すごく恐いかは、わかりませんが、一昨年の夏に友人と体験したことです。
私は、体験した本人として、恐ろしくてしょうがないので、誰かに聞いて
ほしいんです。
一昨年の夏、大学が夏休みになったので、同じゼミの男友達A、Bと私の
3にんでAの実家に遊びにいくことになりました。Aの実家は東北の岩手県で
大学からは、少し遠いので、2泊3日の予定で、岩手を観光する予定でした。
Aの実家はかなりの田舎でした。近くにきれいな小川があったので、到着した
その日は、釣りをしてすごしました。 そして、その日の夜、Aの知り合いの
地元の女の子2人と、庭先で花火をしたあと、Aが「肝試ししよう」と言いだし
ました。 Aの話によると、Aの家から車で40分ほどいった山の中に、
以前飛行機が落ちて、かなりの死者が出たと場所がある、とのことでした。
わたしは、そのとき「え~? 岩手で飛行機落ちたなんて、聞いたことないよ」
と、Aの話を冗談だと思いました(後で本当にあった事件だとわかるのですが)
わたしは、最初は行く気がしませんでしたが、2人の女の子が、恐がりなが
らも、賛成した様子だったので、嫌とは言えず、行くことに賛成しました。
Aは、このときは「せっかく何もない自分の実家に来てくれたんだから、
なにか楽しませよう」という気持ちだったそうです。
Aの運転する車に乗って、町道を抜けて、街灯が全くない、山に入り込んでいく
林道を20分ほど進みました。そこで車止めに車を止めたAは、「この先を
ちょっと歩いて行ったところだよ」と言います。
車から降りたわたしとBはそれぞれ懐中電灯とヘッドライトを持ち、林道の
脇の幅2メートルくらいの舗装されていない、小道に入っていこうとしました。
現場に着くまでは乗り気だった2人の女の子は、着いたのが思った以上に山の
中だったので、特に1人の女の子が恐がりだし、結局、もう1人が面倒を見て、
車に残り、A,Bとわたしの3人だけで山に入ることになりました。
私達3人は、野外での調査が中心の生物系のゼミなので、ライトさえあれば、
舗装されていない山道でも、慣れていました。
山道を歩いている途中、Aは「自衛隊の飛行機と民間機が空中衝突して、そのまま
バラバラになって落ちたんだ。近所の人が残骸の回収を手伝ったらしいけど、
人の体の部分とかが木に引っ掛かってたりしてたらしいよ」と話しました。
その話が恐かったせいか、Bは「おれちょっとションベン」と言って、道の脇の
小川が流れる小さなくぼみのほうへ降りて行きました。
その時、Aが黙ってわたしの袖を引っ張り、道の反対側の木の陰を指さしています。
「隠れて、帰ってきたら驚かそう」ということです。わたしも笑いを押し殺しな
がら、懐中電灯を消して、木の陰に隠れました。
そして、ようをたしたBがくぼみから上がってきました。
Bは「あれ? なんだよ! 隠れたの?!」と多少混乱した様子です。 Bは
ヘッドライトをつけていたので、その明るさがあるぶん、落ち着いている
ようです。 それでも、かなり恐いのか「おい!ふざけんなって! でてこいよ!」
と大きな声で怒鳴っています。
Bが次第にキレてきたので、Aとわたしは「出ていくか?」と思い、出ていこうと
したときです。
「なんだよ、そんなとこにいたのかよ!」とBが言います。 「あ、ばれた」と
思い、わたしが懐中電灯をつけて出ていこうとしたところ、Bが道の先にある
茂みに向かってどんどん歩いていきます。 そして、茂みをかき分け、Bはどん
どん私達とは関係ない方向に進んでいくのです。
「ははは、あいつ馬鹿じゃねーの? 何勘違いしてんだ? ハハハ」とAと
わたしは、最初笑いをかみ殺していましたが、Bが人間の身長とほぼ同じくらい
の笹ヤブをかきわけて、Bのヘッドライトの明かりが、笹の間から見えるように
なると、笑ってはいられなくなりました。
Bが進んでいるのは、密集した笹ヤブです。例え、昼間であっても、その先に
私達がいても、絶対に見えるわけがありません。 何か変だと気付きました。
そうです、この時点で、何かおかしかったんです。
Aとわたしは、隠れていた木の陰から出て、ヘッドライトの明かりがもれてくる
笹ヤブに向かって走りました。そして、明かりの方向に向かって笹ヤブをかき
わけました。密集した笹が引っ掛かり、なかなか進めいないのをもどかしく
感じます。 もちろん、Aもわたしも「おい、B! 違うって!」と大声で
叫びながらですが、Bは進んでいくのです。
Aがわたしより先にBに追いつきBに声をかけました。でも、聞こえてくる会話が
要領をえません。わたしも必死に追いつき「B! お前何やってんだよ!!」と
怒鳴りつけました。 Bはきょとんとして「いや、おまえらこっちにいただろ?」
と聞き返す始末です。 しかもBの手は、素手で笹をかき分けたため、血まみれ
でした(わたしとAも手と顔を切っていました)
「とにかく帰るぞ!」Aが言い、わたしもBも笹ヤブから急いで抜けだし、来た道
を、何度も転びながら、それでも走って駆け下りました。
車にたどり着いたときは、3人とも土まみれでした。驚く女の子達に「後から話す
から」とだけ答え、Aは傷だらけの手でハンドルを握り、Aの家まで帰りました。
帰りの車では、誰も話をしませんでした。
Aの家につき、Bから話を聞こうとしました。でも、この時点で、Bは自分が
何をしたのか、だいたいわかっているようで、ものすごくふるえていました。
「お前達がいたんだって! 笹ヤブなんかじゃねーよ! 道だったって!
こっち来い、ってお前らが手ふってたんだよ! 後は知らねーって」
Bはこれだけを話していました。
帰ってきた私達の様子が普通じゃないことに気付いたAの母親に、笹ヤブのことは
話さず、「肝試しにいった」ということだけ話すと、Aの母親は厳しい顔をして、
「馬鹿にしたり笑ったりしちゃ、駄目なものもあるんだ」といって、庭に生えて
いた松のような棘のある木の枝で私たち3人をしばらく叩いてくれました。
「おまじないだから」とAの母はいっていました。
その後、変わったことはありませんが、今でも、山にいくと、この時のことが
思い出されて、恐くなるときがあります。
もう、死人を馬鹿にするようなことは、絶対にしません。