リンフォン

先日、アンティーク好きな彼女とドライブがてら、骨董店やリサイクルショップを回る事になった。
俺もレゲーとか古着など好きで、掘り出し物のファミコンソフトや古着などを
集めていた。買うものは違えども、そのような物が売ってる店は同じなので、
楽しく店を巡っていた。お互い掘り出し物も数点買う事ができ、テンション上がったまま
車を走らせていると、一軒のボロッちい店が目に付いた。
「うほっ!意外とこんな寂れた店に、オバケのQ太郎ゴールドバージョンが眠ってたりすんだよな」
浮かれる俺を冷めた目で見る彼女と共に、俺は店に入った。
コンビニ程度の広さの、チンケな店だった。主に古本が多く、家具や古着の類は
あまり置いていない様だった。ファミコンソフトなど、「究極ハリキリスタジアム」が
嫌がらせのように1本だけ埃を被って棚に置いてあるだけだった。もう出ようか、と言いかけた時、
「あっ」
と彼女が驚嘆の声を上げた。俺が駆け寄ると、
ぬいぐるみや置物などが詰め込まれた、バスケットケースの前で彼女が立っていた。
「何か掘り出し物あった?」
「これ、凄い」
そう言うと彼女は、バスケットケースの1番底に押し込まれる様にあった、
正20面体の置物を、ぬいぐるみや他の置物を掻き分けて手に取った。
今思えば、なぜバスケットケースの1番底にあって外からは見えないはずの物が
彼女に見えたのか、不思議な出来事はここから既に始まっていたのかもしれない。

「何これ?プレミアもん?」
「いや、見たことないけど…この置物買おうかな」
まぁ、確かに何とも言えない落ち着いた色合いのこの置物、オブジェクトと
しては悪くないかもしれない。俺は、安かったら買っちゃえば、と言った。
レジにその正20面体を持って行く。しょぼくれたジイさんが古本を読みながら座っていた。
「すいません、これいくらですか?」
その時、俺は見逃さなかった。ジイさんが古本から目線を上げ、正20面体を見た時の表情を。
驚愕、としか表現出来ないような表情を一瞬顔に浮かべ、すぐさま普通のジイさんの表情になった。
「あっ、あぁ…これね…えーっと、いくらだったかな。ちょ、ちょっと待っててくれる?」
そう言うとジイさんは、奥の部屋(おそらく自宅兼)に入っていった。奥さんらしき老女と何か
言い争っているのが断片的に聞こえた。やがて、ジイさんが1枚の黄ばんだ紙切れを持ってきた。
「それはね、いわゆる玩具の1つでね、リンフォンって名前で。この説明書に詳しい事が書いてあるんだけど」
ジイさんがそう言って、黄ばんだ汚らしい紙を広げた。随分と古いものらしい。
紙には例の正20面体の絵に「RINFONE(リンフォン)」と書かれており、
それが「熊」→「鷹」→「魚」に変形する経緯が絵で描かれていた。
わけの分からない言語も添えてあった。ジイさんが言うにはラテン語と英語で書かれているらしい。
「この様に、この置物が色んな動物に変形出来るんだよ。まず、リンフォンを両手で
 包み込み、おにぎりを握るように撫で回してごらん」
彼女は言われるがままに、リンフォンを両手で包み、握る様に撫で回した。
すると、「カチッ」と言う音がして、正20面体の面の1部が隆起したのだ。
「わっ、すご~い」
「その出っ張った物を回して見たり、もっと上に引き上げたりしてごらん」
ジイさんに言われるとおりに彼女がすると、今度は別の1面が陥没した。
「すご~い!パズルみたいなもんですね!ユウ(←俺の敬称)もやってみたら」
この仕組みを言葉で説明するのは凄く難しいのだが、「トランスフォーマー」と言う
玩具をご存知だろうか?カセットテープがロボットに変形したり、拳銃やトラックが
ロボットに…と言う昔流行った玩具だ。このリンフォンも、正20面体のどこかを
押したり回したりすると、熊や鷹、魚などの色々な動物に変形する、と想像してもらいたい。
もはや、彼女はリンフォンに興味深々だった。俺でさえ凄い玩具だと思った。
「あの…それでおいくらなんでしょうか?」彼女がおそるおそる聞くと、
「それねぇ、結構古いものなんだよね…でも、私らも置いてある事すら忘れてた
 物だし…よし、特別に1万でどうだろう?ネットなんかに出したら好きな人は
 数十万でも買うと思うんだけど」
そこは値切り上手の彼女の事だ。結局は6500円にまでまけてもらい、ホクホク顔で店を出た。
次の日は月曜日だったので、一緒にレストランで晩飯を食べ終わったら、お互いすぐ帰宅した。

月曜日。仕事が終わって家に帰り着いたら、彼女から電話があった。
「ユウくん、あれ凄いよ、リンフォン。ほんとパズルって感じで、動物の形になってくの。
 仕事中もそればっかり頭にあって、手につかない感じで。マジで下手なTVゲームより面白い」
と一方的に興奮しながら彼女は喋っていた。電話を切った後、写メールが来た。
リンフォンを握っている彼女の両手が移り、リンフォンから突き出ている、熊の頭部のような物と
足が2本見えた。俺は、良く出来てるなぁと感心し、その様な感想をメールで送り、やがてその日は寝た。

次の日、仕事の帰り道を車で移動していると、彼女からメールが。
「マジで面白い。昨日徹夜でリンフォンいじってたら、とうとう熊が出来た。見にきてよ」
と言う風な内容だった。俺は苦笑しながらも、車の進路を彼女の家へと向けた。
「なぁ、徹夜したって言ってたけど、仕事には行ったの?」
着くなり俺がそう聞くと、
「行った行った。でも、おかげでコーヒー飲み過ぎて気持ち悪くなったけど」
と彼女が答えた。テーブルの上には、4つ足で少し首を上げた、熊の形になったリンフォンがあった。
「おぉっ、マジ凄くないこれ?仕組みはどうやって出来てんだろ」
「凄いでしょう?ほんとハマるこれ。次はこの熊から鷹になるはずなんだよね。早速やろうかなと思って」
「おいおい、流石に今日は徹夜とかするなよ。明日でいいじゃん」
「それもそうだね」
と彼女は良い、簡単な手料理を2人で食べて、1回SEXして(←書く必要あるのか?寒かったらスマソ)
その日は帰った。ちなみに、言い忘れたが、リンフォンは大体ソフトボールくらいの大きさだ。

水曜日。通勤帰りに、今度は俺からメールした。
「ちゃんと寝たか?その他もろもろ、あ~だこ~だ…」すると
「昨日はちゃんと寝たよ!今から帰って続きが楽しみ」と返事が返ってきた。
そして夜の11時くらいだったか。俺がPS2に夢中になっていると、写メールが来た。
「鷹が出来たよ~!ほんとリアル。これ造った人マジ天才じゃない?」
写メールを開くと、翼を広げた鷹の形をしたリンフォンが移してあった。
素人の俺から見ても精巧な造りだ。今にも羽ばたきそうな鷹がそこにいた。
もちろん、玩具だしある程度は凸凹しているのだが。それでも良く出来ていた。
「スゲー、後は魚のみじゃん。でも夢中になりすぎずにゆっくり造れよな~」と返信し、やがて眠った。

木曜の夜。俺が風呂を上がると、携帯が鳴った。彼女だ。
「ユウくん、さっき電話した?」
「いいや。どうした?」
「5分ほど前から、30秒感覚くらいで着信くるの。通話押しても、何か街の
 雑踏のザワザワみたいな、大勢の話し声みたいなのが聞こえて、すぐ切れるの。
 着信見たら、普通(番号表示される)か(非通知)か(公衆)とか出るよね?
 でもその着信見たら(彼方(かなた))って出るの。こんなの登録もしてないのに。気持ち悪くて」
「そうか…そっち行ったほうがいいか?」
「いや、今日は電源切って寝る」
「そっか、ま、何かの混線じゃない?あぁ、所でリンフォンどうなった?魚は」
「あぁ、あれもうすぐ出来るよ、終わったらユウくんにも貸してあげようか」
「うん、楽しみにしてるよ」

金曜日。奇妙な電話の事も気になった俺は、彼女に電話して、家に行く事になった。
リンフォンはほぼ魚の形をしており、あとは背びれや尾びれを付け足すと、完成という風に見えた。
「昼にまた変な電話があったって?」
「うん。昼休みにパン食べてたら携帯がなって、今度は普通に(非通知)だったんで出たの。
 それで通話押してみると、(出して)って大勢の男女の声が聞こえて、それで切れた」
「やっぱ混線かイタズラかなぁ?明日ド0モ一緒に行ってみる??」
「そうだね、そうしようか」
その後、リンフォンってほんと凄い玩具だよな、って話をしながら魚を
完成させるために色々いじくってたが、なかなか尾びれと背びれの出し方が分からない。
やっぱり最後の最後だから難しくしてんのかなぁ、とか言い合いながら、四苦八苦していた。
やがて眠くなってきたので、次の日が土曜だし、着替えも持ってきた俺は
彼女の家に泊まる事にした。

嫌な夢を見た。暗い谷底から、大勢の裸の男女が這い登ってくる。
俺は必死に崖を登って逃げる。後少し、後少しで頂上だ。助かる。
頂上に手をかけたその時、女に足を捕まれた。
「連 れ て っ て よ ぉ ! ! 」
汗だくで目覚めた。まだ午前5時過ぎだった。再び眠れそうになかった俺は、
ボーっとしながら、彼女が置きだすまで布団に寝転がっていた。

土曜日。携帯ショップに行ったが大した原因は分からずじまいだった。
そして、話の流れで気分転換に「占いでもしてもらおうか」って事になった。
市内でも「当たる」と有名な「猫おばさん」と呼ばれる占いのおばさんがいる。
自宅に何匹も猫を飼っており、占いも自宅でするのだ。所が予約がいるらしく、
電話すると、運よく翌日の日曜にアポが取れた。その日は適当に買い物などして、外泊した。

日曜日。昼過ぎに猫おばさんの家についた。チャイムを押す。
「はい」
「予約したた00ですが」
「開いてます、どうぞ」
玄関を開けると、廊下に猫がいた。俺たちを見ると、ギャッと威嚇をし、
奥へ逃げていった。廊下を進むと、洋間に猫おばさんがいた。文字通り猫に囲まれている。
俺たちが入った瞬間、一斉に「ギャーォ!」と親の敵でも見たような声で威嚇し、
散り散りに逃げていった。流石に感じが悪い。彼女と困ったように顔を見合わせていると、
「すみませんが、帰って下さい」
と猫おばさんがいった。ちょっとムッとした俺は、どういう事か聞くと、
「私が猫をたくさん飼ってるのはね、そういうモノに敏感に反応してるからです。
 猫たちがね、占って良い人と悪い人を選り分けてくれてるんですよ。こんな反応をしたのは始めてです」
俺は何故か閃くものがあって、彼女への妙な電話、俺の見た悪夢をおばさんに話した。すると、
「彼女さんの後ろに、、動物のオブジェの様な物が見えます。今すぐ捨てなさい」と渋々おばさんは答えた。
それがどうかしたのか、と聞くと
「お願いですから帰って下さい、それ以上は言いたくもないし見たくもありません」とそっぽを向いた。

彼女も顔が蒼白になってきている。俺が執拗に食い下がり、
「あれは何なんですか?呪われてるとか、良くアンティークにありがちなヤツですか?」
おばさんが答えるまで、何度も何度も聞き続けた。するとおばさんは立ち上がり、

「あれは凝縮された極小サイズの地獄です!!地獄の門です、捨てなさい!!帰りなさい!!」
「あのお金は…」
「入  り  ま  せ  ん  !  !」

この時の絶叫したおばさんの顔が、何より怖かった。

その日彼女の家に帰った俺たちは、
すぐさまリンフォンと黄ばんだ説明書を新聞紙に包み、ガムテープでぐるぐる巻きにして、
ゴミ置き場に投げ捨てた。やがてゴミは回収され、それ以来これといった怪異は起きていない。
数週間後、彼女の家に行った時、アナグラム好きでもある彼女が、紙とペンを持ち、こういい始めた。

「あの、リンフォンってRINFONEの綴りだよね。偶然と言うか、こじ付けかもしれないけど、
 これを並べ替えるとINFERNO(地     獄)とも読めるんだけど…」
「…ハハハ、まさか偶然偶然」
「魚、完成してたら一体どうなってたんだろうね」
「ハハハ…」

俺は乾いた笑いしか出来なかった。あれがゴミ処理場で処分されていること、
そして2つ目がないことを、俺は無意識に祈っていた。

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白い紙

これは自分が2年くらい前の話なんだが、当時色々親と揉めて一人暮らしをすることになった。
とにかく金がないので家賃が月2万3千で1DK、トイレバス付きってところをうまく見つけたので
そこにもぐりこむように生活を始めた。

自分にはIとKっていう友人がいて、よく三人で遊んでた。
引越しのときもその二人に付き合ってもらったんだけど、Iのほうがなんか気乗りしないというか
妙にピリピリしてる。
「手伝ってもらってマジで悪い、あとでなんか奢るからさ」
というと
「いや、そういうことじゃないんだ。気にしないでよ。」
と返すばかり。
部屋の掃除とかいつもやってもらってるIは、こういうことで怒るような性格ではないと分かっていたので、最初は何か向こうのほうでトラブルでもあったのかな?程度にしか考えてなかった。

で引越し作業も終わって、深夜料金覚悟で3人でファミレスに行ったとき、
「本当はこういうこと言いたくないんだけな」
っていきなりIが語り始めた
「おまえらさ、あの部屋で何か感じたりとか、何かみたりしなかった」
「は?」
「いや、別に。」
もう寝耳に水というか、最初は悪い冗談かと思った。その時の自分は幽霊否定派だったし。
「あそこでさ、見たんだよ。手。バスのところから伸びてる手」
「オイ、マジそういう冗談笑えないって」
ぶっちゃけ半ば切れて怒り半分でそういうと。
「いや、ごめん。そういう意味じゃないんだ。Dには悪いと思うけどさ、あとでなんかあったとき後悔し
たくないから
一応注意ってことで、何もないなら別にいいんだ。」
自分としても気味は悪いが、これ以上話して空気が悪くなるのは嫌だったし、
そこで打切ってさっさと忘れようと努めた。

でファミレスで解散して戻ったのはいいんだけど、どうにもさっきの言葉が頭から離れなくてこまる。

仕方が無いのでPCの電源をつけて、メッセ始めたんだけどそこからだった。
どういうことか漢字に変換できなくなる。
IMEの故障かと弄ってみたけど変化なし。
引越しの作業でどっか悪くなったのかと思うと、Iに学校が終わったらPC見てくれ。とメールしてその日
は寝る事にした
(IはPCが得意で、自分のPCのメンテとかも勝手にやってもらってる)
その日の夜はそれで問題なく終わった。

翌日、Iが来てPCをつけてみると、何の問題もなく変換できる
「別に問題なさそうだけど?」
「えー、いや昨日はマジでつかなかったんだけど。」
「まぁ、治ったから別にいいじゃん」
その後は適当にゲームの話してIは帰って行った。
途中まで見送りにいって、家に帰ると、不思議な光景が待っていた。
何故かテーブルの上にノートサイズの真っ白い紙とボールペンがちょこんと置いてある。
確かにボールペンは自分のものだけど、紙に関しては記憶に無いし、そもそもこの家に来てからペンを
握った試しが無い。
IはずっとPCの前にいたのでこんなことするはずないし、と思うとなんだか背筋が寒くなってきた。
気味が悪かったので紙をゴミ箱にいれて、ボールペンも机の引き出しにいれ、布団を頭から被るようにして寝た。

それからなんだけど、毎日のようにバイト先から帰ってくると、机の上に紙とボールペンが置いてある。
本当にただただそれだけなんだけど、日に日にストレスが溜まってしようがなかったので、休日におりをみてKとIに相談した。
Kはただのビビリなのでただ驚くだけだったんだけど、Iのほうは話が終わるとすぐに
「分かった。明日休みだからお前の部屋をウェブカメラで監視してやるよ。
もしストーカーとか泥棒の類だったらすぐにおまえに電話するから」
なんでもネット経由でテレビ電話のように監視ができるらしく、3000円もあれば十分だというのでそのまま家電屋に直行。
その日はIやKも泊まっていった。

そこには確かに自分の部屋が写っていた。そして冗談でもなんでもなく、自分の部屋にいた女の姿も・・・
いわゆるブ女。見れたもんじゃない体型に、ビチビチのジーパンとTシャツ。
そして、何故かぼやけて良く見えない顔。
Iが無言で次々と画像を送っていく。
廊下から出てきたそれが、自分の部屋をぐるぐると、何かを探すように回り、そして引き出しからボールペンを取り出して
置いたあと、満足そうにさっていく様子が。
「分かったろ?まじでいたんだよ。とにかくおまえはもう家に帰るな。今までは平気だったけど、これからも何もないって保証はどこにもないぞ?」
恐怖で泣いたのはこれが生まれて始めてだった。
体がガクガク震えて、顔が熱くて溜まらない。失禁寸前のところでIに支えながらトイレに連れて行ってもらい、そこで喚き散らした。

一暴れして落ち着くと、Iはこういった。
「まぁ、あれだよ。こういうのはマレにいるんだ。そういうことにしとけ。
これはこの家から出てくることはないはずだから、おまえはもう家に戻るな。
で新しい家を探せ。その間くらいはこっちで面倒みれる。
新しい家見つかったら、俺とKで引越し作業するから。それでいいだろ?」

翌日のバイトは休みをとって、自分は不動産屋を駆け巡った。
もう怖くてしょうがなく、一秒でも早くあの家から縁を切りたかった。
幸いにも午前中には契約が取れて、午後には向こうの家の解約手続きに踏み切ることができた。
何か問題でもあったのか?とやたらとしつこく聞かれた辺り、こういうことは始めてだったのかもしれない。
とにかく今よりいい条件の家を紹介されたから、先着だから時間がなくて思わずそっちに申し込んだ。
といって何とか切り抜け、2日後には引っ越すことができた。
その間何の問題もなく、突然引越しの手伝い(しかも当の本人が不在)で一日をフイにしたKも
多少モンクはいいつつも特に問い詰められることはなく、無事にあの家から離れることができた。
新しい家に変わってから、しばらくはビクビク怯えていたけど、何事も1週間も過ぎるとようやく調子を取り戻してきた。

それから少し経って、再びファミレスで集まることになり、Kにようやく今まで起こったことを説明した。
Kは学校で怖い話(SFC)を本当にあった話だと信じてしまうような人間なので、むしろ
「それヤバクね?」「次は俺らがのろわれるんじゃねーの?」
とかいちいちこちらを不安にさせるようなことをいう。
そんなときにIが一枚の紙をテーブルの上に置いた。
「この紙、なんだかKは分かるよな?」
「ああ、引越しのとき机の上においてあった奴でしょ?」
「これさ、真っ白い紙に見えるけどよくみると文字が書いてあるんだよ」
Iはもう一枚似たような紙を取り出すと、さっきの紙の上に重ねて、バッグから取り出した鉛筆でガリガリ擦り始めた。
そうして出来上がったものは
『さびしい、いたい、さびしい、いたい』
そんしばらく続いてたが単語がノートの半分を過ぎたあたりで
『さびしい、いない、さびしい、いない』
に変わり、最後のほうになると
『しね、しぬ、しね、しぬ、しね、しぬ』
見ていて頭が痛くなるような文に変わっていた
最初のほうは薄くて全部は読めないものも多かったが、最後のころにはしっかりと文字が浮かび上がっていた。
「一応調べてみたんだけどさ、あのアパートで死んだとか自殺した。って奴は新聞とかネットではいなかったよ。
あいつが何だったのか?って聞かれると困るけど、多分Dと馬が合ったっていうのかな?多分そんな感じだと思う。
事故みたいなもんなんだよ。きっと。」
それから誰が言ったわけでもなく、三人ともその話を止めてカラオケに行き、3人でまた一晩泊まって終わった。

あれから今まで、何の問題もおきてない。

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ヒトナシ坂

俺は週末に、中学で仲良くなった友達 Aのところに泊まりに行くことになっていた。
Aの家はI山という山の中腹にあって、俺の家は山のふもとにある。双方の家ともに一番近くのコンビニに行くのに車で30分もかかる寂れたところだ。
泊まりに行く前日に、Aの家の場所がわからないので山の地図をもってAに家がどの辺にあるか教えてもらった。
地図上で見れば、俺の家とはかなり近かった。が、Aの家まで行くには、
山の周りにある道路に沿ってぐるりと遠回りしなければならない。その距離、10キロ。
真夏の暑い中、10キロも走るのか・・・と少しげんなりしていた俺は地図の中を走る一本の道を見つけた。
その道は、俺の家から少しいったところから始まって、山を一直線に登り、
Aの家のすぐ近くで終わっていた。長さは5キロほど。この道を使わない手は無いだろう。
俺「こっちの道のほうが近いやん」
A「あー、でもこの道なぁ、舗装もされてないし、急やし、人もぜんぜん通らんからやめたほうがイイで」
俺「通れるんやろ?」
A「うーん・・まぁ通れるけど・・まあええか。そっから来いや」
ということで、その道で行くことになった。
その晩、家族に「こんな道ぜんぜんしらんかった。」
とその道のことを話した。両親はそんな道あったんやねぇ とかなんとか言っていたが、
じいちゃんは一人眉間にしわを寄せ難しそうな顔をしている。どうやら、この道のことを知っているようだ。
この道は正式な名前はわからないが、この辺ではヒトナシ坂というらしい。
何か名前にいわくがありそうだったが、まぁ、どうでもいいことだ。

さて、翌日、Aの家に行く日がやってきた。家を出ようとする俺に、じいちゃんが真剣な顔で話しかけてきた。
「ええか、B (おれの名前)。あの坂は、夜になったら絶対通るな。絶対や。今じいちゃんと約束してくれ。」となぜか本気で心配している。
わかったわかったと一応言ったが、気になるので理由をたずねた。すると、
「あの坂には、昔っから化け物がおる。昼間はなんともないが、夜になるとでてくる。だから絶対通るな。」
なんだ年寄りの迷信か と思った。おれは幽霊なんて信じていなかったし、ましてやバケモノや妖怪なんてすべて迷信だと思っていた。
心の中で少しじいちゃんをばかにしながら自転車を走らせるとヒトナシ坂が見えてきた。本当にどうしてこんなに近いのに今まで気づかなかったのだろう。
坂は少し急になっており、一直線。地面はむきだし。左右の道端にはとても背の高い草が生えていて、横の景色がみえない。
だが、うっそうとしている感じは微塵も無く、真夏の太陽の光を地面が反射していてとてもすがすがしい気持ちになった。
しばらく自転車を走らせていると、トンネルがあった。
高さは2.3メートルほどで、幅は車一台がギリギリ通れるくらい。とても短いトンネルで、7・8メートルくらいしかない。すぐそこに向こう側がみえている。
立ち止まらずに、そのまま通った。中は暗く湿っていて、ひんやりした空気があり気持ちよかった。
その後、何事も無くAの家に着き、遊び、寝た。
翌日もAの部屋でずっとゲームをしたりして遊んでいて夕飯までご馳走になった。気づいたら、8時になっていた。

まずい 今日は9時から塾だ。遅れれば親に怒られる。俺はいそいでAに別れを告げ、自転車にまたがった。
帰りは、いくら坂でも10キロの道のりを行けば間に合わないかもしれない。だからヒトナシ坂を通ることにした。
じいちゃんと約束したが、しょうがない。バケモノもきっと、迷信だろう。
月明かりに照らされた夜道をブレーキなしで駆け下りていった。この調子なら塾に間に合いそうだ。
そう思っていると、昨日の昼間通過したせまいトンネルがぽっかりと口をあけていた。すこし怖かったが、坂で加速していたし通り過ぎるのは一瞬だろう。
いざはいったトンネルの中は真っ暗。頼りになるのは自転車のライトだけ。早く出たかったので、
一生懸命ペダルをこいだ。だが、おかしい。なかなかでられない。
昼間はすぐ出られたのに、今は少なくとも30秒はトンネルの中を走っている。
思えば、今夜は満月で、外の道は月光が反射して青白く光っている。だから、こんなに短いトンネルなら、その青白い道がトンネル内から見えるはずだ。
真っ暗と言うことはぜったいにない。一本道なので、道も間違えるはずがない。
おかしい。おかしい。おかしい。おかしい。   怖い。
そこまで考えたら、いきなり自転車のチェーンが 切 れ た。
どうしようどうしようどうしよう!!
立ち止まり、あせりまくる俺。まだ出口は見えない。
すると、闇の中、何かがいた。
浮いていて、遠くから近づいてくる 体はしびれたように動かない。
眼が闇に慣れ、ソレの姿がはっきり見えた。

白装束を着た女 だった。ただし、かなり大きな。異様に長い手足。最初は宙にういているように見えたが、四本足でトンネルの壁に張り付いている。
そしてゆっくりゆっくりこちらにむかってきている。ずりっずりっ と音を響かせながら。
髪は地面まで垂れ下がり、顔には異様にでかい。目玉と口。それしかない。口からは何か液体が流れている。笑っている。
恐怖でまったく働かない頭の中で、きっと口から出てるのは血なんだろうなぁとか俺はここで死ぬんかなとかくだらないことをずーっと考えていた。
女がすぐそこまで来ている。一メートルほどのところにきたとき、はじめて変化があった。大声で笑い始めたのだ。それは絶叫に近い感じだった。
ギャァァァァアアアアアハハハハァアアアァァァ!!!!!!みたいなかんじ。人の声じゃなかった。
その瞬間俺ははじかれたように回れ右をしていまきた道をはしりはじめた。
どういうわけか入り口はあった。もうすこし。もうすこしで出られる。
ふりむくと、女もすごい速さでトンネルの中をはってくる。
追いつかれる紙一重で、トンネルを出られた。
でも、振り返らずに、ひたすら坂を駆け上がった。

それからの記憶は、ない。両親の話によると、Aの家の前で、気を失っていたらしい。目覚めたら、めちゃくちゃじいちゃんにおこられた。
あとで、俺はじいちゃんにトンネルの中の出来事を話した。あれはなんなのか、知りたかった。
詳しいことはじいちゃんにもわからないらしい。だが、昔からあの坂では人がいなくなっていたという。だから廃れたのだと。
化け物がいる、といったのは、人が消えた際、しらべてみると、その人の所持品の唐傘やわらじが落ちていたからだそうだ。
だから、化け物か何かに喰われたんだといううわさが広まったらしい。まぁ実際に化け物はいたのだが。
そういうことが積み重なってその坂は「ヒトナシ坂」と呼ばれるようになった。

ヒトナシ坂のトンネルは、去年、土砂崩れで封鎖されて、通れなくなったらしい。
あの化け物は、まだトンネルの中にいるのだろうか。それともどこかへ消えたのか。
誰にもわからない。

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二人一組

私が小学生の頃体験した話

 私の地区では小学5年生の男子というのが自分しかいなかったらしく
地区での集まりでは、「小学五年生の日」みたいな集まりでは女子5人、
男子は自分一人だけという肩身の狭い思いをしていました。

 本当は他に二人いたんだけど、一人は絶対参加しない、もう一人は昨年
引っ越してしまった。

 夏祭りの太鼓の練習というか太鼓担当は当然、自分になるし、その日は
古びた公民館にお泊りだった、泊まる人数の構成は

 ・面倒みてくれるおばちゃん3人
 ・女子4人(一人病欠?)
 ・自分

ってな感じでした。
 太鼓の練習も終わり、時計も夜九時になって寝る部屋が割り当てられた。
女子四人は洋室、自分は少し狭い和室だった。

布団があって、足を置く方向のずっと先には背の高い押入れがあった。
おばちゃん三人は、すぐ近くに家があるのでそこで寝泊りすると言っていた。

 まあ、クーラーなんてものもないし、大き目の古びた扇風機も最初は和室
にあったのだけど、女子に

 「男子は一人なんだし、人数の多い方が必要だよね」

と、強引にもってかれてしまったのだけど、不思議とその日というか、和室は
暑くなかったので布団に入ってすぐ眠ってしまった。

 「・・・・ねぇ・・」

 しばらくたって突然目が覚めた、というのもボソボソと女子二人組みの話声
が洋室の方から聞こえてきたからだ。

 女子A「ねぇ、あの子まだ起きているかなぁ」
 女子B「きっと起きているよ」
 女子A「遊びにいってみようか」
 女子B「うん、そうしよう」

 こういう会話の内容が聞こえてきたために、興奮して目が完全に覚めて
しまった。寝たふりをして女子二人の様子を伺う事にしようとしていたら、

 ドスン、ガリガリガリガリ、ギシギシギシ

と、大き目の物音がしてきた。だいたい何をしているのか予想が出来た。
どうやら洋室にあった押入れに立付けの悪く開きが悪いふすまを強引に
明けて中に入っているらしい、そして、物音は天井へ・・・・

 ズッズッズッ・・・・・ズリズリズリ
 女子A「もうちょっとね」
 女子B「うん、もうちょっと・・」
 女子AB「くすくすくすくす」

 やたら声が響いてくる
 どうやら天井裏から四つん這いになって自分の部屋に来るらしい。
物音が自分のいる和室の押入れまで来た。

 自分はもう寝たふりをやめていた、布団から起き上がりこれから女子
二人組みを待つ事にしていた。

 押入れの戸は引き戸ではなくドア状に開くようになっており、少しづつ
開いていった。女の子の顔が一つ天井部分から逆さまにニュッと出てきて
いた、
普通にかわいい顔していた。
 そのまま少しづつ体を下げてへその辺りまで来た時、スカートだったら
パンツ丸見えになってしまうだろうとアホな淡い期待を抱いていた。

が、

そんなものは一気に吹っ飛んでしまった。

その理由はもう一人の女の子が現れたからだ。もちろん、ただ出てきた
わけではない。

 逆さまになった女の子の胴体から先はそのままもう一人の女の子になって
いたからだ、わかりやすく言えばテケテケが胴体同士でくっついている様
な感じだ、下の部分の女の子は手を押入れの上部分の床板に手を着いていて
上の部分の女の子はぶら下がっていた・・・
 上の部分の女の子はひどかった、別に凄いブスというわけではなく、全身
青白く抜け落ちたような長い髪、顔は黒ずんで目も血走っていた、生きてい
るとは思えないような有様だ。

 気がつけば体がピクリとも動かない、まぶたも閉じられないせいかこの
二人一組を凝視しつづけていた。そして、下の部分の女の子が横の土壁を
上の女の子が天井のとびでている箇所を掴んでゆっくりこっちに向かって
来ていた。

 ズッズッズッズッズッズッズッ

 AB「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」

 自分のすぐ斜め上まで来た途端、下の女の子は自分の左肩を掴み、
上の女の子は自分の右肩を掴み、自分の視界が二人分の女の子の顔で一杯
になった所で気絶して、朝を迎えました。

 朝鏡をみたら右顎と左顎に一つづつ噛み跡がついてた

この公民館では結構不思議な体験をしているし、6年生になった時は・・・

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切断式

書く前に、あらかじめ言っておく。怖い話というのは、大なり小なり、フィクションの部分が存在する。
それを踏まえて、この話を書く。

ある小さな南の島で、ボランティア活動を行っている日本人青年がいた。
彼がその地になじみ始めた頃、事件が起きる。
ある日、彼が何者かに両足首と両手首を切断され、発見される。幸い命に別状はなかった。
彼は、駆けつけたボランティア団体の役員にこうつぶやいた。
「おれは何も悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない・・・●▲X”#$」
最後の言葉は、日本語ではなく、どこかの言葉らしい。役員がなだめ落ち着かせると、
彼はなぜこのようなことになったか、ゆっくりと語りだした。

彼の祖父は、戦時中、兵士として出征していた。当時はこの島は、日本軍の占領下であった。
軍も制圧したが、いまだ残党が残っており、祖父も残党狩りにかり出された。
ある日、リーダー核の男が捕らえられた。その男は、見せしめに兵士からの虐待を受けた。
男は海岸に連れて行かれ、浅瀬にいるシャコ貝に無理やり手足を突っ込まれたのだ。
シャコ貝はビックリして、貝殻を閉じる。万力でつぶされているような、激しい痛みが男を襲う。
そのまま男は放置された。潮が満ちてきても、溺れないように筒で呼吸をとらせた。
祖父は男の見張りを命じられた。男は怒り狂い何かをひたすら叫んでいた。
日がたつにつれ、だんだんと男はおとなしくなった。ある日、祖父が横で食事を取っていると男が話し掛けてきた。
言葉はわからないが、どうやら腹が減ったらしい。泣きながら懇願してくるので、思わず祖父は食事を与えてしまった。
しかし、その少々の善意があだとなった。

祖父が男に食事を与えているところを、他の兵士に見られてしまったのだ。
祖父は非国民だと責められ、バツとして己の腹をかっさばくか、男の命をその手で絶つか
選ばされた。もちろん祖父は死にたくない。男を直接手にかけることにした。
祖父はノコギリを手渡され、まず手首を切断するよう命じられた。手首に刃を押し当て、ぎこぎこと
切り出す。しかし渡されたノコギリ、錆びていた。しかも傷口から噴出す血と油で滑って
なかなか切れない。男はノコギリの動きに合わせ、悲鳴を上げる。2時間が経過した。
いつのまにか、潮が満ちてしまった。水中では、もう切ることは出来ない。
「また明日にしよう。」他の兵士が言った。

次の日、祖父は汗だくになり、なんとか片方の手首を切断した。
「よし、次は左だ。」言われるがままに、祖父はもう片方を切断し始めた。
ににゅににゅににゅににゅににゅににゅ・・・・・・・・・にゅぎこぎこぎこ
皮膚、筋肉が切断され、骨が見えてくると音が変わってくる。
ぎこぎこぎ・・・・・ごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅごりゅ
潮が満ちる前に、両手首を切断することができた。
「よし、次は足だ。あしたもがんばれよ」
いっそ一思いに殺してやればいいものを、そう思ったが祖父に
訴える予知はなかった。次の日も、祖父は汗だくで作業を行った。
もはや作業としか言いようが無かった。男はすでに発狂している。
「●▲X#$7・・・・」何かをつぶやいていた。

結局、両方の足首を切断する前に、男は筒から呼吸することができなくなり
溺死した。遺体から首を切断したところで、祖父は解放された。
その後戦争は終わり、祖父は帰国する。「あのとき、みんなどうかしてたんだ。」
繰り返し、その話を聞かされていたのだという。
この島を訪れた青年は、何か祖父の罪滅ぼしになればと、ボランティア活動に参加
したのだという。その矢先だった。彼は何者かに両手足首を切断された。
手足を切断された青年は、島の病院に入院していたのだが、しばらくして姿を消してしまう。
何日かして、再び発見されたときは異様な様相であった。
遺体は、二枚貝のように折りたたまれ、それを囲むようにシャコ貝の貝殻に、切断された
手、足、首が入れられ置かれていた。
遺体の胸には「●▲X#$&・・・」と意味不明の文字。

原因はなんなのか、役員は島民に聞いてまわったが、この事件に対し島民はみな口を閉ざす。
ある老人から、古い手紙をうけとった。
戦時中に虐待され、殺された男が書いたものだという。
「日本人の孫が来たら、これを渡せと言われた。」老人は
現地の言葉でそういった。そこには青年の背中に書かれた文字が記されていた。
島に古くから伝わる呪いの言葉だそうで、島民でもあまり知る者はいないという。
その横に、小さく「見ろ。お前の孫は死んでるぞ。」と書かれていた。
青年の祖父にあてて書いたような文面で・・・。
後日、ボランティア団体は島から撤収。間もなくして、青年の妹が日本の自宅で怪死。
自室で発見されたとき、体が反対側へ折り曲げられ、二枚貝のようであったという。
どうやってそのようになったのかは不明。両親に疑いがかかったが、発狂して病院おくり。
手、足、首は水槽の中に入れられていた。
二枚貝みたいな死体、まだ出てきてるみたいよ。

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