Archive for 6月, 2010

爺さんの手帳

昨日、爺さんの墓参りに行った帰り
爺さんの家(婆さんは生きてるから)で食事会みたいなのをした。
食事をし終わったあと、本が好きな俺は爺さんの読んでた本を探してて
その中のひとつの原版らしき太宰治全集を物色してたら、なんかその全集を取った奥に小さい引き戸があって
その引き戸を開けたら中に紐で結ったコミックスサイズの薄黄色い手帳があった。
婆さんにそれを「これ何?」って見せたら
爺さんが無くなる直前まで、20年くらい心霊現象、超常現象みたいなのを研究していた事がわかった
爺さんも特に隠してる様子は無かったので、俺にくれた。
その中は、色々と場所や、思念がどうだかって、よくある事が書いてあったんだけど
その最後に、詩的な短文があった。

見出しに
「口に出したり、その内容の意図を理解すると
霊的な現象、感情の変化を引き起こす可能性がある文字列、また文章」
て書いてあった。興味があるので、そのまま抜き出してみたいと思う

一つ目
「目を抜き口を紡ぎ空を見る 海は火となり空を焼く
彼の者路を示し合わせん 案内早し道は長し
先はあれど後は無し 崖を背にただ歩むのみ
果ては無限終わり無し 闇に光に空は無く
すべて崩れたり」

二つ目
「示しましょう 落ちましょう
示しましょう 落ちましょう
示しましょう 落ちましょう
死にましょう」

婆さんが言うには、この手帳は爺さんが亡くなるつい前まで書き込んでいたらしい。
杞憂かもしれないのだけど、最後に書き込んだ後に亡くなったのは
この文章に関係があったりしないかな?
爺さんは肺炎で亡くなったんだけど、なんかゾクっとした。


さくら池

僕が、小学校の頃のはなし。通学路から少し外れたところに
さくら池という、かなり大きい農業用水池があった。
僕たちが住んでいた団地は、さくら池の先にあったから
下校途中、大きく迂回する通学路をはずれ、そのさくら池の
ほとりを通る近道を通って帰るのが常だった。
大人たちに見つかり、学校に通報されると、当然、叱られる。
昼でも暗いような竹やぶを抜け、赤土むき出しの切通しをくぐり、
池の土手の未舗装の道を行くそのルートは、人通りも無く
いろんな意味で、やばい感じがしたけど、またそれが魅力だった。

五年生の秋口の頃、そんな僕たちの学校に、奇妙な噂が広まった。
日が暮れてから、その近道をあるいていると、さくら池の
真ん中あたりに、火の玉が浮かぶというものだった。
いつの間にか「その火の玉を見つめてはいけない」という警告も
加わっていた。その警告の出所は、地元の生徒のおじいちゃんや
おばあちゃんらしい。親の代に越して来た僕ら団地の住人には、
今ひとつピンと来なかったが、地元の生徒は近づかなくなった。
きっと僕らの知らない、古い言い伝えでもあったのかもしれない。

僕自身、その火の玉をはっきり見る事はなかった。
確かに、下校が遅くなった時に、夕暮れの土手から、暗い湖面を
見下ろすと、真ん中あたりに、薄ぼんやりと白い霧のようなものが
見えた気がしたことはあったけど、はっきりとは確認していない。
やっぱり、それを見つめることは、怖くてできなかった。

ある朝、同じクラスで同じ棟の五階に住むシゲルを誘うと、
シゲルのかあさんが、彼は具合が悪くて学校を休むからと言った。
放課後、シゲルに宿題のプリントを届けると、共働きだったので、
シゲル本人が、ドアに姿を現した。目が血走っていた。
とても具合が悪そうに見えたので、僕はすぐに帰ろうとしたが、
シゲルに引き止められた。彼のベットに並んで腰をおろし、
シゲルの話を聞いた。夕べから、眠っていないこと。そして、
シゲルは、さくら池の火の玉を見つめてしまったらしいこと。
すると、薄ぼんやりした火の玉が、はっきりと形をとりはじめ、
ドッジボール大の球形の発光体になって、甲高い金属音を
させつつ、シゲルに向かって飛んで来たらしい。
足がすくんで逃げられないシゲルの、1メートルほど前方に、
空中静止した火の玉は、白い光を放ちつつ、実は透明な物体で、
そして、その中に、気味悪く痩せた小人が、しゃがんでいた。
さらに目の前に近づくと、その小人が立ち上がり、シゲルむかって
切れ目だけの口をしきりに動かし、何かを語りかけてきたという。
しかし、周りに響くのは、例の聞いた事も無い金属音だけで、
そいつの声は聞き取れず、しばらくして火の玉は池の対岸の方まで
飛んで行き、ようやく見えなくなったという。
シゲルは怯えて、最後に「どこにも行きたくない」といった。
僕も心底恐ろしくなり、シゲルのかあさんが帰って来たのを
いいことに、そそくさと、シゲルの家を立ち去った。

それから、二週間もしないうちに、シゲルの家族がいなくなった。
学校では急な家庭の事情で済まされた。団地では、たぶん夜逃げだ
ということで落ち着いた。奇妙な事があった。当の夜逃げした夜、
シゲルのかあさんが、団地のベランダから外に向かって、
シゲルの名前を何回も呼ぶ声を聞いた人が、たくさんいた事だ。
僕は、それ以来、さくら池には近づいていない。


マリエ

ウチの近所にまことしやかに囁かれている「マリエ」というお話です

オッチャンは焦っていた。今日も仕事の接待で深夜になってしまった。
いつものT字路を曲がるとそこには古びた神社があった
ほろ酔い加減のオッチャンはには見慣れた風景だったが
その日は何かが違っていた

ぽーん、ぽーん・・・
一定の間隔で音が刻まれている
不思議に思いながらもオッチャンは歩調をはやめたのだが
ふと、神社に目をやると浴衣を着た小学生くらいの女の子が
ボールをついて遊んでいる
深夜の神社の境内で少女がたった一人でだ・・・

違和感を感じて目をこらすと
まだ昼間の熱気がのこっている深夜だというのに
浴衣ではなく古い着物をきていたのだ

余り深くかかわらない方がいい。オッチャンは薄ら寒いものが
背筋を通り抜けるのを感じたのか感じていないのか
そのまま神社の前を通り過ぎた

ぽーん、ぽーん・・・
音がオッチャンの後ろをついてくる
酒のせいで上がっていた体温は急速にさめて行き
いままでかいていた汗が冷や汗になるのがわかる

・・・後ろを振り返ると少女がついてきていた
うつむいてボール、いや、古風なマリをつきながら

その少女の脚は前に進んでいるにもかかわらず
全く動いていなかった
そのまま脚を動かさず、マリをついている手だけを動かしながら
オッチャンに近づいてきたのだった

死に物狂いではしる。走る。疾る。
息が続かない身体にムチをうってはしる
しかし「その音」は確実に近づいてきている

「その音」がおっちゃんの近くまで来たとき
オッチャンは振り向いてしまったのだ
ぽーん、ぽーん・・・
すぐ背後に少女がいた。ソレはずーーとうつむいていたのだが
ゆっくりと顔を上げ、吸い込まれそうな漆黒のまなざしを
オッチャンのつま先から膝、腰、胴・・・
そのまま視線を上げながら首まできた時

オッチャンはまだ暗い明け方に
道端にぶっ倒れて気絶していたところを発見された
あのまま眼があっていたらどうなっていたのかは誰にも判らない。

後日談

ひとりのバイク乗りが「マリエ」の話をきいていた
地元の峠でも名の知れた走り屋でした
CBR600という、とてつもなく速いバイクを操る彼は若すぎたのだ

下りの峠をバイクで攻め込むときの恐怖は並大抵のものではない
しかし、それでも速い彼は怖いもの知らずと呼ばれた
その彼が神社の前に居た
ぽーん、ぽーん・・・
軽快なエンジン音とともに
この世のものと思えない不思議な音もそこにあった

3秒もあれば時速120km/hを出すことのできるバイクに乗る彼は
「ソレ」がバイクにはついてこれないとタカをくくっていた
アクセルを開ける。近所の家の窓ガラスが震えるような咆哮が上がる
クラッチを繋げる。古びたアスファルトでタイヤの表面をちぎりながら
黒々とマークをつける
つぎの瞬間、意識ごと身体を置いて行きそうな強烈な加速で神社の前から疾走する

ヘルメット越しなのに「その音」は聞こえてきた
「その音」は確実に近づいてきたのだった
エンジンの調子が悪いわけではない。快調そのものだ
しかしやがて「その音」がすぐ背後まで迫ってきたのだった
バックミラーには何も写っていない
バイクに伏せながら彼は後方を振り返ってしまった

そこには脚を全く動かさず
髪を振り乱しながら、前傾姿勢になって必死にドリブルをしている少女の姿があった

なにを祀っているっているかはよくわからない道祖神の横を通り過ぎたところで
少女の速度が落ちた
肩で息をしながらうつむいたままマリをついていたが
その姿のままゆっくりと夜の闇に溶けていったそうな・・・・


呪いの方法を

19世紀末、どこの国かは知らない。
路上で客に依頼された絵を描く、絵描きとして生計を立てている一人の男が居たそう。
同じく絵描きとして生計を立てている女は、その道で大成し男よりもお金を持っていました。
その女に顧客を取られていってしまうので、男はついに彼女を恨み始めました。
その時のその国では、相手が死ぬ様子を絵にして描き、その絵を家に飾るとその相手に呪いがかかるという
何とも信じがたい呪いが流行っておりましたので、男は便乗してその呪いの儀式を行いました。
相手のお好みの死に方を選べてしまうそうです。但し、その絵は鮮明で綺麗な絵でなくてはいけないそうです。
絵描きとしての力量に自信があった男は、その女が国軍に強姦され焼き殺されるという何とも酷い絵を、
40ページにも及ぶスケッチブックに描いたそうです。

数日後、その女の元に国軍の兵隊がやって来て、自分の似顔絵を描くように依頼したそうです。
女が描き終えて兵隊に渡すと、兵隊は気に入らなかったのでしょうか。「似ていない!」と
紙を破り捨て、彼女は男が導いた通りの死に方をしたのです。

翌日男の元に、国の警察がやって来ます。「ちょっと本部まで来なさい」と言われるがままに
男は本部にやって来ました。そこで待っていたのは厳しい取調べと拷問。
男はまったくワケがわかりませんでしたが、聞いてみました。「私が何をしたというんですか?」
取調べを承っていた男はこう切り返してきました。衝撃的な言葉でした。
「あなたは絵描きさんの彼女(名、S)を強姦して焼き殺しただろう。
何と酷い。お前はもう死刑が決まっているのだよ」
男は、自分ではないと必死に弁明しました。実際は国軍の兵士が手にかけたから、らしいです。
しかし、動機もハッキリしていたので、男は翌日、絞首刑に処せられました。

実はあの日、偶然にも絵描きの彼女が男の家に、ある用事があってやって来たのです。
その時、窓からたまたま彼の部屋の中を見てしまったのです。というか見えてしまったのです。
半狂乱になって笑い声をあげながら自分の死に行く姿を描いているあの男を見つけてしまったのですから。
翌日、彼女の家にやって来たのはあの男でした。

彼女も呪いの方法を知っていましたから。


子供にしか見えない

この話は、友人とその息子が体験した実話です。もう5年ほど前の話になりますが、
今でも思い出すだけで背筋が凍りつきます。色々な意味で、世の中危険な事が
多いなと思います。皆さんも、何か変だなと思ったことには細心の注意を払った
方が長生きできると思います。子供の敏感な感性は、時として役に立ちます。

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。友人の仕事の
関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に
4歳になる息子と毎日遊んであげていたそうです。

友人が言うには、その子は少し変わった所があるようでした。初めて歩く場所で、
「ここは行きたくない」と歩道橋の前に座り込み、意地でも動かない事がありました。
根負けした友人は、仕方なく遠回りして横断歩道へ向かいましたが、その時に
何気に歩道橋を見るとお花とビールが添えてあったり、前を走っている自転車に
向かってイキナリ指をさし「あっ!」と叫んだかと思うと、その自転車が転んだり。
友人はその子の不思議な何かに気がついてはいましたが、本人があまり意識を
しないようにあえてその話には触れずに、幼稚園の友達の事や、毎日の出来事など
を話しながら楽しい散歩を心掛けていたそうです。

そして問題の日。いつものように公園に遊びに行き、友人は公園のベンチに腰をかけ、
タバコをふかしながら息子がジャングルジムや滑り台で遊ぶのをぼんやりと見ていました。
すると、そこに見かけない男性がやってきて友人の隣に腰を掛けました。特に
何を話すわけでもなく、軽く会釈をしただけで2人は黙って座っていました。ふと
息子を見ると、息子は滑り台の上でじぃっとこちらを見ていました。さっきまでは
夢中になって走り回っていたのに、食い入るように2人が座るベンチの方を見ているのです。
「?…なんだろ?」友人はそう思いましたが、別段気にも留めずに時計を見ると、夕食に
ちょうど良い時間になっていたので、友人は手を振って子供を呼んだそうです。しかし、
息子は首を横に振ってこちらに来ようとしません。「ん?またか…。今度はなんだろう…。
まさかこの男性がお化け?そんな訳は無いよな、霊感のまったく無い俺にもはっきり
見えるんだし。ハハハ」友人はそう思いつつも、その男性が本当にお化けじゃないかを
確かめるために、さりげなく、しかしハッキリと確認したそうです。「足はついてるな…。
実体感もあるし。…気のせいか。」結局息子はこちらに来ないので、滑り台の所まで
迎えに行き手を差し伸べたそうです。「帰るよ。」そう言いながら息子の手を取ったの
ですが、氷のように冷たくなっていた息子の手に、友人は一瞬ギクリとしたそうです。

公園の出口で振り返った時には、その男性の姿は無かったそうです。息子と手を繋いだ
まま帰り道に向かっていると、その小さな手にギュっと力が加わったので友人は
なんとなしに周囲を確認しました。すると、前方の公園の角から先ほどの男性が歩いて
来ます。道に迷ったようでキョロキョロと周りを見回していました。そしてこちらに
気が付くと、まっすぐこちらに歩いてきました。友人が軽く会釈をして通り過ぎようと
したところ、「○○○駅はどちらの方向ですか?」と話し掛けてきたので、行き方を
教えてあげるとその男性は礼も言わずに走っていったそうです。

その男性が現われてから、息子が力いっぱい手を握っていたのを友人は知っていました。
男性が去った後に気づいたそうですが、手は汗でびっしょりで、小刻みに震えていた
そうです。そしてその男性の姿が完全に見えなくなったときに、息子が言ったそうです。
「…ねぇパパ…。さっきのおじさん、どうして血だらけのおばさんと一緒なの?」

翌日の朝刊で、その男性が指名手配された殺人犯と知ったそうです。


  • PR

  • アマゾン ホラーランキング

    Powered by fun9.net
  •  

    2010年6月
    « 5月   7月 »
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    282930  
  • 最近のコメント

  • Copyright © 1996-2010 2chの怖い話. All rights reserved.
    Jarrah theme by Templates Next | Powered by WordPress