Archive for 6月, 2010

ツンバイさん

これは俺が小学5年生だった時の話だ。
当時、俺の通っていた学校では『心霊写真』を撮影するのが流行っており、
俺のクラスの何人かも使い捨てカメラを持って、
放課後の校舎で幽霊が出そうなところを撮影しながら探索する遊びをよくしていた。
もちろん何処を撮っても心霊写真なんか撮れないし、
放課後の校舎をいつまでもウロウロしていたって先生に怒られるだけなので、
単に怖いもの見たさというか、スリルを友達と共有したかったのだと思う。
そんな遊びも時が経つにつれて自然と廃れていったのだが、
俺と2歳年下だった弟(同じ学校の3年)は写真撮影の遊びを続けていた。

そんなある日、いつものように放課後の校内を走り回っていると、
体育館のほうから「ゴットーン」と何かが床に落ちて反響する音が聞えた。
誰かがバスケでもやってるのかと見に行ってみると、誰もいない。
しかし、体育館のステージの前に緑色の「一輪車」が一台放置されていた。
俺も弟も、(誰かが遊んだまま片づけなかったのだろう)と思った。
一輪車で遊んで放置したまま帰る生徒も結構いたし、特別不思議な光景ではなかった。
ところが、その一輪車はつい今、乗り捨てたかのように「車輪が惰力で僅かに回っていた」
おかしいなと思って、いつも放課後に心霊写真遊びしていた友達のTの仕業ではないかと
ステージの裏に向かって名前を呼んでみたが、応答はない。
弟が誰か隠れていないか調べてみたが、ステージの裏はおろか、体育館の倉庫にも誰もいなかった。
放課後なので体育館と校舎を繋ぐ通路以外は扉にすべて鍵がかかっていたし、俺は急に気味が悪くなって弟と校舎に戻った。

俺が走り出すと弟もビビりだして、二人でランドセルを取りに5年生の教室へ走ったのだが、
便所に行きたくなってしまった俺は、教室の前にあるトイレに弟を連れて入った。
弟は小便がしたいわけではなかったが、一人では怖いので用が済むまで俺の後ろに立たせた。
その時、突然「大」の個室の中で「ゴットン!」という大きな音がし、もう完全に飛び上がるくらい二人で驚いて
弟は真っ先にトイレから逃げ出してしまった。今でも覚えているが、俺は気が動転して、
小便の途中だったにも関わらず、ズボンを上げてトイレを出ると、ランドセル引っ掴んで風のように走って帰った。
そんな怖い思いをしても、子供ってのは不思議なもので、一晩経って翌日になるとケロっと何事もなかったように登校できる。
俺も弟も朝になると昨日の恐怖よりも、放課後にあの不思議な現象の正体を解明してやろうと思っていた。
だが、教室に入ってみると、クラスの連中の雰囲気がおかしい。
いつもなら朝からギャーギャー騒ぎ立てているのに、ほとんど着席してこじんまりとしている。
原因は「黒板」にあった。

「きのう、放課後に一輪車であそんでかたづけなかった人がいます。
あそんでかたづけなかった人は、休み時間に○○先生に~~」

とか何とかという内容が書かれていたのを覚えている。
担任は女の先生だったが、清掃などにはうるさい先生だったので、
朝からクラスが辛気臭い雰囲気だったわけ。
俺は身に覚えがあるというか、昨日の放課後に体育館に放置された一輪車を見ているので、
100%あの一輪車のことだと思って、自分には関係ないけどビクビクしていた。

でも、問題は何であんな体育館に放置された一台の一輪車くらいで、
こんな風に黒板に書き出されなきゃいけないのか、ということだった。
一輪車を片づけないで放置する生徒は実際多かった。
5年生だけでなく、1年~6年生まで遊具を片づけない奴らは結構いた。
それなのにこのピリピリムード。
やがて1時間目になり、担任が教室に入ってくるといつものように挨拶済ませて、
授業を始める前に黒板の連絡内容についての話が始った。

「うちのクラスの前にお手洗いがありますね。
そこの男子トイレの個室の中に昨日の放課後、1年生用(緑)の一輪車が置いてありました」

その言葉を聞いた時、俺は予想に反する見当違いに、(?)と首を傾げた。
いや、首を傾げかけた俺はぷつぷつっと鳥肌を立てた。
「昨日のこと」だ。教室前のトイレに駆け込んだ俺と弟は個室で大きな物音を聞いている。
あれは個室の中で一輪車が倒れた音ではなかったのか、と俺は理由もなく恐ろしくなってきた。
うちの学校での一輪車は3種類あり、大中小を各学年ごとに色分けして使用している。
緑が1年~3年、黄色が3年~4年、赤が5年から6年となっている。
小さい緑の一輪車なので、低学年坊主のイタズラかと思われたが、
自分の学年(5年)のトイレの個室に放り込まれていた悪質なイタズラである。
当然、高学年のほうに疑いがかかるのは当然であったが、誰も心当たりはない。
ただ俺と弟だけは、昨日の放課後、5年の男子トイレに誰かがいたのではないか、という漠然とした疑いは抱いていた。
この事件はちょっとした問題となり、後日、全校生徒の間でも遊具の管理や整理整頓をきちんと行なうように指導された。
それからというもの、遊具を遊んだ後に放置する生徒はいなくなったが、
結局犯人は分からず終い、またクラスにかけられた疑いが晴れぬまま、
5年生徒の誰かだろう、という結論には俺や他のクラスメイトも釈然としないものがあった。

そこで俺は真犯人を幽霊と勝手に結論づけて、再び放課後の心霊写真遊びを始めた。
当然、怪しいのは5年の男子便所。弟はもうあの出来事以来、ビビってこの遊びには付き合わなくなってしまったので、
俺一人で空の暮れかけた放課後の校舎を徘徊する。今考えてみるとゾッとするが…。
使い捨てカメラでトイレの隅々を撮影し、(心霊写真よ出ろ!)とワケの分からぬ念じを込めながら、
鏡に自分の姿を映して撮ってみたり、黄ばんだ便器を撮ってみたり、
床を撮ってみたり、掃除用具の暗がりの中を撮ってみたり、もちろん問題の個室のほうも入念に撮影した。

後日、学校から帰ってくると、親に頼んでいたカメラの写真が出来上がったことを知り、
ランドセルを玄関に叩きつけて自分の部屋に飛び込んだ。
40数枚撮影した写真を一枚一枚ワクワクしながら凝視する。
怪しいものが少しでも写っていたら、あの放課後の出来事は幽霊の仕業だったのだ、と自分で納得できるからだった。
…しかし、現実とは味気もないもので、撮影したすべての写真には「心霊」らしきものは何も写っていなかった。
ピントもロクに合わず、滅茶苦茶なアングルからの便所一色の写真だ。
俺はひどくショックを受けて、もう今後は心霊写真などという馬鹿げた遊びはやめようと思った。
ところが、机の上に散らかした写真を封筒に戻そうとしていた時、ある事実に気がついた。

何のことはない。現像された写真よりもネガフィルムに写っている枚数のほうが2、3枚多いのだ。
その足りない分のネガを窓に当てて見てみると、ネガではよく分からなかったが、トイレの個室を写したものであった。
そこで俺は、写真の枚数が足りないことを母親に尋ねてみると、母親は奥歯に物がつっかえたような言い方で
(ああ、残りのはね、捨てた)
俺はこの母親の一言に心底腹を立てたのを覚えている。
俺が撮影したのに勝手に捨てられたのではたまったものではない。
母親の意図も理解せず、俺は一人でプリプリ怒りながら、
居間のゴミ箱の中身をムカっ腹立ててひっくり返しぶちまけ、捨てられた写真を探した。
そしてあの瞬間だけは今でも脳裏にこびりついている。
2、3枚だったと思うが、ゴミに混ざって「執拗に捻じ曲げられた写真」を発見した。
母親のやり方が頭にきた俺は、写真の一枚を無理矢理広げる。
そこに写っていたものは、
個室の天井の通気孔を覆っている網からこちらを覗く、首をひねった長髪の女だった。

――ずっと後になり母親に訊いて分かったことだが、うちの小学校では昔、事故で両脚が不自由になった女子生徒がおり、
中学に入学する前日、自殺して亡くなったという。理由は不明だが、体育が大好きな生徒さんだったそうで、
学校から家に帰ると近所でいつも緑色の一輪車を乗り回していたらしい。
その話を訊いた時、彼女は両脚の無くなった身体で今も一輪車に乗ろうとしているのではないか、と
恐ろしさと悲しさのまじる複雑な気持になったのを覚えている。

…以上が俺の小学生の頃の思い出だが、実はこの話には続きがある。
俺が小6になった6月頃のことだったと思うが、
同じクラスの生徒で放課後、バケツで育てていた稲に水を注していた奴が、
「奇声を上げながら廊下を四つん這いで走る女」を見たのだという。
その話を聞いた女子がキャーキャー恐がり、男子はみんなそいつを馬鹿にしてからかっていたが、
俺が学校を卒業する頃にはクラスの連中がその女の幽霊を、
「ツンバイさん」「ツンバイさん」と呼ぶようになった。
四つん這い(つんばい)だから、ツンバイさん。
でも俺は知っている。彼女にはとっくに両脚なんか無いことを。

何でも、稲に水を注していたその生徒の話では、
四つん這いで走っていた女の両脚は足ではなく、「両手」だったんだと。


取り囲まれた家

432 本当にあった怖い名無し 2005/11/08(火) 22:24:35 ID:bn8JM1580
我が家で起きた洒落にならない話

私がまだ実家で生活していた頃、度々金縛りや怪奇現象に合っていました。
ある日の晩、ベッドの上で本を読んでいたときでした。
突然身体が引っ張られ、ベッドから落ち、そのままドアの近くまで移動。
ビビリながら足元を見ると、ドアから異様に長い腕が生えているのです。
しかも私の足首をしっかり握っているんです。
コレはやばいと感じた私は知っている限りのお経を唱え、死んだひいばあさんに助けを求めました。
それでも足を掴まれている感覚は無くなりません。じりじり引っ張られ、
足の裏にドアがあったたところで気絶したのか、気がついたときには腕はありませんでした。
まだ外も暗かったので寝なおすことに。そしてウトウトしはじめた時でした。
隣の妹の部屋からものすごい家中に響きわたる絶叫が・・・!
もしや、さっきの腕?そんなことも頭に浮かび、ベッドの上でプチパニックに陥っていました。
程なく父親が妹の部屋に着き、「何だこれは・・・」という声が聞こえました。
父に呼ばれ、行って見ると。妹はベッドの上で泣いていました。
片足が3倍くらいに腫れ上がっていました。
すぐに救急車で病院に運ばれ、下された診断は複雑骨折。
妹はベッドの上で寝たまま、足の骨が砕けてたのです。
「女の人がものすごい力で足を掴んだ。」妹は父にそう言ったそうです。
その話を聞いて、ハッとした私は自分の足を見ました。
私の両足首には手形はついていませんでしたが、10センチ幅くらいの水ぶくれがありました。
そして妹の足にも同じものがありました。

すみません、続きます

433 本当にあった怖い名無し 2005/11/08(火) 22:25:46 ID:bn8JM1580
続きです

結局妹は3ヶ月くらいで退院できたのですが、それからが大変でした。
当時高校1年だった妹ですが、度々学校で問題を起こすようになりました。
自宅でも同様でした。何かに怯え、自傷を繰り返すのです。
困り果てた私たち家族はメンタルクリニックに妹を連れて行きましたが、悪化するばかりでした。

その頃近所では火事が続いていました。妹が骨折したのが5月22日。
最初の火事が6月22日、8月22日、10月、12月、2月と。
出火原因は様々でしたが、地図上で確認すると三角形をつくるように火事が起きていました。
ある一軒の家を取り囲むように・・・
さすがに3件目辺りから偶然じゃないと囁かれ始め、2月の火事の後、
自治会で御祓いが行われました。

434 本当にあった怖い名無し 2005/11/08(火) 22:26:29 ID:bn8JM1580
御祓いの席で私たち姉妹は一番前に座らされました。
私は妹が暴れ出したりしないかと、ハラハラモノでしたが、御祓い自体はあっさり終了。
その後語られたことには、かなりショックを受けました。

40数年前、ある男(イカレていたらしい)が隣町で事件を起こしたそうです。
連続強姦殺人。強姦し、刀を使って女性をメッタ刺しにし、山に遺棄していたそうです。
犯人は死刑になっていませんが、その男の生家はまだ残っています。
それが火事の中心になっていた家です。
犯人が死刑になっても怨みは残ってたようで、こういう事態に陥ったと、霊能者は語りました。
そして私たちに話が及びました。
犯人が使った刀は我が家から持ち出されたモノだったそうです。
祖父は心当たりがあるらしく、血の気が引いた顔をしていました。
犯行に使われた刀の対?の刀があるから手放しなさいと言われ、祖父はすぐ自宅から
刀を取ってきて、霊能者に託しました。
そして霊能者は「あなた方姉妹はこれからも見る事になるでしょう。お姉さん(私)は
大丈夫、妹さんは少々心配ですが、護りをオロシタから、もう大丈夫」と。

護りをオロシタって意味は不明ですが、それからの妹は自傷行為もなく、平和に暮らしています。
一方私は…相変わらず見えることがありますが、被害はありません。


廃屋探検

オカルト仲間のMから

「廃屋探検に行こう」

と電話があった。霊感看護師のYさんも一緒とのこと。夜勤明けのYさんと病院のロビーで待ち合わせる。

「“見える”人にとってはココもお化け屋敷みたいなもんやけどねー」

Yさんは私の隣を指して、ほら、Sちゃん(私)お婆ちゃんにぶつかりそう、と笑った。(0感の私には何も見えなかった)

買い物して食事して、メインイベントの廃屋探検に向かう。そこは意外と街なかにあったけど、まわりをうっそうと茂った雑木林が覆ってるので結構雰囲気あっ た。田舎の古い日本家屋な感じの建物で、噂じゃ幽霊もでるとかでないとか。

木の引き戸をこじあけて入ると、雨戸が閉まってるんで昼間でもかな~り薄暗い。ふた部屋抜けた奥に階段があったので上がってみる。一階はそうでもなかった けど、上の階はゴミ屋敷かってくらい家財道具が散乱してた。ほこりもひどいし暗いしなので雨戸をちょびっと開けた。

Yさんはなにかピンとくるものがあったのか、床にちらばったガラクタを手にとって品定めし始めた。私はなにもピンとくるものがなかったんで適当に家捜しし た。っても2階はYさんのいる部屋の横に書斎みたいな小さい部屋があるだけだった。

書斎の文机(って言うの?)に古めかしい電気スタンドがあって、紐をひくと明かりついたんでそこいらに落ちてる手紙ひろって読んで見よう…としたけど昔の 崩した字でなにがなにやら。

ちょっと飽きてきて携帯プレイヤーで音楽なんぞ聴いていたら、

「やったー!」

とYさんの歓声。

なによ何よ?と寄っていったMと私はギョッとなった。

「Yさん…それ骨壷じゃないとですか?」「ちょ、イカンでしょうそれは!」

しかしYさんはニコニコして

「これ探しとったんよー」

と凄くうれしそう。変、なんか変。いつもと違う。まさかなんか憑いた?でもまだ時計は昼の2時さしてるしーここで自分の行動に違和感。

…あれ、私なんで廃屋の掛け時計なんかみて安心してんの?もうとっくに停まったままだろうに。

ふと雨戸の外を見てもっかいギョッとなる。日が暮れかけてる。薄闇せまってる。

え?なんで?こんないつのまに何時間も過ぎてんの?1時間もいなかったはず。

「撤退!撤退しよ!Yさんそげなもん置いてこう!」

MがYさんの手から壷をもぎとった。抵抗するかとおもわれたYさんだが、ちょっと残念そうな顔をしただけで私たちと一緒にきてくれた。点けたままのハズの スタンドはいつの間にか消えてた。大体こんな廃屋に電気なんてまだ通ってたんだろうか。

「…あ、いけん、雨戸あけたままやった」

階段下りたところでYさんがつぶやいた。

ちょっと閉めてくる、といい残してあがっていった。

「戸締りしとかんと○○さんにがられる(怒られる)けんねー」

とかいいながら。○○、は聞いた事もない名前だった。

私とMはじりじりしながらYさんを待った、が、降りてくる気配はいっこうにない。

「ちょっと行ってみてくるわ」

しびれを切らしたMが階段を登っていく。私はもう逃げ出したい一心で出口の引き戸のとこまで後退した。はよ来い。はよ二人とも降りて来い。だが降りてくる どころか2階からは物音ひとつきこえない。

もう駄目、トンズラこきます、外で待たせてちょうだい、臆病者でゴメン!引き戸に手をかけ、一気に……あ、あれ?

「えぇ?開かんよ!?」

なして?多少はガタついてたけど入るときはちゃんと開いたのに!

そしてそれが合図だったみたいに、階段からミシリ、と音がした。

みしり、 みしり、 みしり、 ひとりぶんの足音がゆっくり階段をおりてくる。

コイツはYさんでもMでもない、と直感した。なぜだか○○さん、という言葉が頭に浮かんだ。日が落ちて隙間からも明かりが入らなくなった一階はもうほとん ど闇。手元もよくみえない。その闇の奥のほうから足音がゆっくり、確実にこっちにむかってくる。

半泣きになりながら戸をひっぱる、お願い、開いて、あんなの会いたくない!開けって!たのむから!だが「それ」は私の背後にすごく嫌な気配をともなって迫 り、そして、肩に…

てところで汗びっしょりで目がさめた。あ、あはは、夢かよオイ驚かせやがって。

疲れてんのかなー最近、と朝食かっこんでるとメールがあった。

『廃屋探検のおさそい☆です』 Mから。

…外からながめるくらいなら、行ってもいいかな、と思っている。


絵馬

476 ○○ 2005/10/27(木) 22:23:15 ID:vYtCijxl0
8年ほど前、オレが専門学校に通っていた頃の話。
そのころは専門学校生で、学校でつるんでる仲間とよく心霊スポットに行ってた。
別に大好きって訳でもなくて、特に行くとこもなくてただドライブしてるだけもつまんないので、
適当な目的地として心霊スポットを選んでるってだけだった。
「うぉ~怖ぇ~」とかその場のノリで言ってはみるものの、別に怖いなんて思ったことは一度もなかった。

477 ○○ 2005/10/27(木) 22:24:25 ID:vYtCijxl0
そんなころ、友達が車を買ったというのでその新車でドライブに行く事になった。
「またKダム行く?」
「もう心霊スポットええよ~。別に女の子おるわけじゃなし。」
「行くとこないじゃん。米軍基地でも行こうか?」
あらかた近場の心霊スポットは行き尽くしたオレたちは、そんなこと話ながらドライブしてた。
「そういえば!」
と、友達が話はじめた。
「YってとこにS峰ってとこあるらしいんじゃけど、そこなんか怖いらしいで。」
「へぇ、どんないわくがあるん?」
聞くと、なんでもYって場所は縁結びの神様が祭られてる神社があるそうなんだが、
そこである女が好きな男への思いを願いつづけたが、ついぞ叶わず、その神様を呪うという遺書を残して身を投げたとこなんだそうな。
「ええじゃん!行こうや!」
「でも場所がいまいちようわからんわ。Yは分かるけど、S峰って聞いた事ないよ。」
「ええよ、コンビニで聞こw」
別に目的地につけずとも、何か探すっていう目的でよかった。オレら流の遊び方。

478 ○○ 2005/10/27(木) 22:25:22 ID:vYtCijxl0
Yは少し遠かったけれども、夜は道もすいててそんなに時間はかからなかった。
オレらは適当なコンビニを見つけて、S峰を探すことにした。
友達2人は売り物の地図を広げて、オレは店員に聞いてみた。
「すんません、ここらでS峰って知りません?」
「あぁ、S峰。ありますよ。」
そういって店員は詳しい行き方を教えてくれた。
「そこって神社あります?」
「あぁ、T神社でしょ?今から行くんですか?」
「そうそう、なんか怖いらしいから、、、。」
「怖いですよ。あそこは。」
店員の口ぶりに興味をひかれた。
「え?店員さんもいったことあるの?」
「ええ、絵馬でしょ?」
「絵馬、、、?」

480 ○○ 2005/10/27(木) 22:26:08 ID:vYtCijxl0
「ええ、絵馬の遺書。」
「ナニそれ?絵馬に遺書が書いてあるんですか?」
「そうですよ、右側のかけるとこの一番下の右から、、、3番目くらいかな?一番奥。でももうさすがにないかな?」
「そこにあるの!?」
「ええ、オレは見たんですけどね。ま、今から行くんでしょ。もし見られなかったら何が書いてあったか教えますよ。大体覚えてるから。帰りもここ通るんで しょ?」
「そんなん見て大丈夫なん?」
「はずしちゃダメらしいですよ。オレはびびってはずせんかった。できたら外してみて下さいよ。」
またまた~、なんて店員と談笑していると、
「おい、場所わかった?」
と、友達が地図をしまって話しかけてきた。
「おう、店員さんが教えてくれたわ。ついでにおもろい話も。」
「ホンマ?地図載ってなかったーや。分かったんなら行こうや。」
「OK!OK!おもろい話したるけーの!」
ただ出るのは悪かったので、缶コーヒーを一本買って店を後にした。

481 ○○ 2005/10/27(木) 22:27:08 ID:vYtCijxl0
オレはさっき店員から聞いた話を走る車の中でコーヒーを飲みながら友達に話した。
「それマジで?やばいんじゃないん?」
「まぁはずすまーや。見るだけならええんと。」
「外したらどうなるか知りたいわ。○○ちゃん外してみてや。」
「お前店員と同じ事言よるわw」
そんな話をしながら、店員に教えてもらった通り車を走らせた。
「お、アレじゃないん?」
神社らしきものが見えてきた。そこは結構山を上ったとこで、神社はちょうど頂上付近に建ってるって感じだった。
その辺り一帯がたぶんS峰なんだと思う。
オレ達は車を停め、神社に入ったが、
神社は思ったより奇麗でなんだか拍子抜けしてしまった。

482 ○○ 2005/10/27(木) 22:27:57 ID:vYtCijxl0
「なんか心霊スポットって感じでもないのー。」
「おぉ、これならW(近所の地名)の神社のがよっぽど怖いで。」
「まぁ、絵馬探してみようや。」
絵馬がかけてある掲示板みたいなものはすぐに見つかった。
幅2メートル弱くらいのものが2つならんでいた。
「右側の一番下の右から2~3番目、、、」
絵馬は掲示板全体に、ギッシリといった感じでかけられていたが、
店員が言った箇所に目をやるとちょっとおかしい。
「あった?」
「いや、ないけど、、、何コレ?」
右側の掲示板、一番下の一番右。絵馬をかける釘の根元に、なんだか郵便ポストのような、ロッカーのような、
いや、まるでビルの配線やらが入ってて、丸いとこを押して取手を出して開くやつみたいな(わかってもらえるか、、、)。
そんなものが取り付けられていて、蓋に開いた小さな穴を通って釘は打ち付けられていた。
その蓋の両端は耳みたいに取手が出してあって、それぞれ南京錠がしてあった。

483 ○○ 2005/10/27(木) 22:28:48 ID:vYtCijxl0
「、、、?」
「こん中に遺書が入っとるとか、、、?」
「、、、!そうじゃ、きっとそうじゃ!うぉ、これ怖いw」
中に目的のそれが入っていると確信して妙にテンションがあがったオレらは、
そのロッカーみたいな、箱をはずしてみようとなった。
箱は掲示板には釘で打ち付けられているだけだったので、
みんなで引っ張ればはずれそうな気がした。
最初に、外に掛かってる絵馬を全部はずして、
車からもってきたマイナスドライバーで箱の打ち付けられている部分を持ち上げて、
指が入るくらいの隙間になってからみんなで引っ張った。
バキッ!と音がして箱が外れた。
「うぉ!外れた!」

484 ○○ 2005/10/27(木) 22:29:39 ID:vYtCijxl0
中には明らかに他のものより古い、黒ずんだ絵馬が入っていた。
みんな最初は黙ってみていたが、オレは絵馬に顔を近づけよく見てみた。
何も書いてない、、、裏返してみると、字らしきものが書いてある、、、。
みんなも顔を近づけた。
「おい、火ぃ点けて。見えんわ。」
友達がライターの火で絵馬を灯す。

大好きなYさん
大好きなYさん
祈ったのに
離れて行った
裏切られた
許さない

485 ○○ 2005/10/27(木) 22:30:25 ID:vYtCijxl0
「!!!」
みんな絶句した、、これは怖い!
「うぉ~~!怖ぇ~~~~!!!!」
テンションが上がったオレは調子にのってオーバーリアクションをしてしまった。
手に持っていた絵馬がオレが振った手に引っかかってポーンと飛んで行った。
「あっ!」
カツンと音を立てて落ちる絵馬。
オレは急いで拾い、すぐにもとの場所にかけた。
「、、、。やべ。」
「、、、さすが○○ちゃん。」
「いや、ホンマにわざとじゃないんよ、ちょっと調子乗ってもうて、、、」
友達に言い訳をしてもしょうがないのだが、なんだか怖くてそんなことを言った。
「ヤバいんかね?」
「、、、。ま、迷信じゃろ。なんもないよ、こんなもん。」
ちょっとビビりはじめたオレに気を使ってくれる友達にちょっとホッとしたその瞬間、

486 ○○ 2005/10/27(木) 22:31:20 ID:vYtCijxl0
「こりゃ~~~~~~~~~~~!!!!!」
ものすごい怒鳴り声!
オレは腰を抜かしてそこにへたり込んでしまった。
「また冷やかしかと思ったら、まさか外しおるとは、、、こんの馬鹿もんがぁ!!!」
いきなり怒鳴ったオッサンが神社の人だってのはすぐにわかった。
いい歳こいて、こんなところ見つかるなんて情けない、、、。
警察呼ばれたらヤバイかも、、、。
「すんません、、、。」X3
みんな謝るフリして、逃げるタイミングを目くばせして計ってた。
するとオッサンは、
「外したか?」
「あ、、。あの、、、はい。」
「箱外したんは見りゃ分かるわ!!絵馬じゃ!!絵馬は外しとらんじゃろうのぉ!!!」

487 ○○ 2005/10/27(木) 22:31:59 ID:vYtCijxl0
「あの、、、ちょっとだけ、、、ほんのちょっと。すぐに戻しましたよ。」
「、、、。」
オッサンは押し黙って、フゥーッとため息をついた。
「だれなら?外したんは。」
「オレ、、、です、、。」
「ちょっと来い。」
「いや、ホンマにすいません。出来心で。箱も直しますから、、、。ごめんなさい、、、。」
「えぇけ~、来い言うとろうが!」
オッサンはいかにも神社の人って格好をしているのに、まくしたてる様子はまるでヤクザだった。
オレは仕方なく、言うがままついて行った。
その時オレを置いて逃げようかどうしようか迷っていた友達の様子がとても憎らしかった。

488 ○○ 2005/10/27(木) 22:32:37 ID:vYtCijxl0
結局友達2人もついてきて、オレらは神社の裏手の建物の中に連れてこられた。
「さてと。」
オッサンは正座しているオレの前にしゃなりと座って、じっとオレの目を見た。
顔が怖くて目をそらしたかったが、そらしてはいけないような気がしてオレもオッサンの目をじっと見ていた。
しばらくして、
「あんたぁ、男前じゃの。」
「は?」
「彼女はおるんかい。」
「え?、、、ええ、一応。」
「好きなんかいの。」
「???、、、、ええ、まぁ、、。」
訳のわからない質問に困惑したが、なんとなく心配になって聞き返した。
「あの、、、彼女がなんかまずいことにでもなるんですか?」
「ん~、もしかしたら調子壊すかもしれん。」
「えぇ?なんで?」

489 ○○ 2005/10/27(木) 22:33:16 ID:vYtCijxl0
「あんたぁ、あそこまでしたんならあの絵馬が何か知っとるんじゃろ?」
「えぇ、噂で、、、。」
「あの絵馬があそこにかかっとるうちはの、女も悪さはせん。決して安らかな訳ではないがの。外すととたんに悪さをするんじゃ。自殺したもんもおる。」
「、、、、。」
オレは絶句した。
「オレらもヤバいんですか?」
後ろの友達2人が聞くと、
「ちょっと外れたくらいなら、あんたらは大丈夫じゃ。でもあんたは、ちょっと悪さされるかもしれん。あんたぁ男前なけー、もしかすると女を狙われるかもし れん。」
「ちょ、ちょっと、どうすればいいんですか!?」
幽霊なんか信じない。そう信じていたオレは、もう完全に霊の存在を肯定していた。

490 ○○ 2005/10/27(木) 22:33:53 ID:vYtCijxl0
「あんたに影が見えん。女の所に飛んだのかもしれん。もしかしたらなんもないかもしれん。女が調子悪くなったら、病院行く前にここに来い。」
オッサンは棚からメモ用紙を取り出し、電話番号を書いてオレにくれた。
「ええか?次悪さしたら警察突き出すけんの?わったか!?」
「ハイ!」X3
いい返事をして頭を下げて帰ろうとするオレらを呼び止めて、オッサンは工具一式を持ってきた。
「直して行け。」
オレたちは外した箱の修理をやらされた。まぁ当然と言えば当然なんだが、、、。
捲れた板をボンドでひっつけている途中、目の前で揺れる古びた絵馬が怖くて、マジで帰りたかった。
絵馬に箱をそっと被せて、釘を打ち直した。
「こりゃ、どうにかせんとのぅ、、、。」
オッサンが後でつぶやいた。

491 ○○ 2005/10/27(木) 22:34:41 ID:vYtCijxl0
その日は、なんだか大変なことをしたと思ったが、なんか実感がなかった。
帰りの車の中でも、
「いや~○○ちゃんはやる思うたよ。さすがじゃーや。うぉ、怖ぇ~~、ポーン!じゃもんの~、オレできんわ。」
「いや、マジでびびってもうたよ。でも正直オッサンのが怖かったけど。」
「ホンマよ、なんやあれ、ヤクザか思うたーや。」
緊張感などまるでなく、解放された安堵で逆にハイテンションだった。
「☆ちゃん(オレの彼女)も大丈夫よ、あんなぁ脅かすために言うたんじゃーや。」
オレも、まぁないだろう、、、と思っていた。
帰りに行きによったコンビニによって、店員に絵馬を外したと報告して帰った。
店員はどうなったか聞いてきたが、何もなかったと言うと、なぁ~んだと言った感じで笑っていた。

492 ○○ 2005/10/27(木) 22:35:26 ID:vYtCijxl0
次の日、一応心配だったオレは彼女に電話をして体調を確認した。
そんなことを聞いてくるオレを彼女は不思議に思って、何かあったのかと聞いてきたが、元気そうだったので次の日の休日に会う約束をして電話を切った。
その晩、彼女から電話があった。
「○○ちゃん?ごめん明日会えんかも」
「え?どした?」
ドキッとした。
「なんか風邪ひいたみたい。熱あるし、寒気もする、、、。治ったらいいんじゃけど、なんかひどくなりそうで、、、。もしダメじゃったらごめんね。」
オレは急に怖くなった。
「そう、、、あったかくして、今日はもう寝ーや。」
電話を切ってオレはすぐにオッサンにもらったメモがちゃんとあるか確認した。
電話番号を携帯のメモリーに入れて、メモも財布に入れておいた。
もし明日彼女の体調がやばかったら電話をしよう、、、。

493 ○○ 2005/10/27(木) 22:36:15 ID:vYtCijxl0
次の日、昼前に起きて彼女に電話を入れてみた。
何回かかけたが、出ない。
しばらく待ってまたかけた。さらに待ってまたかけた。
全く電話にでない彼女が心配になって、バイクで彼女の家に行った。
彼女は実家暮らしで実家の番号は知らなかった。
彼女の家について、チャイムを押そうとしたその時、玄関がガチャリと開いて、彼女を背負ったお父さんが出てきた。
「☆っ!、、、!」
お父さんはオレを見て、
「☆の友達?今はちょっと、、体調が悪いんじゃ。病院につれて行くけー。」
背負われている彼女は意識があるのか、ないのかもよくわからなくて、口をぱくぱくさせてやっと呼吸をしているといった感じだった。
(これは電話をしないと、、、。)

494 ○○ 2005/10/27(木) 22:36:57 ID:vYtCijxl0
すぐに携帯を取り出して、神社の番号に電話をかけた。
玄関から半ベソのお母さんが出てきて、お父さんにかけより、
「あなた、、救急車呼ぼう!」
「車の方が早い!」
なんて言い争いをしていた。それを聞いてオレはパニックになりかけてた。
『T神社です。』
「あの、○○と申します、神主さんを、、、Jさん(オッサン)を、、、!」
『は、はぁ、少々お待ちを』
保留音が2~3秒流れすぐにオッサンが出た、
『もしもし、大丈夫か?』
「彼女が、、、☆が、、、、!!」
『落ち着け!すぐに来れるか!』
「はい、すぐに、、すぐに行くから、、、助けて下さい!」
『すぐに来い!車か?気をつけぇ。それと、これは携帯電話か?』
「そうです、、、」
『じゃあ切るな!このまま彼女の耳に押し当ててわしの声が聞こえるようにせぇ!』
「わ、わかりました。」

495 ○○ 2005/10/27(木) 22:37:50 ID:vYtCijxl0
携帯を自分の耳からはなしたオレに両親はすぐ詰め寄ってきた。
「お、おい、今の話はなんや!どういうことや!」
「車で話します!だから、、、車貸して下さい!スグに!」
気づくとオレはベソかいて涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃだった。
「病院に行くんじゃないんか?訳を話せ!」
「神社に行くんです!オレが幽霊にちょっかい出したんです!そのせいで彼女がこうなってるんです!お祓いしてもらうんじゃ!スグ行かんと!!」
オレはまくしたてた。
オレのすごいけんまくに、両親も押され気味で困惑していた。
さすがにいきなり幽霊とか言われりゃ困惑するだろうが、、、。
「何言ってるの、、、病院行かなきゃ、、、!!あなた!!」
迷うお父さんの背中から、☆がふと目を開けてオレを見て言った。
「Yさん、、、」
絵馬にあった名前、、、大好きなYさん、、、オレは血の気がひいた。
両親を殴り倒して車を奪ってでも神社に行かなきゃ。
「行こう。」
急にお父さんが娘を車にのせた。

496 ○○ 2005/10/27(木) 22:38:51 ID:vYtCijxl0
「君が運転してくれ。」
オレはすぐに車に乗り込んだ。
お母さんは、
「あなた!本気!?どういうこと!?」
と錯乱気味だ。
お母さんも乗り込んできて運転席のオレにつかみかかるが、オレは構うもんかと車を発車させた。
そしてもめている両親の怒号を打ち消すような大声で叫んだ。
「この携帯電話を☆の耳に当ててくれ!!」
キーキー騒ぎ立てる母親を静止して、お父さんは携帯電話を彼女の耳にあてた。
すると彼女は苦しみ出した様子で、お母さんはもう狂ったように、
「やめてー!やめてー!」
と叫んでいた。
「これは、なんや!なんでこんなことするんや!」
「神社の神主さんがそうしろって!オレもわかりません、、!」
車の中はしばらく騒々しかったが、やがてお母さんも落ち着いてきて(というか疲れてきたというか、、、)お父さんは詳細を把握しようとオレに経緯を訪ね た。
オレは神社のこと、女と絵馬のこと、そしてあの夜のことを話した。
両親は信じがたかったろうが、特に反論もせず、それからはしきりに彼女の名前を呼んで励ましていた。

497 ○○ 2005/10/27(木) 22:39:32 ID:vYtCijxl0
神社につくと、オレは彼女の耳から携帯をとり自分の耳にあてた、
電話からは、オッサンのお経のような、呪文のような、そんな声が聞こえる。
「つきました!」
『~~~、、!そうか!すぐに前お前が入った建物まで運べ!』
オレとお父さんで急いで彼女を神社の裏手の建物に運んだ。
オッサンはなんか、神々しい格好をしていて、頼もしかった。
「彼女をここに!」
言われた通り、彼女をオッサンの前の布がひかれた場所に寝かせる。
オッサンはお経のような、呪文のような、歌のような。そんな言葉を発しながら、彼女の身体に手をかざしたりしはじめた。
たまに普通の日本語っぽい言葉も聞こえた。
そのうち彼女に変化があった。
「うぅ~~、うぉおお~~。」

498 ○○ 2005/10/27(木) 22:40:13 ID:vYtCijxl0
うなり声があがったと思うと、彼女は目を見開いて
「またかー!またかー!おのれー!おのれー!」
とすごい形相で叫び出した。身体は反り返り、たまにドスンと床に落ち、すぐ反り返る。
お母さんはその様子を見て気を失ってしまった。
オレももう身体がありえないくらい震えていた。
「違う!違うぞ!この男は違うのだー!」
「ヒャーッ!ヒャーッ!Y~~~~~!Y~~~~~!」
卒倒寸前のオレをオッサンはいきなり捕まえて、
彼女の目の前に突き出した。
「よく見るがいい!おまえの愛した男か!違うであろう!」
すごい彼女の形相。いや、これはあの女の顔なのか。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、違うんです、ごめんなさい、、、」
オレは絵馬を外したことを心のそこから謝った。

499 ○○ 2005/10/27(木) 22:40:50 ID:vYtCijxl0
「~~~~~~~~~~~~~~~~。」
声にならない声で唸っている彼女、、、そのうちそれはすすり泣きのようになっていった。
オッサンはそれをみはからったように、彼女の横にそっとしゃがみこみ、今迄とはくらべものにならないくらい小さな声で語りかけていた。
オレは腰が抜けて放心状態だった。横では彼女のお父さんもへたり込んでいた。
やがて、彼女はだんだん落ち着いた様子になり、オッサンは最後の仕上げとでもいうように、立ち上がり、またお経のようなものを呼んで、オレらの前にしゃな りと正座した。
「もう、大丈夫です。」
それを聞いてオレは涙がボロボロ出た。声をあげて泣きじゃくってしまった。
お父さんとオッサンがいろいろ話をしていたようだが、よく聞いていない。

彼女は気を失ったままで、意識が戻ってからでいいので、病院に行くようにと言われたらしい。
オッサンは帰り際にオレに話した。

500 ○○@終わりです。 2005/10/27(木) 22:42:02 ID:vYtCijxl0
「正直あの程度でここまでつかれるとは思わんかった。あんたぁ、よっぼど気に入られたんじゃのぉ。もう祓ったから心配いらん。
が、もう彼女には会うな。未練はそうとうなもんじゃ。またあんたと一緒におればああなるかも知らん。もう会うな。お互いの為じゃ。気の毒じゃがそう せぇ。」
彼女のことは好きだったので、ショックだったが、やむを得ないと思った。
オッサンは続けて、
「できればの、、、引っ越せ。この土地を離れぇ。それが一番安全じゃ。もとはと言えばあんたの軽はずみな行動が原因じゃ、反省せぇ。」
引っ越しはちょっと、、、と思ったが、やっぱりやむを得ないと思った。学校もやめなきゃ、、、。
その後彼女の両親に送ってもらった。お父さんは、こうなったのは君のせいだが、助けてくれたのも君だから礼を言う、と言ってくれた。
お母さんはずっと黙ってた。
オレは両親にもう彼女とは別れ、自分もこの土地を後にし、戻らないと約束した。
お別れも言えないなんてつらくて涙が出た。

その後オレは学校をやめて地元に戻り就職した。
その頃つるんでいた友達(心霊スポットを一緒に回った友達2人も)もちょくちょく遊びに来てくれたが、
誰も彼女のことや、あの夜の後日談に触れるやつはいなかった。


和菓子屋の取材

私は編集者をしており、主にイベントや食べ物屋さんなどの紹介記事を書いています。
こちらから掲載をお願いする事もあれば、読者からの情報を参考にしたり、その他お店からハガキFAXや、電話などで掲載以来を受ける事もあり、その場合、 なんとなく興味がわいたら取材に行くという感じ。
お店を選ぶ基準は、このお店なら色々書くことありそうだな~、こっちのお店はなんかいまいちだな~といったフィーリングによるものが大きいです。

ある日、締め切り明けで暇になり、みんなどこかに遊びに行ったり、得意先まわりに行ったりで編集部からほとんど人が消えました。
私は特に行く所もなく、何か面白いことないかな~と、その日届いた読者からのハガキを眺めていました。
その中にあった一通の封筒の中には、1枚の写真と便せん。
写真にはいかにも老舗って感じの古めかしい和菓子屋さんが写っていました。

便せんには、なんだかインクのしみというか…
書いて乾かないうちにこすってしまったような…
とにかく汚い字で「おいしいですよ ぜひ来てください」と書かれているだけです。
なんだか気味が悪かったんですが、逆にちょっと興味を引かれ、「暇だしのぞくくらいならいいか」という気分になりました。
「来てください」というなら恐らく自薦だろうと、便せんに書かれた住所を見て、だいたいの位置を把握しました。
…いつもは道路地図やネットで(最低でも店の名前くらいは)調べてから行くのですが、その時は暇だったのもあり、なんだか調べるのが面倒にだったんです。
見つからなければそれでいいや、くらいの軽い気持ちで出かけました。

1時間ほど車を走らせ、目的地周辺まで到着した私は、近くにあったスーパーに車を止め、そこからは徒歩で探す事にしました。
写真を見ながらてくてく歩く事、十数分。
だいたいの住所はこの辺だな…と見回すも、そこは閑静な住宅街といった感じで和菓子屋さんなんてありゃしません。
裏道かな?とわき道にそれると、一軒の(恐らく)空き家がありました。
雨戸は閉められ、庭は荒れ果て雑草が生い茂り、一目見ればわかるじめっとした雰囲気。
なんだか気持ち悪くなり目を逸らすと、突然上の方から視線を感じました。
はっとその方向を見ると、2階の一室だけ、雨戸が閉められていない窓がありました。
まさか人がいるのか…と、余計に気味が悪くなり、早々にその場から立ち去りました。

しばらく周辺を歩くもやはり写真のお店は見つからず、そのまま少しはなれた商店街まできてしまいました。
私は近くの雑貨屋さんに入り、ジュースを買うついでに店主のおじいさんに写真を見せ、詳しい場所を聞いてみました。
おじいさんは写真を見るなり怪訝そうな顔でしばらく考え込み、思い出したように言いました。

「ああ、これ、○○さんとこか!で、あんた、この写真どうしたの?」
「あ、私Aという雑誌の編集者なんですよ。それで、そのお店の取材に行こうと思いまして。写真はそのお店の方が送って来てくれたんですが」
「んん?そんなわけ無いよ。この店、10年くらい前に火事おこして焼けちゃったから」
「え!?…お店の方は?」
「みんなそれで焼け死んじゃったと思うけどなあ」
「…それで今はその場所、どうなってるんですか」
「そのあと新しく家は建って誰かしら引っ越して来たんだけど…
いや、まあ、その家族なんだかで長くしないうち引っ越しちまったから、いまは空き家だよ。しかしタチの悪いイタズラだなあ」

空き家…先程の家かもしれませんが、視線を感じたこともあり、確認するのが恐かったので、おじいさんにお礼を言い、そのまま編集部に帰りました。
帰って来ていた編集長に事の経緯を話し、例の封筒を見せようとカバンの中をあさりましたが、なぜか無いんです。
どこかに落としたのかもしれません。
車の中か?と戻ろうとすると、「多分無いと思うよ、それ」と編集長に引き止められました。

「5、6年前かな。俺が新人の頃さ、同じようなことがあったんだよな。そこに行ったのは俺じゃなくて先輩だったんだけど」
「あ、そうなんですか。行ったのはどなたですか?」
「いや、もういない。取材に行ったきり帰ってこなかったんだよ。××町の和菓子屋さん行くわってふらっと出掛けたっきり。
当時はけっこう大騒ぎになったんだよね。車ごと消えたから。先輩も車も、結局見つからなくてさ。
で、俺は先輩が行く前にその封筒も中身も見たんだけど、お前が言ってたのとだいたい同じ感じだったかな。
先輩のは確か「きてください」としか書いてなかったんだけどね。もちろん、いたずらかもしれないけどさ。気味が悪いよなあ。」

…その後、車の中を探しましたがあの封筒は見つからず…。
誰があの封筒を送って来たのか、なぜその先輩が消えたのか、私が呼ばれたのはなぜなのか…結局わからないままです。
それから3年たちましたが、郵便が届くたびにあの封筒が来ないか、ビクビクしています。


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