軽自動車

何年か前にひどい目にあった話を投下します。

 何年か前のある日の夕方、俺は友人Aを乗せて車を走らせていた。少し離れた友人Bの家で酒盛りをする為である。
プチ同窓会のような感じで大学時代の仲の良かった10人くらいで集まって飲もうかということになったのである。
 そこで、家の近かったAを拾ってからBの家に向かう予定だったが、Aが時間を勘違いしていて、出発が
遅れたのである。平謝りするAを車に乗せて結構なスピードで走っていたが間に合うかどうか微妙だった。
 
 友人Bの家は山を越えた向こう側にあった。山越えの道に入ったら、車は俺ら以外に走っていなかった。
曲がりくねってはいるが一本道で、信号もなく片側一車線のそれなりに走りやすい道なので、俺は調子に乗って飛ばしていた。
 Aと他愛もない話をしながら車を走らせていると前方にやたらゆっくりと走っている軽自動車のテールランプが見えた。
一本道であるために山を越えてふもと付近に下りるまで追い越すスペースがない。はっきり行って焦っている俺たちには
邪魔な存在だった。そうこうしているうちに軽に追いついてしまった。俺とAは何を会話するわけでもなくいらいらしながら
その後ろを走っていた。しばらく、軽の後ろを我慢して走っていたが、やたら遅い。カーブの度に止まりそうな位ブレーキを踏む。
いくらなんでも遅すぎる。この焦っている時に勘弁して欲しいってくらいの嫌味な速度で走り続ける軽自動車。俺はとうとう痺れを
切らしてAに言った。

俺『いくらなんでも遅すぎるよなあ。見通しのええ所で対向車線に入って追い越すぞ。』
A『・・・・・・・・・。』
ん?Aから返事がない。ちらっと見るとAは真っ青な顔をしていた。なんだか尋常な様子ではない。調子に乗って飛ばしすぎ
たから、車に酔ってしまったのだろうか・・・。
俺『おいA。どうした。気分悪いか?』
A『・・・・・・・・・。』
俺『おい?どうした?』
Aに声をかけるが返事がない。気分が悪いというか何かに怯えている?
俺『おい!A!なんだ?何があった?』
ちと怒鳴り気味に声をかけるとAははっとしたように口を開いた。
A『あれはまずいぞ、Y(俺)!早く追い越してくれ!』
俺『はあ?何がまずいねん?訳分からん。まあ、追い越すけど・・・。』

 前が遅くていらいらしている所に、Aの訳の分からんリアクションでさらにムカッと来た俺は少し見通しの良い直線に来たところで
軽を追い越した。軽の前に入ってグッと加速すると軽はバックミラーで確認するとあっという間にいなくなった。
追い越しをかけて軽快に車を走らせていると、少し気分が落ち着いた。Aの方をチラッとみるとAも顔色が良くなって、
落ち着いているようなので、先ほどの事をたずねてみた。

俺『おいA。何があった?』
A『・・・あのさ見間違いかも知れんけどな。あの軽っておかしくなかった?』
俺『おかしいって・・・。まあ、異様に遅かったけどな.どうせ爺さんか婆さんかおばはんのとろとろ運転やろ?』
A『・・・・。あの軽の中見んかった?』
俺『・・・。見てないけど?』
A『・・・まあ、ええやん。止めよ。この話。』
俺『そこまで話し振っといて止めれるかいな。なんやねん、一体。』

 話しながら、ふとバックミラーに目をやるとさっきまで何もいなかった真後ろに車が一台くっついて走っていた。
というより、もろに煽られていた。どう考えてもさっき追い越した軽が煽ってる以外に考えられない。
しかし物凄い煽りようである。パッシングするはハイビームだわ・・・。それでも俺は速度上げて頑張って走ったが
一向に振り切れない。そして挙句の果てにクラクションまで鳴らし始めた・・・。背筋に寒い物が走った。

俺『あかん。道譲るわ。さっきまであんだけとろかったくせに・・・。』

 そうAに告げるとAが物凄い剣幕で言い返してきた。

A『あかん、ぜったいあかん。譲ったら、止まったらあかん!!!』

 俺はAの様子に少々びっくりしたが落ち着いてAに言った。

俺『無理。こんな調子で煽られてこんな速度で走ってたら事故起こすわ。譲る。』

 Aが何故か涙目で俺を見ていたが、分かったと一言言うとうつむいてしまった。
俺が道を譲ろうと左ウィンカーを出しながら速度をゆっくり落としながら車を左に寄せ始めると『ゴツン』という衝撃が後ろから走った。
早く行けとバンパーでこづいているような感じだった。相手が尋常じゃない奴だと今更ながら気付いた。
道を譲るのは無理だと判断した俺はまた速度を上げて走り始めた。
物凄く恐ろしかった。下手に減速できない。道を譲る事も出来ない。とにかく逃げ込めるスペースのある場所まで
事故を起こさないように走り続けるしかなかった。もう少し行けば、山頂に休憩用の駐車スペースがあったはずだ。

 ものすごい煽りのプレッシャーを受けながらもなんとか道の左側に山頂駐車場の出入り口が見えた。24時間無料なので出入り口は
チェーンなど掛けられていない事は知っていたし、かなり広い場所なので、スピードを出していたがぶつけずに駐車場に入る
事が出来た。駐車場の中に入ってすぐに車がスピンしてしまった。強引な角度で入ったためスピンしたのだろう。
突然のスピンに気が動転したが幸いにも駐車場には他に車はなく、かなり広い事もあってどこにもぶつけずにすんだ。
停止してほっとして気がついた。あの軽自動車はいってしまっただろうか?ふと一つしかない出入り口を見ると、その出入り口をふさぐ形
で軽自動車が停車していた。全身総毛だった。
俺『どうしよ。なんか待ち伏せしてるみたいやで・・・。』
Aに喋りかけたがAは先ほどからうつむいたままこちらを見ようともしなかった。もともと気の強い方ではないAの事だ。
かなりテンパッる事は見ても分かるとおりだった。俺がしっかりしなきゃいけない。
それよりも先ほどぶつけられている事も気になっていた。傷でも付けられていたら弁償してもらわなきゃいけない。
立派な接触事故だ。怯えてテンパッてるAを見ているのとぶつけられ煽られた事に腹が立ってきた俺は、なんであんなのに
こっちがおびえなきゃいけないんだという気になってきて恐怖より怒りが前に出てきた。俺はAに

俺『ちょっと文句言ってくる。』

と、捨て台詞をはいて車から降りて軽自動車の方へ歩いていった。もちろんAは物凄い剣幕で反対してきたが降りてしまえば
関係ない。何でも出てきやがれって感じで怒りを前面に出して相手のほうへ歩いていった。

 軽に近づいて不思議に思ったが、中にどんな奴が乗っているか分からない。前面までスモークフィルムを貼ってるのか?とか
馬鹿なことを考えながら軽自動車の運転席の窓ガラスをノックした。すると、運転席側の窓がすーっと開いた。
中を見た俺は一瞬目を疑ったがもう一度じっくり確認してそして・・・。
一目散に車のほうへ逃げ帰った。今まで生きてきた中で一番早く走って一番大きな声を出しながら・・・。

 車の窓が開いた時、中には・・・・

人が乗っていた。いやそもそも人なんだろうか。それも何人も。4人乗りの車に5人とかそんなに生易しい物ではなかった。
もうギュウギュウ詰め、例えるなら通勤ラッシュの満員電車状態である。隙間がないくらいびっちりと狭い軽自動車の車内が
人で埋まっていたのである。上下左右人の向きは関係なくテトリスで隙間なく積み上げていくブロックのように・・・。
しかも全員顔色が真っ青で目が空洞の様になっていた。老若男女いろんな人・・・。その苦しそうな体勢の人たちが一斉に窓
の外に立っている俺のほうに顔を向けているのである。首が180度回っている奴もいた。結局中が見えなかったのは人で車内
が埋まっていたからである。

車に戻ると慌てて車を発進させた。Aは何も言わずうつむいてガチガチ震えていた。恐怖でパニクってた俺はとにかくこの駐車場から
出なきゃいけない、逃げなきゃいけないと思い、強引ではあるが出入り口に止まっている軽と柵の間のスペースに車を滑り込ませて
無理矢理すり抜けようとした。左の柵に当たった。バリバリといやな音を立てて車と柵が悲鳴を上げた。しかしそれどころじゃなかった。隣にあ
る軽の方を見ないようにして思いっきりアクセルを踏んだ。車の頭が駐車場から道に入った瞬間、ついうっかり右を見てしまった。視界に軽自動
車が入った。中の人が全員こちらを見て笑っているように見えた。そこで物凄い衝撃を食らって意識がなくなった。

気付いたら病院だった。

 結局、駐車場から車の頭を物凄い勢いで出した俺の車に普通に走ってきた車が俺の車のフロント部分横へぶつかったのである。
Aは頭を打ったらしいがほとんど外傷がなく軽い打ち身があちこちにあるくらいで無事だった。
俺は開いたエアバックに思いっきりぶつかったせいなのだろうか?鼻骨折して前歯が3本ほど折れて、足もどうやったのか分かんないけど
右足の骨にヒビが入っていた。打ち身も体のあちこちに出来ていて熱が出てしばらく入院を余儀なくされた。
相手の方は20過ぎの女性で無傷だった。お互いに車はボコボコだったけど・・・。
結局警察と保険屋が入ってお互い話し合いして決着は付いた。

 後日、退院できるかなといった時に事故った相手の女性が見舞いに来てくれた。相手の女性に軽自動車の事を聞いたらそんな車は
いなかったと言われた。
 先に退院したAはやはり前に走っている時からあの軽自動車の中身が分かっていたらしい。俺が見てないのなら俺にまで変な恐怖を
味合わせたくなかったから黙っていたらしい。
車は直せない事もなさそうだったけどなんだか縁起が悪そうだから廃車にした。
 退院はできたけど打ち身の痣がしばらく消えなかった。なんだか痣の形が手のひらで叩いた後のようになっていた。それも
大きい物から小さい物までたくさんの人に叩かれたようになっていた。ちなみにAの体に出来た打ち身もそんな感じだったらしい。
Aは財布の中に入れてあった母親から貰った身代わりお守り(?そんなようなもんがあるのかな?)が粉々に割れていたとも言っていた。
結局、手の形をした痣もそれも時間はかかったけど今ではすっかり綺麗に直った。

オチも何もないけど洒落にならんかった。怖かった。あの軽自動車もなんだったか分からない。
今でも車を運転していて後ろを煽られるとあの時の事を思い出す。

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嫉妬深い彼女

異常に嫉妬深い彼女に別れ話を持ちかけた。
やさしい人だったが妙にネガティブでさびしがり屋だった。
本格的に付き合いだしてはじめて彼女の異常さに気付いた。
俺の携帯がなるたびに誰からなのか何の話だったか執拗に問い詰める。
休日には必ず自分と一緒にいるように強制。
やむをえない仕事などの理由で一緒にいられない時はそれこそ十分おきに連絡が来る。
とにかく俺の行動のすべてを管理したがった。
また自分以外の女性と俺が会話するのを一切認めない。近所の人に挨拶もさせない。
レストランとかでも店員が女性のときは必ず彼女が注文をとった。
仲のよかった姉が急に連絡してこなくなったのも彼女がさまざまな嫌がらせをしていたからだと知った。
さすがにやばいと思って彼女の実家に相談してみたが
「うちの子は前の男にふられてからだんだんおかしくなった。あなたと付き合うようになって(あれでも)だいぶ落ち着いた。
少々変なところもあるがかわいそうだから見逃してほしい」
言外にこれ以上娘がおかしくなるようなことをするな(分かれるな)といってきた。
警察にいる友人にも相談してみたが、警察は色恋沙汰には死人でも出ない限り関わろうとしないらしい。
しかしさすがにこれ以上面倒も見切れない。話し合うにも言葉が尽きた。
これ以上一緒にいると俺が狂う。
彼女のマンションに行きできる限り穏やかに遠回りに別れ話を持ち出してみた。
とたんに人とは思えぬ形相でめちゃくちゃに俺につかみかかる彼女。
必死で抑えつつ説得を試みるも執拗に俺の眼球を引っかこうとするさまに恐怖をおぼえ突き飛ばす。
思いっきり転んだ彼女は飛び起きながら台所に走りこむ。
今までに感じたこともない悪寒を覚え彼女が台所にいるうちに靴を残して彼女の部屋を飛び出した。
エレベーターをそわそわしながら待ってると彼女がドアをぶち破るように部屋から出てきた。
裸足で、手には包丁を持っている。それだけ確認して来ないエレベーターを見限り階段に走る。
マンションの階段を転がり落ちるようなスピードで駆け下りるが追いすがる彼女の声を引き離せない。
一階正面ゲートから駐車場に着くより早く彼女が追いついてくる。
必死で走っている耳に彼女の荒い息が聞こえてくる。
逃げ切れないと判断してぎりぎりまで彼女が追いすがってきたところで急にしゃがみこんで足を払った。
彼女は俺につまづく形で勢いよく顔面からアスファルトに突っ込む。包丁を落としたので柄を蹴って遠くに飛ばした。
彼女が起き上がるより早く自分の車に駆け寄りながらポケットを探りカギを取り出す。
カギを開けてドアを開け中に滑り込むのをほとんど同時にやってのけエンジンをかける。
バックして方向転換、駐車場の外に向かってアクセルを踏もうとしたとき運転席ががばっと開いた。
息を吸った弾みに「ひいっ」とかぼそい情けない悲鳴がこぼれる。彼女を正視できない。
ゴミ処理用の焼却炉を稼動中にのぞいて猛烈な熱気に顔を背けたことがあるが
今の彼女はあれに似ている。
ほとんど反射的にアクセルを踏み込んで車を走らせた。
彼女はドアにつかまって併走しながら俺の名前を絶叫していたが
スピードが上がってついに手を離した。爪がはがれたようで運転席側のドアの内には血の線が残った。
夜の街を制限無視で走りながら俺は泣きじゃくっていた。
その日のうちに荷物をまとめて実家に逃げ込んだがその日から二度と彼女を見ることはなかった。
彼女からも彼女の実家からもまったく音沙汰がないので自殺でもしたのかとおびえていたが
件の友人がさりげなく見てきたところ何事もなく普通に暮らしていたという。
時間がたって楽観的になった俺はまた自分のアパートに帰った。
夕食でも作ろうと冷蔵庫を開けると小包が出てきた。
いやな予感がしたがあけてみると中からは手紙らしい封筒と、
あの日マンションにおいてきた靴が短冊状にずたずたにされた物がでてきた。
それを見たとたんあの日の恐怖がよみがえった。
心臓が急に暴れだし、口の中がが干上っていやな味がしてきた。
ひゅーひゅーと荒い呼吸をなだめながら恐る恐る同封されていた封筒を開けてみる。
予想した手紙ではなく、硬い花びらのようなものが手のひらに散らばった。
それが根元からはがれた十枚の爪だとわかったとたんに声を上げて手の平から払い落とす。
慌てて友人に連絡を取ろうとするが家の電話機が動かない。よく見ると電話線がちぎられていた。
喉から変なうめき声をもらしながら充電中の携帯を手にとるのと同時に着信。彼女から。
さっきの爪の時のように携帯を放り出してへたり込んだ。
腰が抜けて座り込んでいる俺の後ろから玄関の鍵を開けてドアを開く音がした。

「早くでてよ」

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病院の心霊現象

865 :少し連投します:2010/04/12(月) 00:07:26 ID:WbDIqEhy0
病院の心霊現象という話をよく聞くけれども、
自分では1回しかそれらしきことは体験していません。
自分が零感なのか、どうなのか、その辺はわかりかねますが…。
少なくともオカルトチックな話が好きな医師はおりますが
自分がそういうものが見えるとかいう人には会ったことないですね。

今勤めている病院は歴史が古い方で、先の大戦中には陸軍関係者がよく入院していたとか。
そのため、ゲートルを巻いた兵隊さんの幽霊が出るらしいです。
『らしい』というのも、なにせ、勤めて5年目で初めて知りましたから。
たまたま入院していた世間話の好きそうなご婦人に聞かされました。
『ええ、実は見たんですよ』系の話を期待されていたようですが、
本当に知らなくて彼女をがっかりさせてしまいましたが、しかたありませんよね。
病気を治すだけで満足してくださいとしか言いようがありません。

866 :2:2010/04/12(月) 00:08:40 ID:WbDIqEhy0
病院で寝ると金縛りや幻聴が多いのは確かです。
突然ズキズキ頭が痛い感じがして意識が遠のきそのまま深く眠りこむこともあります。
しかし、週に10回当直していれば、過労で寝起きに変な感覚にもなるでしょうw
そもそも、金縛りになるような時はソファーで体を縮めて仮眠していたり、
患者さんのモニターや壁一枚向こうのナースステーションの話が聞こえる状態だったりと
明らかにおかしな状況で寝ていますしね。
心霊より自分の健康という意味で洒落にならない。

病院自体もだいぶ建物が昔とは建て替えられています。
第二次世界大戦中から現存する唯一の建物には、現在病室は一つもなく、
更衣室や私たちの医局があります。特に、我らが医局はその中でも最下層なので半地下状態。
オカルト好きの某ナースからは
「あんな廊下が真っ白になるほど霊の立ち込めたところに良く入れますね!」とか
言いたい放題に言われてますが、別に喘息にも肺炎にもならない分、
禁止されてるはずの紫煙の立ち込めた看護師休憩室よりはましなんじゃないですかね。
愚痴になってしまい申し訳ありません。

867 :3:2010/04/12(月) 00:09:35 ID:WbDIqEhy0
くだんの患者さんに日本兵の霊が出る話を聞いてふと思い出したのは、ある当直明けの午後の事。
ほとんど寝れない夜間救急勤務後でも帰ることなど許されません、少なくともうちの病院は。
(うちだけでもないと思います、とんだブラック業界だ…)
幸い手術も外来もなく、病棟の患者さんも全員落ち着いていたため、
医局で調べ物をしながら疲労の余りそのまま突っ伏して寝てしまいました。
正確にいえばそれこそ金縛りに近く、体は突っ伏したまま動けないけれど頭は半分起きている状態。

「ああ、今日も疲れてるな…いつかこのまま死ぬんじゃないかな…」
と思いながら、休憩と割り切って半分うとうとしていました。
しばらくするとコツ…コツ…と固い靴でコンクリートむき出しの床を歩く音がします。
うちの病院では基本的に革靴は内科部長クラス以外ほとんど誰も履きません。
理由は音がするし、ダッシュもできないから。逆に言うと外科系だと部長クラスでも走らされます。
そもそもガタが来たドアが全く軋まなかったのも不思議な話。
誰か入ってきたのにも気がつかずに寝ていたのかと、内心驚きました。
一応起きなければと思うが、体が動かない。
「ああ、サボってるのがばれた…まあいいか…仕事はすませたし」
そう思ってると、誰かが話しているのが聞こえました。

868 :4:2010/04/12(月) 00:10:36 ID:WbDIqEhy0
『よく寝てるなあ』『慣れですかね』
聞き覚えのない声の会話。
嫌な感じは受けませんでしたが、すぐ後ろからコツコツ音がする割に、気配を感じません。
足音はすぐ後ろを行ったり来たりしています。
『度胸があるなあ』
『いつ見てもいますねえ』
『肝の据わるに越したことはないが、恥じらいがないのはどうしたものか。嫁に行き遅れはしないだろうか』
黙れおっさん。思わずカチーンと頭に来ましたが、涎が出ているのを自覚してる分何も言えない。
はい、親にも心配されてます。少子化の原因のうちの一人です。わかってるからもう何も言わないで。
痛む心を抱えつつ、そのままぐっと寝込んでしまいました。
『これこれ』と言われながら軽く頭を叩かれてはっと目が覚めたのは2時間後くらい。
余りに感触と声がリアルだったので、思わず口元がべちょべちょのままでキョロキョロしましたが、
やはり周囲は無人。
一応顔を洗って化粧を直して、汚れた本はこっそり引き出しに隠してから病棟に戻りました。

あれが兵隊さんの幽霊X2だとしたら、ドアの音がしなかったのも靴音も納得はできます。
でも、心配してくれるは起してくれるは、幽霊であったとしても、まるで「心霊いい話」。
少なくとも患者さんの言うような身の毛もよだつような体験ではないなあ、と思いました。

869 :5:2010/04/12(月) 00:11:29 ID:WbDIqEhy0
前置きが長くなりましたが、本当に洒落にならなかったのはこの後日の話。
医局に泥棒が入るらしい、とうわさが流れるようになったものの、普通に生活していましたが、
ある夜に相変わらず遅くまで仕事をしていると、廊下の方からガタガタいう音が。
え?と思っていると我が医局のオンボロドアを外から誰かがガタガタやる音がするのです。
最近どうやら物騒らしいということで、古い木製のドアに内側から簡単な閂を最近つけていて
一人でいるときにはそれを下すようにしていたのですが、医局員はみな当然知っています。
すりガラスの窓で明かりがもれていますので、中に誰かがいるのは一目瞭然。
ですから事情を知っていれば、声をかけてあけるように頼めばいいだけの話。

870 :6:2010/04/12(月) 00:12:14 ID:WbDIqEhy0
不審に思ってドアの近くまで寄った瞬間。
ガタガタガタガタガタガタ!!!!と激しい音と衝撃。
ドアの閂はもう外れそうなほどで、特に向こうがぐっと押した瞬間は少し隙間が空きます。
とっさにまずい!と思い、内側からほぼ体当たりするようにドアを押し返します。
ドアの向こうからはおそらく2人ほどの男の話声。
言葉からして外国人、それもおそらく2ちゃんねるで比較的嫌われている某隣国人と推察されました。
ますますまずい。あれほど冷や汗が出たことは覚えがありません。
ガッガッガッガッと、おそらく蹴っているのでしょう、ドアの下の方がきしみ、一瞬板が浮きます。
持ってくれ、戦前からの木板とか悪口言って悪かった、頼むから折れないでくれ。
もう、ありとあらゆるものに心の中でお願いしました。
定番の神様仏様。
忙しくて余りお墓参りできていないご先祖様に、まだピンピンしている田舎の祖父母4人。
小言が嫌なのと本当に忙しいので余り帰省していない両親。
この間出てきたおせっかいやきな兵隊さんの幽霊(推定)。
天国にいるはずの看取ったペット達。

871 :7:2010/04/12(月) 00:13:03 ID:WbDIqEhy0
祈りが聞いたのか廊下の音はひとまず落ち着いたのですが、今度は後ろから声が聞こえます。
廊下からも返事をするように声が。思わずぎょっとしました。
つまり、半地下の私の部屋を挟んで男たちが外国語で会話しているのです。
そして、バリーン!と大きな音を立ててガラスが割れました。

もう駄目だ…と半分覚悟を決めたのですが、奇跡的に助かりました。
というのも、その窓を半分ふさぐ形で大きな書棚があったのです。
吹っ飛んできた本が頭に直撃して涙目になり、
後からそこは見事なたんこぶとなって10円ハゲができましたけれど。
すぐさま侵入できなかったことと、思ったより大きな音がしたことで、向こうも慌てたのでしょう。
そのまま大声で話をしてバタバタと立ち去りました。
私はドアに寄りかかったまま、しばらくへたり込んで動けなかったです。

872 :8(ラスト):2010/04/12(月) 00:14:26 ID:WbDIqEhy0
そのあとは通報して大騒ぎになりましたが、廊下に出た瞬間が一番洒落になりませんでした。
たぶん慌てて置いていったズックから少し中が見えていたのですが、
定番の「バールのようなもの」はじめ、「金づちらしきもの」や、
むしろ包丁なんじゃないかと思うようなサイズの「ナイフらしきもの」が見えてましたので…。
ドアを開けてそれを見た瞬間、それこそすぐドアを閉めて立てこもり、半泣きで電話しました。
ほんとあれは死ぬほど洒落にならなかった。
あの時ドアが空いていたら、あるいは本棚の位置が少しずれていたら、
本当に死んでたかもしれませんしね。
それ以来、医局がトラウマになって、今は周囲の好意で更衣室に全部荷物を運び込んでいます。
ちなみに今でもたまにうとうとしてしまうことがありますが、不思議と金縛りはなくなりました。

以上、長くなりましたが、幽霊よりも生きてる人間が洒落になりませんよというお話。
予想外に長くなって申し訳ありませんがこれで終わりです。

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こんなはずじゃ…

ある秋の休日、父と高校生の娘がドライブに出掛けた。
最初は娘の作ったお弁当を公園で食べ、午後になったら帰る予定だったがあまりにも天気が良く気持ちいいので
山の方に行ってみることにした。
山の麓のコンビニで飲み物を買い込むと、その店の店員がこう忠告してくれた。
「あの山、最近になって急に車が事故から転落する事故が多発してるんすよ。気をつけて下さいね」
山道に入ると周囲の紅葉は見事で、父と娘は紅葉狩りを楽しんだ。
しばらく車を走らせると崖道に出た。道の路肩には「事故多発!!注意!!」と書かれた看板がたけかけられており、
どうもこの道が店員の言っていた事故多発地帯らしい。しかし、その道は道幅こそせまいもののカーブはかなり緩く
危険な道には見えない。

父が「どうしてこんな道で事故が起こるんだろう?」と不思議に思いながら運転していると不意に前方から
少女が飛び出して来た。「うわっ!!」父は大慌てでブレーキを踏んだが間にあわなかった。
少女はボンネットに叩き上げられ、体をアスファルトに打ち付けた。
すぐに娘の携帯電話で病院に運ばれたが、少女は半日苦しみ死亡した。
少女は麓町の資産家の娘で、病弱だった為に別荘のある山の集落に夏休みから来ていた。
被害者が全面的に悪いとはいえ、少女と父親はかなり辛い目に遭う事になった。
少女の両親は妙齢になってから産まれた一人娘を溺愛していたらしく、少女の母親は父と娘を口汚く罵り、
焼香をあげることも許さなかった。
大きな会社を経営している少女の父親は父が勤務していたタクシー会社に圧力をかけ、職を追わせた。
家にも無言電話や嫌がらせの手紙が殺到した。
父一人子一人だった娘と父は親戚を頼って他県に引っ越し、父親は別のタクシー会社で働き娘は
一年浪人して看護学校へ入った。

それから数年がたち、娘は無事看護学校を卒業し、自宅通勤の可能な病院に就職した。
その病院の医師は偶然に以前偶然あの少女が搬送された病院で働いていた。
しかもあの少女の、手術も担当したという。
娘は古傷を抉られるようで、その医師を何となく避けていた。
しかしある日、娘は医師に呼び出された。
「話って何ですか?」「実は・・・」
医師の話はこうだった。

少女が運び込まれて来たとき既に折れた肋骨が血管や内蔵につきささっておりとても助けれる状態ではなかった。
それでも搬送されてきた以上少女には最善を尽くさなくてはいけない。
医師はメスを握り肋骨の摘出を始めた。
その時かすかに意識があるのか少女の唇が動いた。
「何だ・・・?」
少女の呟きを医師はとらえた。
少女はこう呟いたのだ。
    こ   ん   な   は   ず   じ  や  な  か  っ  た

少女が死亡した後も少女の最後の言葉は大きな謎として残った。
こんな筈じゃなかった・・・。
では、どういうつもりだったのか?
不審に思った医師はその崖で起こったとされる転落事故について調べることにした。
件数は四件だったが全てその年の夏から秋にかけての事故であり、事故現場は全て少女が車に轢かれた場所だった。
現場には急にハンドルをきった後があり、何かをよけようとして事故ったのではないかという推測がなされていた。
もっとも事故に生存者はおらず、詳しい事情などわからないが。
あの場所で事故が起こったことは後にも先にもこの四件だけで更に少女の死後は、事故は一切起こらなかった。
更にいえば少女が病気で休学する前、少女の通っていた有名私立小学校には兎小屋の放火が二回起こっていたこと、
低学年の時の少女の担任が「少女に性的悪戯をした」という少女からの訴えで免職になっていたことを告げると
医師は部屋を出て行った。

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密室

予期せぬ時に予期せぬ出来事が起きると、どうして良いか分からなくなる。
これは、俺が先日体験した話。

俺はその日、市内のデパートに買い物に行った。
デパートと言っても大手のところではなく、ちょいと古い小さなデパート。
雨が降っていたこともあり、平日の昼間、お客はあまり居なかった。

俺は5階にある紳士雑貨で目当ての物を買い、さて帰ろうと思ってエレベータに乗った。
上から降りてきたエレベータには、2人のお客が乗っていた。ちなみにエレベーターガールなんて洒落たものは居ない。
4階に着き、お客は2人とも降りる。エレベータには俺1人。
そのまま下がっていき、3階を過ぎたときだった。
突然エレベータが止まり、電気も消えた。

どうやら停電のようだった。
これには焦った。「うぉっ」とか素で言ってしまった。
誰も聞いてなくてよかった。
しばらくすればすぐ動き出すだろうと思ったが、どうにも落ち着かない。
なにしろこのエレベータ、窓がない。しかもなぜか非常灯もつかないので完全に真っ暗。このオンボロデパートめ。
明かりが欲しかったので、俺は携帯を取り出した。
ぼうっと明るくなる。なんとなく落ち着く。
エレベータ内の奥に立っていた俺。
携帯から顔を上げて何気なくドアの方を見た。

操作パネル板とは逆側の角に、誰かが後ろを向いて立っていた。

よくある、髪の長い白い服を着た・・・というものじゃなかった。
暗くて色はよく分からなかったが、ワンピースを着たショートカットの女性だった。
俺以外乗っているはずがないのに、そこに居た。
俺は固まった。ほんの数秒だろうけど、俺は動けなかった。
それを見たくなかったが、なぜか視線をそらせなかった。

心の中で、お願いだから振り向かないでくれ、と祈った。
声も出さないでくれ、動かないでそのままじっとしていてくれ、と祈った。
もしそいつがこっちを向いたり、何か、きっと恐ろしい声で何か言ってきたら、
俺は永遠に叫び続けることになると思った。
自分の叫び声で気が狂ってしまうと思った。

俺は携帯を切った。今度は明かりが怖かった。
馬鹿げてるかもしれないが、その明かりのせいで、そいつがこっちを向いてしまうのではないかと考えた。

徐々に暗闇に目が慣れてきた。そいつは相変わらず、角に頭を付けるような格好で、こちらに背中を向けて立っている。
俺はじっと固まっている。嫌な汗がたくさん出てきた。

・・・するとそいつが動いた。
背中を向けたまま、操作パネルの方に動いていった。歩いている感じではなかった。滑るように、音もなく動いた。
俺はなんとか叫ぶのを堪えた。声を飲み込んだ。
そいつは操作パネルの前に立った。

俺はもう、ガタガタ震えていたと思う。もうダメだ、もう限界だ、と思った。
そいつが手をあげて、最上階のボタンを押した。
暗かったはずなのに、そいつの指はよく見えた。爪も剥がれてボロボロの指だった。
そしてゆっくり振り向いて、低い、低い声でこう言った。
「何階から、落ちますか?」

死人の顔。言葉では言い表せない。
俺はそれと目を合わせてしまった。いや、目なんてなかった。黒い眼窩を見た。
俺は限界を超えた。俺の身体が、叫ぶために息を大きく吸い込んだ。
さぁ声の限り・・・という瞬間、パッと明かりが点いた。エレベータの稼動音がした。
アナウンスの声が聞こえた。
「一時的な停電により、お客さまには大変ご迷惑を~・・・」

そいつは消えていた。

俺は無事に、エレベータから出ることができた。

あとで、昔そのデパートの屋上から飛び降り自殺をした女性が居る、という話を聞いた。
ああいった古い建物にはよくある話かもしれないが、俺は信じた。
俺はもう、あのデパートには行かない。
1人でエレベータには乗らない。
今度は無事に済む気がしない。
あの顔とあの声は、一生忘れられそうにない・・・。

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