稲川淳二風に心霊体験を書きます。でも本当の体験です。(文中の「彼」はこの話を書いている「作者」です。)
これはある人が6年位前に体験した。話なんですがね・・・。
彼は郵便局でアルバイトをしていた。結構大きな町でもってね。
郵便局のアルバイトだから色々な所を配る。一軒屋、マンション
アパート、会社、中には○○組の事務所なんてのも、あったみたいです。
彼は別に霊感とか、強いわけじゃない。普通の19歳ですよ。
その日もいつものように郵便を配ってた。お盆前、真夏ですよ。
車の排気ガス、焼けたアスファルト、クーラーの室外機、とにかく暑い。
飲み物なんか飲んでも、たちまち汗になってしまう。そんな暑さ・・・・。
あるアパートの集合ポスト(マンションやアパートの1階入り口
なんかにある101号室102号室203号室なんて書いてある)あのポスト。
あれに郵便物を入れていた。
でもなんか、気になる。間違えてるわけじゃないよなぁ?書留は無いし・・
なにも間違えてないし、何だかわかんないけど落ち着かない。郵便を入れながら
彼ねーふと気が付いたんだなぁ。
涼しい・・その場所なんだかすごく涼しい。もちろん日陰ではあるけど、そんな涼しさじゃない・・で思った。
これ、どっかクーラーの冷気が漏れてるな。そう思った。それ位涼しいんですよね。
仕事もある程度メドがついていたから、涼しいし、ここで休憩しようそう思ってね。休憩した。
買っておいたスポーツ飲料飲んで、喉もカラカラですからね。涼しいしイイ気持ちですよ。
汗も引いた頃、そろそろ行くか、そう思って振り返った。
瞬間ウ~ッ!!驚いた。なんで驚いたかというと、
いつの間にか後ろに、お婆さんが立っていた。キチンと着物を着た品の良さそうなお婆さん。
で、彼の驚いている姿を見て、お婆さんも少し驚いたような顔をしてる。
「あら!・・るのね・・ブツブツ・・」小さい声で何か言ってる。
いつの間にココに来たんだろう?気配なんか全く無かったよなぁ、ブツブツ言ってるし、気持ち悪いな。彼はそう思った。
ま~とにかく仕事に戻ろうと、そのお婆さんに、かるくえしゃくして行こうとした。「待って」お婆さんにそう呼止められた。
「なにか?」彼が聞いた。
すると「305号室の手紙届いてないかしら?」そうお婆さんが聞いてきた。
「やー届いてないですねー」彼は答えた。でも不思議に思ったんだなぁ~。
というのも、その305号室、手紙どころか明細や広告すら届いたことが1回もなかった。
305号室って人が住んでたんだなぁ。そう彼が思っていると、そのお婆さんは、淋しうに「あらそー。ずっと待っているのよ。なんで届かないのかし ら・・・・そうだアナタに
お願いがあるの、私、足が弱いのよー。ココまで(1階にある集合ポスト)降りてくるの辛くて・・申し訳ないけど手紙が来たら部屋まで持ってきて下さる?」 そう言ってきた。
上司(班長)に日頃から、要望には、なるべく答えるようにと言われていたし、お婆さんの事情を聞けば断る事もできないですよねぇ。
「わかりました郵便が届きましたら部屋の方に届けます」そう彼は話したそうです。
するとお婆さんは、「よかったわ~部屋教えるわね~、付いてきて」そういって歩きだした。
彼は「いや!あの~大丈夫ですよ。305号ですよね。部屋の場所は解りますので」そう言っんだけどお婆さん「こちらよ。」どんどん階段の方に行ってしま う。
彼は、こまったなー。もしかすると、足が弱いって言ってたし、階段上がるの手伝えって事かな~?その時は彼、そんな風に思って、仕方なく、ついて行った。
突き当たりのカドを曲がって、お婆さんが階段を上りはじめた。3秒位遅れで彼もカドを曲がり、階段を上り始めた。その瞬間彼は動きが止まった。いない!お 婆さんいないだ!
時間的に階段の途中か、せいぜい踊り場にいなくちゃいけないのに、お婆さんがいない!!
なんだこれ、おかしいぞ?そう思った。すると上の階から「上よ」お婆さんの声がした。
変だぞ。そう思いながわも、階段を駆け上がった。2階いない。3階いない、4階いない。部屋は全部見通せるのに、お婆さん何処にもいない。
なんだ、なんだ??そう思っていると今度は、下の階(3階)から「こちらよ」そう声が聞こえた。
彼は急いで駆け降りた。降りてみると305号室の前、お婆さんが立ってる。さっき3階を見たときは、絶対いなかった。
305号室の前も見て確認しているし、隠れる場所も無い。でも、お婆さんドア指差して部屋の前にいる。不思議ではあるけど、怖いとは思わない。彼は、お婆 さんにさっき何処にいたのかを聞いたわけなんですねぇ。
するとお婆さん「さっきからいたわよ。あなたこそ、なんで上に行かれたの?呼んだのに」
彼は何が何だか解らない。解らないままお婆さんが指を差している、ドアに付いている郵便受を見た。郵便なんて入らないほど、広告や古い新聞などが突っ込ま れていた。
とても人が住んでいるようには見えないんですよねぇ。
でも「住んでいる」っていう人を前にして、「ホントに住んでます~?」
なんて聞けないしねー。現にお婆さんココにいるわけですから。
でも、まー彼はね、「わかりました。郵便が届きましたら、こちらに直接配達しますので」
そういったんですねー。
するとお婆さんは「すみませんね」そういって深く頭を下げた。彼が見えなくなるまで
見送ったそうです。
次の日、またそのアパートに配達に行ったんですねー。するとまたお婆さんが立っている。
彼は「あれ~?昨日、直接、部屋に届けるって言ったのになー。今日は足が楽なのかな?」
そう思いながらも「昨日はどうも・・えーと今日、郵便は無いですね。」そういった。
お婆さんは、また深く頭を下げる。彼は「失礼します」そういって仕事に戻ったんですね。
局に戻りながら「お婆さんは誰からの手紙待っているのかなー早く届くといいけどなー」
そんなことを思いながら局に戻った。
局に戻って、仕事の引継ぎをしたんですねぇ。と言うのも次の日彼、仕事が休みだったんです。
彼が休みの日は、先輩の局員(仮にAさんとしましょうか)が配るわけなんですが、
このAさんと仕事の引継ぎをしたんですね。そのときに、お婆さんの件も話してお願いした。
するとAさんは不思議そうな顔で「305って人住んでたか?」っていうんですね。
たしかに今まで郵便物は無かったわけですからね。普通そう思いますよねぇ。
彼は「でも、お婆さんがそう言ってましたよ。新しく越してきた人ですかね?」そういった。
こんな事、結構あるんですよねぇ。局に届けは出ていないけど、人が住んでるって事がね。
とくにアパートなんかは、そういう事が結構ある。
Aさんは「とにかくまーわかった。今日は班長は休みだから明日俺から聞いてみるよ
今日はもう帰っていいよ」ってまーいうもんで「じゃ、よろしくお願いします」
そういって彼、その日は帰った。
休みもあけて局に行くと、Aさんと班の人達が集まって何か話してる。
「どうかしたんですか?」と彼が聞く前にAさんが話しかけてきた。
「305。あれさー、俺も部屋の前まで行ってみたけど、あれ人住んでるか?
まー郵便は無かったから問題はないけどなー・・・ホントにお婆さんがそう言ったのか?」
っていうんですね。
彼は「ホントですよ!部屋の前でもって、チャンと確認してるんですから」
するとAさんは、ほんとうだろ!という様な表情で、話していた班の局員と目を合わせたんですねぇ。
そこに班長が来た。そして話はじめたんですが、班長がいうにはですねぇ、一応そのアパートの大家にも確認してみたけど、そこ、305号室。人は住んでな いって、そういうんですよー。驚いたのは彼ですよねー。
「なんだおぃ?俺は騙されたのか?いやっ!痴呆のお婆さんだったのかな?そのわりには、
しっかり話してたしなー。だからってそんな嘘ついても・・・・」
困惑している彼を見て、班長は「ちょっと、こっちに来てみろ」
静かな食堂に行って彼に聞いてきたんですねー。
「そのお婆さんなー、どんな人だった?」班長はそう彼に聞いた。
だから彼は、今までのイキサツから、70歳位で・・とか、とにかくお婆さんの特徴を全てを班長に話したんですね。彼にしてみれば嘘だと思われたくないから 必死ですよ。
話し終えてね彼、班長を見たんですね。
班長は、ただただ下を見て、うなずいていたそうです。
朝からそんなことがあれば誰だっていい気分じゃないですよねぇ~。
でも仕事ですから、仕方ない。その日も配達にいった。いつものように赤いカブでもって配ったわけだ。
午後3時半位かなぁ。いよいよ例のアパートまできたんですね。
お婆さんがいたらイロイロ聞かなければならない。
Aさんや班長に報告しなければならないですしね。集合ポストにむかった。
でもねー、その日は、お婆さんいなかったんだなぁ。
ま~。ホッとしたようなガッカリしたような、とにかくスッキリはしないですよコレじゃ。
彼が「明日はいるかな?」そんなこと考えていると、バイクの音がした。
見ると班長なんですよね。「今日はお婆さんいたか?」なんていいながら班長がきた。
彼は「見ればわかるじゃないですか?今日はいませんよ!」そういったんです。
彼は自分のこと、信じてもらえてないと思ったんでしょうねぇ。つい強くいってしまった。
すると班長は、「マーマー落ち着いけよ」そういって彼を305号室の前までつれていったんですよね。
そしてイロイロ詰め込めれてる散らかった305号室のドアポストを見ながら班長、話し始めたんですよねぇ。
305号室には、前に70歳位のお婆さんが1人で住んでいたそうです。以前もお婆さんにお願いされて、直接部屋のドアポストに配達して、そのお婆さんは、 週1回位届く息子さんの手紙をいつも楽しみにしていたそうです。
でもどーもスッキリしない、で彼、班長に聞いた。
「ってことは、どういう事ですか?そのお婆さんは近くに引っ越して、そんでボケちゃって、前住んでいたこの部屋に手紙を取りに来ているって事ですか?」そ う班長に聞いたんですね。班長はしばらく黙っていたんですが、こう言ったそうです。
「近くに越してもいないし・・あのなー・・・。この話しなー俺が今の局に来た頃の話だから15年位前の話しなんだ。」・・・。彼は、おいおいおい待ってく れよ!そう思った。
近くに越してない?15年前?年とらないお婆さんなのかよ!はぁ??
ヤッパリ納得いかない。でかれ班長に聞いた「それじゃ話しが合わないじゃな・・・」 そこまで彼がいうとねぇー班長は彼の肩を、軽く2回叩いたそう です。
それ以来、お婆さんが彼の前に現れることはなくて、困ることはなかったんですが
ただ一つだけ困った事があったんですね。それはねぇ、彼がお客さんから要望を聞いてくると、「ちゃんと生きている人からの要望か?」ってAさんや班長にい われたことだそうですよ。
これは余談ですが、このまえ6年ぶりに、このアパートがある近くの町に
いったんでよ。なんとなーくあのアパートの事を思い出しましてね。
行って見たんですが、まだありましたよ。せっかくだから集合ポストまで
行こうと思たんですけどね・・・・。怖い訳じゃないんだ、でも集合ポストには、いきませんでしたね。
妙な話だと思いませんか?この体験をして思ったんですがね
もしかすると、死んだことをわからない幽霊と、幽霊と話してることを
わからない人間は、友達になってもおかしくないなー。
そんなふうに思いましたよ。
一応書いておきますが淳二風はネタですけど、これ、実話なんですよねぇ
彼そういってましたよ。
おわり