Archive for 6月 6th, 2010

呪いの方法を

19世紀末、どこの国かは知らない。
路上で客に依頼された絵を描く、絵描きとして生計を立てている一人の男が居たそう。
同じく絵描きとして生計を立てている女は、その道で大成し男よりもお金を持っていました。
その女に顧客を取られていってしまうので、男はついに彼女を恨み始めました。
その時のその国では、相手が死ぬ様子を絵にして描き、その絵を家に飾るとその相手に呪いがかかるという
何とも信じがたい呪いが流行っておりましたので、男は便乗してその呪いの儀式を行いました。
相手のお好みの死に方を選べてしまうそうです。但し、その絵は鮮明で綺麗な絵でなくてはいけないそうです。
絵描きとしての力量に自信があった男は、その女が国軍に強姦され焼き殺されるという何とも酷い絵を、
40ページにも及ぶスケッチブックに描いたそうです。

数日後、その女の元に国軍の兵隊がやって来て、自分の似顔絵を描くように依頼したそうです。
女が描き終えて兵隊に渡すと、兵隊は気に入らなかったのでしょうか。「似ていない!」と
紙を破り捨て、彼女は男が導いた通りの死に方をしたのです。

翌日男の元に、国の警察がやって来ます。「ちょっと本部まで来なさい」と言われるがままに
男は本部にやって来ました。そこで待っていたのは厳しい取調べと拷問。
男はまったくワケがわかりませんでしたが、聞いてみました。「私が何をしたというんですか?」
取調べを承っていた男はこう切り返してきました。衝撃的な言葉でした。
「あなたは絵描きさんの彼女(名、S)を強姦して焼き殺しただろう。
何と酷い。お前はもう死刑が決まっているのだよ」
男は、自分ではないと必死に弁明しました。実際は国軍の兵士が手にかけたから、らしいです。
しかし、動機もハッキリしていたので、男は翌日、絞首刑に処せられました。

実はあの日、偶然にも絵描きの彼女が男の家に、ある用事があってやって来たのです。
その時、窓からたまたま彼の部屋の中を見てしまったのです。というか見えてしまったのです。
半狂乱になって笑い声をあげながら自分の死に行く姿を描いているあの男を見つけてしまったのですから。
翌日、彼女の家にやって来たのはあの男でした。

彼女も呪いの方法を知っていましたから。


子供にしか見えない

この話は、友人とその息子が体験した実話です。もう5年ほど前の話になりますが、
今でも思い出すだけで背筋が凍りつきます。色々な意味で、世の中危険な事が
多いなと思います。皆さんも、何か変だなと思ったことには細心の注意を払った
方が長生きできると思います。子供の敏感な感性は、時として役に立ちます。

その友人親子は夕方に近くの公園まで散歩をするのが日課でした。友人の仕事の
関係上、いつも日暮れ前には帰宅していましたので、夕食ができるまでの間に
4歳になる息子と毎日遊んであげていたそうです。

友人が言うには、その子は少し変わった所があるようでした。初めて歩く場所で、
「ここは行きたくない」と歩道橋の前に座り込み、意地でも動かない事がありました。
根負けした友人は、仕方なく遠回りして横断歩道へ向かいましたが、その時に
何気に歩道橋を見るとお花とビールが添えてあったり、前を走っている自転車に
向かってイキナリ指をさし「あっ!」と叫んだかと思うと、その自転車が転んだり。
友人はその子の不思議な何かに気がついてはいましたが、本人があまり意識を
しないようにあえてその話には触れずに、幼稚園の友達の事や、毎日の出来事など
を話しながら楽しい散歩を心掛けていたそうです。

そして問題の日。いつものように公園に遊びに行き、友人は公園のベンチに腰をかけ、
タバコをふかしながら息子がジャングルジムや滑り台で遊ぶのをぼんやりと見ていました。
すると、そこに見かけない男性がやってきて友人の隣に腰を掛けました。特に
何を話すわけでもなく、軽く会釈をしただけで2人は黙って座っていました。ふと
息子を見ると、息子は滑り台の上でじぃっとこちらを見ていました。さっきまでは
夢中になって走り回っていたのに、食い入るように2人が座るベンチの方を見ているのです。
「?…なんだろ?」友人はそう思いましたが、別段気にも留めずに時計を見ると、夕食に
ちょうど良い時間になっていたので、友人は手を振って子供を呼んだそうです。しかし、
息子は首を横に振ってこちらに来ようとしません。「ん?またか…。今度はなんだろう…。
まさかこの男性がお化け?そんな訳は無いよな、霊感のまったく無い俺にもはっきり
見えるんだし。ハハハ」友人はそう思いつつも、その男性が本当にお化けじゃないかを
確かめるために、さりげなく、しかしハッキリと確認したそうです。「足はついてるな…。
実体感もあるし。…気のせいか。」結局息子はこちらに来ないので、滑り台の所まで
迎えに行き手を差し伸べたそうです。「帰るよ。」そう言いながら息子の手を取ったの
ですが、氷のように冷たくなっていた息子の手に、友人は一瞬ギクリとしたそうです。

公園の出口で振り返った時には、その男性の姿は無かったそうです。息子と手を繋いだ
まま帰り道に向かっていると、その小さな手にギュっと力が加わったので友人は
なんとなしに周囲を確認しました。すると、前方の公園の角から先ほどの男性が歩いて
来ます。道に迷ったようでキョロキョロと周りを見回していました。そしてこちらに
気が付くと、まっすぐこちらに歩いてきました。友人が軽く会釈をして通り過ぎようと
したところ、「○○○駅はどちらの方向ですか?」と話し掛けてきたので、行き方を
教えてあげるとその男性は礼も言わずに走っていったそうです。

その男性が現われてから、息子が力いっぱい手を握っていたのを友人は知っていました。
男性が去った後に気づいたそうですが、手は汗でびっしょりで、小刻みに震えていた
そうです。そしてその男性の姿が完全に見えなくなったときに、息子が言ったそうです。
「…ねぇパパ…。さっきのおじさん、どうして血だらけのおばさんと一緒なの?」

翌日の朝刊で、その男性が指名手配された殺人犯と知ったそうです。


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