車だってお猿さん電車だし結局過去の私の記憶にある映像を持ってきているだけでちっとも恐くなんかないな。)
とその時、またアナウンスが流れました。「 次は活けづくり~活けづくりです。」
活けづくり?魚の?などと考えていると、急に後ろからけたたましい悲鳴が聞こえてきました。
振り向くと、電車の一番後ろに座っていた男の人の周りに四人のぼろきれのような物をまとった小人がむらがっていました。よく見ると、男は刃物で体を裂かれ、本当に魚の活けづくりの様になっていました。強烈な臭気が辺りをつつみ、耳が痛くなるほどの大声で男は悲鳴をあげつづけました。
男の体からは次々と内臓がとり出され血まみれの臓器が散らばっています。
私のすぐ後ろには髪の長い顔色の悪い女性が座っていましたが、彼女はすぐ後で大騒ぎしているのに黙って前をを向いたまま気にもとめていない様子でした。私はさすがに、想像を超える展開に驚き、本当にこれは夢なのかと思いはじめ恐くなりもう少し様子をみてから目を覚まそうと思いました。
気が付くと、一番後ろの席の男はいなくなっていました。しかし赤黒い、血と肉の固まりのようなものは残っていました。うしろの女性は相変わらず、無表情に一点をみつめていました。
「 次はえぐり出し~えぐり出しです。」とアナウンスが流れました。
すると今度は二人の小人が現れ、ぎざぎざスプーンの様な物でうしろの女性の目をえぐり出し始めました。
さっきまで、無表情だった彼女の顔は、痛みの為ものすごい形相に変わり、私のすぐ後ろで鼓膜が破れるぐらい大きな声で悲鳴をあげました。眼かから眼球が飛び出しています。血と汗の匂いがたまりません。私は恐くなり震えながら、前を向き体をかがめていました。ここらが潮時だと思いました。
これ以上付き合いきれません。しかも、順番からいくと次は3番目に座っている私の番です。私は夢から覚めようとしましたが、自分には一体どんなアナウンスが流れるのだろうと思い、それを確認してからその場から逃げる事にしました。
13 名前: これで最後だ 投稿日: 2000/08/02(水) 07:11
「次は挽肉~挽肉です~」とアナウンスが流れました。最悪です。どうなるか、容易に想像が出来たので神経を集中させ、夢から覚めようとしました。(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)いつもはこう強く念じる事で成功します。急に「ウイーン」という機会の音が聞こえてきました。今度は小人が私の膝に乗り変な機械みたいな物を近づけてきました。たぶん私をミンチにする道具だと思うと恐くなり、(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)と目を固くつぶり一生懸命に念じました。
「 ウイーン 」という音がだんだんと大きくなってきて、顔に風圧を感じ、もうだめだと思った瞬間に静かになりました。
なんとか、悪夢から抜け出す事ができました。全身汗でびしょびしょになっていて、目からは涙が流れていました。
私は、寝床から台所に向、水を大量に飲んだところで、やっと落ち着いてきました。恐ろしくリアルだったけど所詮は夢だったのだからと自分に言い聞かせました。
次の日、学校で会う友達全員にこの夢の話をしました。でも皆は面白がるだけでした。所詮は夢だからです。
それから4年間が過ぎました。大学生になった私はすっかりこの出来事を忘れバイトなんぞに勤しんでいました。
そしてある晩、急に始まったのです。
「 次はえぐり出し~えぐり出しです。」あの場面からでした。私はあっ、あの夢だとすぐに思いだしました。
すると前回と全く同じで二人の小人があの女性の眼球をえぐり出しています。
やばいと思い (夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)とすぐに念じ始めました。。。。。。
今回はなかなか目が覚めません。(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ)。。。。。。。。
「次は挽肉~挽肉です~」
いよいよやばくなってきました。「 ウイーン 」と近づいてきます。(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めてくれ)
ふっと静かになりました。どうやら何とか逃げられたと思い、目をあけようとしたその時
「 また逃げるんですか~次に来た時は最後ですよ~」とあのアナウンスの声がはっきりと聞こえました。
目を開けるとやはり、もう夢からは完全に覚めており自分の部屋にいました。最後に聞いたアナウンスは絶対に夢ではありません。現実の世界で確かに聞きました。私がいったい何をしたと言うのでしょうか?
それから、現在までまだあの夢は見ていませんが次に見た時にはきっと心臓麻痺か何かで死ぬと覚悟しています。
こっちの世界では心臓麻痺でも、あっちの世界は挽肉です。。。。。。
母が縁の下から
松谷みよ子「現代民話考」にでていた話。
終戦から幾らもたってない頃と思われます。
当時の家は、台所が土間のままってのいうのも多かったんですね。
記憶を頼りに書いてるので細部はちがうかも。
タクシー運転手の奥さんが、まだ五才になったばかりの子を
残して亡くなった。
父親は仕事ででかけている時間が長く、そのあいだ隣の家に子どもを
預けていたのだけれど、深夜になっても帰ってこないのものだから、
親切で面倒をみていた隣人もさすがにしびれを切らして、子どもを
ひとりの家に帰してしまうことも多かった。
子どもは寂しくて、父親が帰ってくるまで、親の名を呼んで
泣いていたそうだ。
ある晩、子どもの泣き声がぴたっと止まり、笑い声が聞こえてきた。
隣人は、「ああ父親が帰ってきたのだな」と納得したのだけど、
そのしばらくあとに父親の帰宅する音が聞こえてきて、
「父ちゃんおかえり」と子どもが出迎えている。
そうした夜が何晩かつづいて、不審になった隣人はある晩、子どもの
様子をみにいった。
子どもは、暗い部屋でひとりで喋っては笑っている。
その様子が、だれかと話しているもののようなので、翌日、父親に
そのことを話した。
父親は、子どもに毎晩だれと話しているのか、とたずねた。
「母ちゃんだよ。おいらが寂しくて泣いてると、母ちゃんがきて、
だっこしたり、頬ずりしたりしてくれるの」
「それで母ちゃんはどっから入ってくるんだ?」
子どもは、土間の縁側を指さした。
「あの下から、にこにこしながら這ってでてくるよ」
それから父親は仕事をかえて、早く帰宅するようになったそうだ。
マイナスドライバー後日談
子供の私は、あの出来事も速攻で忘れて日々を過ごしていました。
間もなく我が家は引っ越すことになり、家の大掃除した後、あの銭湯に行きました。
私は大掃除で見つけた色々なガラクタを後生大事に持っていったのです。
私は例によって風呂の中で遊んでいるうち、あのドアの鍵穴のことを思い出しました。
しかしあの恐怖を忘れていた私は、ガラクタを入れた洗面器を抱えて鍵穴を覗きに行
ったのでした。また向こう側は何かに覆われて何も見えない。
私はガラクタの中にあった箸を取り出し、おもむろに鍵穴に突っ込んだのでした。
瞬間、ドアの向こうでのドタバタする気配にたじろいだ私は、箸から手を離しました。
箸はブルブル震えながらそのままでしたが、やがてこちら側に落ちてきました。
先から数センチが折れていました。私はまた母親に何も言いませんでした。
その日を最後に、我が家は隣の市へ引っ越して行ったのでした。
数年後、小学生の私は、かつて住んでいたあの町に遊びに行きました。
真っ先に子供の社交場でもあった神社の境内に赴きました。
そこに行けば昔の友人達に会えると思ったのです。しかし予想に反し誰も居なかった。
いや、境内の裏の大木の前で、一心不乱に何かをやっている大きな男が居ました。
瞬間、かつての記憶が蘇りました。彼は我々から‘ミッキー’と呼ばれ怖れられていた
青年でした。透明に近いシルバーの髪、兎の様な赤い目、今考えるとアルビノであった
のかも知れません。そして彼は病的に粗暴で、メンコやベーゴマに興じる我々の中に
乱入しては、物を取り上げたり殴りつけたりを繰り返す素性が不明の人物でした。
その彼が目の前に居る。私は金縛りに会ったようになり、話し掛けることも逃げること
も出来なかった。彼は動作を止めると、ゆっくりとこちらを向いた。
彼の片方の目は潰れていました。