Archive for 7月, 2010

嫁の苦悩

1年前の話。

俺は結婚してて、嫁と子供の3人で暮らしている。
その日はいつものようにネットしてて、2ちゃん見てたりした。
いまいち面白いスレとかがなかったので暇だな~と思って一服してた。
ぼーっとしてたら、昨日見つけた面白いフラッシュサイトが頭に浮かんだ。
暇だからあのサイトでも見るか。と
ググッてもなかなか出てこなくて、どこのサイトだったかな~と思い
履歴を見てみようと思いついた。
上から1つ1つ順番に見ていった。
すると途中で俺の見てないサイトが出てきた。
自殺サイトだった。
パソコンは嫁も使っていたからすぐに分かった。嫁が見たものだと。
履歴を見ていくごとにいろんな自殺サイトが出てくる。
その中に借金返済サイトや詐欺対策のサイトも混ざってた。
まさかな。と思い寝ている嫁を起こそうとしたが
嫁が借金に困ってるとか、自殺するような事があるなんて思えなかった。
なぜなら、今日帰って来た時も、
ここ最近も昔となんら変わりない感じだったし
思い当たるふしが全くなかったからだ。
俺は自殺サイトは興味半分で見てて詐欺対策サイトとかは
防犯のために見てたんだなって勝手に思う事にした。
その日は何も気にならずそのまま寝た。
次の日やっぱり気になった俺は会社に休みの電話を入れ、
嫁には仕事に行ってくると言って様子をみようと思った。
仲のいいお隣さんの奥さんに事情を説明したら入れてくれた。

話が長くなるので省略するが
嫁は詐欺にあって俺に内緒で借金してて本気で自殺を考えていた。
なぜ内緒にしてて一人で悩んでいたかというと俺に言えない事情で詐欺にあったから。
結果的に俺は嫁の自殺を止める事が出来た。
今は俺がバイトを始めて借金の返済をしている。
今は幸せに暮らしているが
俺がインターネットの履歴を見ていなかったら、と思うとぞっとする・・・。


喪失

ある日から変な夢を見始めたんです。
ノコギリを持った男に追い掛け回されて最後は腕を切られちゃうっていう。
何故か夢の中だと進もうと思っても前に進めず、壁を登ろうにも壁に手が引っかかり
ませんでした。
切り落とされたところでハッと目が覚めて腕を確認。ちゃんとついてる。
夢だったんだとわかった時は心底ホッとしました。
それくらい生生しい夢だったから。
もうあんな夢見たくないなぁと思いながらその日は憂鬱な気分に苛まれてました。

でも次の日もまた夢であの男に追い掛け回されたんですよ。
今度は反対の腕をガリガリガリガリ切られました。
噴き出す血とか物凄くて、夢の中で何度も何度も叫びました。
夢だからか痛みは無いんですけど、そのリアルさで気が狂いそうでした。
夢の中の僕はこれで両腕が無くなったわけです。でも不思議と喪失感はありません
でした。

その次の日からは脚でした。
腕の時同様、付け根辺りからノコギリでゴリゴリガリガリ、切り落とされます。
やっぱり夢の中では抵抗どころか動く事も満足に出来ず、されるがままでした。

もうこんな夢は見たくないと強く願ったんですけど、その翌日まで夢は続きました。
残った一本の脚を男は躊躇無く僕の体から分離させました。
もう体には腕も脚もない。ダルマのような状態になってしまいました。
でもやっぱり喪失感はありませんでした。

そこでやっと夢が醒めたんです。ホント変な夢だったなぁって思います。
長い夢だなぁとも思いました。

だって僕は生まれた時から両腕も両脚も無かったんですから。
その日からもうそんな夢は見なくなりました。


見えないけど見えるもの

私の兄は大学行ってたんだけど原因不明の病気で両目が見えなくなった。
それで、今は実家に帰ってきて療養中。
目が見えなくなった当初は精神的にきつく一時期は自殺も考えたらしい。
最近は「いつか治るんだろーさ」なんて言って気楽に過ごしてる。
で、ここ最近兄から聞いた話。
「最近、変なものを見たり聞いたりするんだ。」
「自分が考えるに脳が勝手に色々作り上げてるとは思うんだが。」
「昨日さ、俺のベッドの周りで緑色の小人っぽいのが見えたんだ。」
兄は幽霊とか全く信じない性質なのでこんな事を言うとは予想外でした。
その日以降兄はそういう不思議な事を言うようになりました。
鳥居が見えた、大きな人の手が見えたや、誰も居ないはずなのに声、足音がする等です。
親には心配かけたくないとこれを話すのは私だけだったみたいですが。
ある日、部屋から兄が出てこないので呼びに行くと布団の中で震えていました。
「ドアは閉まってるし電気もついていない。俺の両目も相変わらず見えない。」
「けど、ドアの前に居るのが判るんだ、白い着物を着た女が立ってる。」
「顔を俯いて立ってるんだ、舌が異様に長い。」
「お前が来たからなのかもう見えないけど怖かった。」
「けど、俺は幽霊なんか信じない。」
そんな事を聞いた所為で私もそこを通るのがしばらく怖かったです…
色々見たり聞いたりするという割には全く信じていない兄も凄いです。
「幽霊みたいなのも見えるけど何かを見たいって俺の気持ちが作った幻だろ?」
「本当にそんなのいるわけない、見て気持ち良いものじゃないから見たくないしな。」
「もし、本当に見えてるのが幽霊なら結構そこらへんに居るもんだぞ。」


8周目

俺には、幼馴染の女の子がいた。
家も近くて親同士の仲も良く、俺とその子も同い年ってこともあって
小さいうちから一緒に遊んで(遊ばされて)た。

まぁだいたいそういう関係ってのは、歳をとるにつれて男の側が
気恥ずかしくなって疎遠になってくものだけど、例に漏れず俺も
そうだった。小学校の高学年ぐらいになると、道ですれ違っても
「よう」
「やあ」

ぐらいのあっさりした関係になってた。

で、中学2年のときの夏休み、その子が突然、うちに来た。
とうもろこし持って。
たぶん、向こうの親に、うちに届けるように頼まれたんだろう。
俺はそう思ったし、向こうもそんな雰囲気だった。
あいにくその時、うちの親は外出してて、俺一人だった。
とうもろこしもらってハイさよなら、ってのもなんだかなー、と
子供ながらに気を利かせて「あがってく?」と彼女を家に入れた。

麦茶を出して、まぁあたりさわりのない会話をした。担任がどうとか
夏休みの宿題がおわんねーとか。だんだん打ち解けた雰囲気になって
きた時、彼女が不意に「今度○○神社行かない?」と言い出した。

○○神社は、うちから自転車で10分ぐらいのところにあって、
周りが木々で囲まれてて昼でも薄暗い、用がなければあんまり入り
たくないところだった。当然俺は「え、なんで?」みたいな感じで
聞き返した。そしたら彼女は「あ、怖いんでしょ。」と、ちょっと
馬鹿にしたような顔で笑いながら俺をみてきた。
そーなると、「そ、そんなことないやい!」的なノリになり、まぁ
結果的に彼女の術中にはまってしまったわけで。
さすがに夜は怖いんで、何とか理由つけて(夜は家族で外食するから、
みたいなバレバレの嘘)、次の日の昼間行くことにした。

で、当日。現地集合ってことで、俺が神社に着くと、彼女はもう
着いてて俺を待ってた。真っ白いワンピースと真っ白い帽子。
普段絶対しないカッコで、恨めしそうに石段に座ってた。
「おっそーーい」
昨日とはうって変わってフレンドリーな第一声をもらいつつ、
神社の前まで二人で歩く。石段を登る途中、彼女は俺にいきなり
「○○君は、霊って信じる?」と聞いてきた。

普段しないようなカッコで、人気のない神社に誘われ。
多少なりとも別のことを想像してた俺は、安心半分、がっかり半分
(幼馴染とはいえ、目がおっきくてちょっと釣り目で、猫みたいな
感じのかわいい子だったからちょっとがっかり)ぐらいの気持ちで
「信じるわけないじゃんw」と即答。

「じゃあ、今日で信じるようになるかもよ?」ととんでもない
事を言い出す彼女。
「私、霊とかそーいうの、好きなんだ」おいおい電波ですか。
「会いやすいように、白ばっか着てきたんだ」そーゆーことですか。

唖然としながらとうとう神社に到着。快晴ならまだしも、ご丁寧に
石段を登り出したあたりから曇り出し、嫌ーな暗さの神社一帯。

「じゃあ始めようか?」大きな目を更に大きく開いて、彼女が笑う。
彼女が言うには、神社の周りを二人が取り囲むように走って回る。
二人の合流地点で、すれ違いざまに霊が見える、といううわさが
あるらしく、実験の相手を探してたんだと。

「1周ぐらいだと見えるかどうか微妙らしいんだけど・・・」
けど何ですか。

「8周回ると、二人とも連れて行かれちゃうんだって」
勘弁してくれ。

とはいえ、男と女、幼馴染、同い年。断れない条件は揃っている。
引いたら負けだ。という心理には勝てず、結局やることに。

神社の入り口を出発点に、互いに時計、反時計回り。ちょうど
神社の裏に松の木が生えていて、そのへんが合流地点となる。

「行くよ・・・よぉーい、どんっ!」なんでそんなに明るい。

内心半ベソ状態で走り出す。神社の脇を抜け、松の木へ。
反対側から彼女が走ってくる。手を振ってるし、笑ってる。
周りには何も見えない。霊の姿なんてどこにもない。
彼女とすれ違いざま、彼女の「全然(見えない)」という
声だけが聞こえた。1周目はつつがなく終了。

そのまま2周目、3周目に突入。1周目で何も見えなかったことも
あり、俺も心に余裕ができ、向かってくる彼女に手を振ったり、
「いねーじゃん!みえねーじゃん!」と笑いながら叫んだりしていた。

対照的に彼女は、2周目、3周目と数を重ねるごとに笑顔が消え、
すれ違うときも無言になっていた。

「このぶんだと、8周したって全然おk」
そう思いながら迎えた7周目。彼女が俺とすれ違う瞬間、

強烈なラリアットを俺にかました。

不意の急襲に喉をやられ、悶絶する俺。
彼女は苦しむ俺の手を強引に引っ張り、「早く!」と神社から逃げるように走り出した。
わけもわからず一緒に走る俺。石段を下り終え、止めた自転車もそのままにして更に走る。

神社が見えなくなったあたりで、彼女はようやく足を止めた。

喉の痛みと走ったあとの息切れが収まり、ようやく彼女に文句を言った。
「何でラリアット???」

彼女が答える。「見えてなかったの?」

は、何がですか?別に何も、と答える俺。彼女は首を振りながら

「○○君の後ろ、2周目あたりから手とか顔とかが追いかけてきてたの。
だんだん数が増えてって・・・7周目には○○君に絡みついてた。
○○君がそんなだったから、8周目はやめとこうと思って。」

もし8周してたら・・・ と俺がつぶやくと同時に、俺の背後から小さく

「ちくしょう・・・」呻くような声がはっきり聞こえた。

その声を聞いたかどうだか、彼女は
「私はともかく、○○君はやばかったね。家帰ったら、背中みてみな?」と、笑った。

彼女に言われるまでもなく、帰ったとたん、母親に
「あんた、どーしたのその背中?」

どーしたもこーしたも、シャツには手形がびっしり。
その一件以来、彼女にはいろいろと協力をさせられている。


消せない呪い

俺と友人のA、それから他の友達4人で夏に旅行に行った。
昼間はハイキングしたり釣りやったり、それから夜はバーベキューに花火。
ごく当たり前の楽しい旅行だった。Aはデジカメで写真を撮りまくってた。
宿泊はとある山荘で。
深夜、そろそろ眠くなってきた頃、あと一枚しか撮れそうにないっていうんでAがみんなを並ばせて、
カメラにタイマーをかけて6人の集合写真を撮った。

俺達6人はmixi…ではないが、似たようなSNSに加入していて、
そこでメッセージのやりとりをしたり、遊ぶ計画を立てたりしていた。
各々旅行の話を日記に書き、それに対してコメントしたりと盛り上がった。
そのうち、あの集合写真をみんなに送ってもらおうという話になった。
Aは何日かログインしていなかったので、俺がメッセージを送ることに。
「最後に撮った集合写真、みんなに送ってよ」
次の日、Aから返事。
「あれなあ、うまく撮れてなくて、見てもしょうがないよ」
「うまく撮れなくてもいいからさ、送ってくれよ」
十時間ほどたってまたログインしてみると、写真の添付されたメッセージが来ていた。
他のみんなにも送った、とAは書いていた

窓際に6人が並んでいる。窓は大きくて、ほとんど壁一面と言っていいくらい。
外は真っ暗で、部屋の中の景色がくっきり映りこんでいる。
でも何かおかしい。
俺達は窓を背にしている。当然、窓には俺達の後姿、背中と後頭部が映っているのだが…
ひとりの女の子、Bの後ろの窓には、何も映っていなかった。夜の闇の色が窓を塗りつぶしているだけ。
写真全体はよく撮れている。Aは嘘をついたのだ。
Bの後ろの窓の異変に気づいて、俺達にこれを見せたくなかったのだろう。

「なんだ、これCGじゃん!びっくりさせないでよ!」
Bの日記にはそう書かれていた。自分の姿が映っていないので驚き、よく見ると、
窓の色がなんだか不自然だ。どうやら画像を加工するソフトでBの姿をわざと消したらしい。
「Aのやつめー、一瞬すごく怖かったじゃん!」
Bはその次の日死んだ。用などないはずの遠くの駅で電車に飛び込んで粉々になったのだ。
Aがまた写真を送ってきた。CGでいじっていないほうの集合写真。
窓に映ったBの後姿――その周りにいくつもの白い顔が浮かんでいた。
「姿を消しても心霊写真の呪いは消せないんだな」とAはメッセージを送ってきた。
「いや、呪いなんて信じてなかったよ、初めは。Bが嫌な気持ちになると思って消したんだ。
消しさえすれば問題はないと思ったから送ったんだ。後姿が映ってなきゃならないなんて、
俺は気づきもしなかった。だって顔を消すのに必死だったからさ」

俺は二枚の写真をプリントアウトして、値は張ったが霊媒師に見てもらった。
「これはCGですよ、馬鹿らしい」
霊媒師は、白い顔の写った写真を指してそう言った。
「それよりこっち、この写真に問題があります」
Aが修正したという、Bの後姿が消されている写真。
「夜の闇の色、どす黒い色がこの人の背後に固まっています。
何者かの深い恨みが、その色にこめられている」


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