Archive for 9月, 2010

言われのない生霊

うちの祖母は大変熱心な仏教徒で、多額のお布施やお墓の管理費なども厭わず、平休日お構いなしで四国へお遍路の旅に出てしまうほど。

今日はそんな祖母にまつわるお話をしたいと思います。

祖母は娘(私にとっては叔母)を早くに失くしているせいか、死後の世界や霊的なモノにとても関心が深く、小さい頃から見事なまでに良くないモノを憑けてきては体調を崩していた私を何故か自慢に思っている節があります。

私を宗教仲間の前に引っ張り出して「この子には特別なチカラがある!」と吹聴したり「ここには何か感じるか」とあちらこちらに連れ回すなど、何かと困った所のある人なのでした。

私には確かに、人外のモノが見えたり聞こえたり感じたりすることがあります。
けれど自分では単に「合う波長の幅が人よりも少し広い」だけだと思っているので、チカラをコントロールすることなんて出来ないし、徐霊浄霊はおろか満足に意思を汲み取ることさえ出来ません。

それを祖母が過大評価して触れ回るものですから、私はいつしか祖母の信者仲間から色眼鏡で見られるようになっていました。
会ったこともない人の口にさえ、私の話題が上るくらいに。

その仲間内にTさんという人がいます。
祖母と同年代で姉弟子のような存在らしく、いつも威張ったような調子で会話する印象の強い人でした。

彼女曰く自分は御仏の声が聞こえるのだ、だから私の言うとおりしていれば極楽に行ける…と。
うさん臭いなぁとは感じながら、祖母の手前口には出せないし。

うちの母も祖母の影響を受けてかなり信心深いタイプなので、よくTさん主催のお遍路に連れられていたのですが、まだ出会わない時期から私はTさんに目をつけられていたそうです。

「この子は将来大犯罪を犯す」
「地獄に落ちる」
「仏を冒涜しているから、この子のせいで一族は栄えない」

などなど…さすがに祖母もそれを鵜呑みにしたりはしませんでしたが、私から目を離すなと母に言い含めていたようです。

それからです。
Tさんの話題が家族間で出るたび、左肩が重くなり体調が崩れるようになったのは…。

まるで憑かれた時のように、細々とした病気にかかり体力が衰える。
もしかしたら生霊では? とも思います。

何より恐ろしかったのは、友人宅(お寺)に招かれた時。
さすがにお寺だけあって、いつもはざわめくような、たくさんの人がいるような気配がするのに、私が入ったとたん波が引くように静かになったこと。

住職をされている友人のお父さんに、

「生きている人の念の方が何倍も強いからね。しかも、容易くは払えない。でも君は憑かれてもギリギリで踏みとどまって守ってくれる守護霊がついているから、大丈夫。相当てこずっているみたいだけど」

と…。もう、腹立たしくて一度は早くTさんがいなくなって欲しい、なんて思っていたくらいです。

季節の変わり目、と思いなんとか自分を誤魔化していますが、最近ひどくなった咳をするたびに左肩が気になります。
振り返りませんけどね、何かいたら怖いんで…。


不気味なバス

会社が休みのある夏の日、私は友人のA子とハイキングに出かけました。

気が付くと空は夕焼け色に染まり、ここまで乗ってきたバスの終点からかなり入り込んだところまで来てしまっていました。

A子「あ、いけない、最終バスが来る時間だわ」
こういう場所は交通が終わるのが早く、最終バスを逃すとふもとの町まで小一時間ほどかけて歩いて降りなければならない為、私たちは疲れた体にムチうち必死に降りました。

停留所まであと少しというところまで来た私たちは前方にバスを見つけると、必死に走り出しました。
しかし私たちに気づかなかったらしくバスは発車してしまいました。

山あいの道をとぼとぼ歩いているとついに辺りが暗くなってきました。
夜の山は昼間の風景が嘘に思える程不気味な顔を覗かせています。

とその時、二人が降りてきた方向からかすかにエンジン音が聞こえてきました。
後ろを振り返ると、確かに車がこちらに走ってきます。なんと近づいてきた車はバスでした。

私は思わず「なんだ、まだバスがあったんじゃない。ねぇ真紀子、乗せてもらおうよ…」とA子に提案しました。
ふたりはバスに向かって両手を振ります。バスがぐんぐんと近づいてきます。

そしてゆっくりとスピードを落として私達の立っている場所の数M先に停車しました。
そしてプシューという音とともにドアが開きます。

私達の振っていた手はぴたりと止みました。
なぜかというと、私達の目の前を通り過ぎた際の車内の様子が異様な光景だったからです。

バスの車内は青白く光っており、乗客の顔までよく見ることができました。
おかしいのは、乗客のすべてが席に座らずに立っていた事。そして手のひらを窓に押し当て、血走った目で外を見つめていることでした。

私達が放心状態になりながら立ち尽くしていると、バスはドアを閉め、ゆっくりと闇の中に消えていきました。
その後何とか歩いて山を降りましたが、おかしいなぁ、こんな時間にバスが走ってるわけないよ。そんな違和感を拭い去る事はできませんでした。

そう思いながらふもとに下りた私たちはバスの案内所を見つけると、そこにいた職員にこの出来事を話しました。
バスの様子を詳しく説明すると職員の顔色が変わってきました。

「それ…何年か前に転落事故を起こしたバスだよ、きっと。乗客全員が死んじゃってね…」

私たちはその話を聞いて、体から力が抜けていくのを感じました。
そのバスに感じた違和感のひとつに、今では倒産した会社の広告がバスの車体に貼られていたからです。

それから私の夢には毎日この日の出来事が繰り返されます。
夢の中で山を降りる私達の元にあのバスがやってきて、私達のちょっと先で停まるんですが、その停まるまでの距離がだんだん私達に近づいてきているんです。

私は夢の中でそのバスに乗るとどうなってしまうんでしょうか。


不気味な感覚

それは8年前の夏だった。転勤で家族と共に上京してから5年が過ぎていた。
いつもと変わらない夕方を妻子と過ごしていた時、電話が鳴った。
田舎に残してきた祖母からの電話だった。
祖父が倒れたらしく、すぐ帰ってきてくれとのこと。

数年前から病気がちだった祖父のこと…覚悟はしていたことだ。
私は荷物をまとめ、家に妻と2人の子を残し中国地方のある村へ車を飛ばした。
久々に走る夜中の高速道路。オレンジの明かりが近づいては過ぎていく。
高速を下りる頃、時計は午前二時を示していた。

車はさらに山道を走る。霧の中を懐かしい景色が流れていく。
走ること1時間、祖父の家に着いたのは夜が明けようとする午前三時すぎだった。
車を停めてから家までは少し歩かなければならなかった。
深い霧の中、ところどころに街灯のちらつく山道を歩いていく。
すでに都会に住みなれた私には山の空気は新鮮で、懐かしさを覚えた。

数分後、祖父の家に着いた。
家は木造平屋建てで、私の生まれる前からあり、一層古びている。
祖母は病院に行っているのか、明かりはついてなかった。
玄関の明かりくらい付けておけばいいのに、と思いながら戸を開けた。

鍵のかかっていないことを不思議に思った。
玄関にはカビ臭い匂いが漂う。いやに湿っている。
明かりをつけようと靴を脱ぎ家に上がると足の裏に違和感を覚えた。
どうやら床が腐りかけて軟らかくなっているようだ。

明かりをつけると私は家の様子に唖然とした。
天井にはくもの巣が張り、ところどころ腐って穴が開いている。
部屋へ続く廊下にはほこりが厚く積もっている。
祖母はこの家で暮らしていたのだろうか…
人のいる気配は全くうかがえなかったものの、何か、気味の悪いものを感じ、全身に寒気が走った。

ほぼ一晩眠っていなかった私は、少し横になろうと思い、かつての私の部屋へ向かった。
廊下を歩いて初めにある部屋が私の部屋、次にあるのが祖父の部屋、一番奥が祖母の部屋だ。
私は自分の部屋に入り、電気をつける。五年前にこの家を出た時と全く変わっていない。
私は荷物を置き畳の上に横になった。時折ホウホウという鳥の鳴き声が聞こえる。

長時間の運転で疲れきっていた私はすぐに眠りに落ちた。
ふと目が覚めた。時計を見るとまだ4時だ。
もう一度眠ろうと目を閉じようとしたとき、どこかから冷気が流れ込んでいるのに気づいた。
部屋の戸が少し開いている。確かに閉めたはずだが…。不思議に思い、廊下に出てみる。
祖父の部屋の前に来たとき、あの時の不気味な寒気が私を襲った。

戸を開けた瞬間、空気はかび臭い匂いから、この世のものとは思えない異臭に変わり、私は鼻を覆った。
明かりをつけると、布団の上に横たわる祖父の変わり果てた姿があった。
布団の周りには古くなった血が広がり、黒色に凝固している。

体全体は白い幼虫に覆われ、それらがうごめいている。
この村に来て初めて、生命感を感じた。不気味な生命感には変わりないのだが。
私は強烈な匂いとその姿に反吐をこらえるので精一杯だった。

急いで部屋へ戻ろうと廊下に出たとき、祖母の部屋の戸がゆっくりと開いた。
ぎぃ…ぎぎぎぎぃ。私はあまりの恐怖に足がすくんで動けなくなった。
戸の向こうから姿を現したのは包丁を手にし、やつれ果てた祖母だった。

薄明かりの中でその目だけがぎらぎらと光っている。
祖母はあまりにも不自然な笑みを浮かべ近づいてくる。
近づくにつれてさらなる恐怖が私を襲った。
祖母の足がないのだ。
あたかも足があるかのように、彼女独特の歩き方で上下に揺れながら、彼女の上半身だけが近づいてくる。

包丁からは鮮血が滴り、顔や胸は返り血を浴び、真っ赤に染まっている。
包丁を逆手に持ち、こうつぶやきながら。
「お前もじゃ、お前もじゃ…」
私は、殺されることを覚悟し、目をつぶった瞬間、私は目を開けた。

夢だったようだ。外はすっかり明るくなり、あまりのまぶしさに目を細めた。
しかし、次の瞬間、眠気は消え失せた。
私は気づいた、戸が開いていることに。

さらに、ゆっくり音を立てて開いていく。
ぎぃ…ぎぎぎぎ…ぎぎぃ
戸が開ききった時、再びあの不気味な感覚に襲われた。
即座に荷物を持って窓から飛び出し、私は車へと急いだ。


一体の人形

人形好きなおばあさんがいたそうな。

おばあさんには身寄りも無く一体の人形だけが友達であり、家族であった。
いつもの用に家事をしながら、おばあさんは一点を見つめて座り続ける人形に言った。
「毎日座ってたらつまらんだろう。あんたも歩ければ良いのにねぇ!」

翌日から人形は歩き始めた。その代わりおばあさんは歩けなくなった。
それでもおばあさんは人形を可愛がった。無言で歩き続ける人形にむかっておばあさんは言った。
「どこに行くの?答えられないか。あんたもしゃべれたらいいのにねぇ」

翌日から人形はしゃべり始めた。その代わりおばあさんはしゃべれなくなった。
さすがに歩けず、しゃべれない状態でおばあさんは苦しかった。
誰かに助けて欲しかった。目の前でケタケタ笑いながら歩いている人形を見ながら
心の中で思った。

「この子が人間だったら、世話をしてもらえるのにねぇ」

「 な ら ば 死 ね 」

人形はケタケタと笑って言った。


天狗倒し

皆さんは「天狗倒し」という怪現象をご存知でしょうか?
なんでも山で起こる怪現象で、木が倒れる音がするのに音を辿って行ってもなにも起こっていない、というようなものなのですが、この間怖い話を漁っていたところどうも山でだけ起こる怪現象ではないらしいのです。

その話によると、都会で起こる「天狗倒し」は近くで工事をしているわけでも無いのに、建物を建てる時にするような「カーン、カーン」という音が数日間続き、その翌年に放火などに合う。
そして、建て直すときに去年鳴り響いた「カーン、カーン」という音が再度鳴り響く、といった未来予知(?)みたいな話らしいです。
どこにでもあるような話で、自分も同じような体験をしていなければ、よくある都市伝説として処理していたと思います。

その日はいつもより早く床についたのですが、4時頃急に鳴りだしたけたたましい音で目が覚めました。
「カーン、カーン」という音です。

そんな熟睡している時間に起こされるようなことは今までなかったので、混乱しながらも「窓閉め忘れて寝たのかも」という結論にたどり着き、フラフラと窓に近づき閉めようとしました。
しかし、ちゃんと窓は閉まっていて鍵も掛かっています。
意味が分からなくなりながら、とりあえず外を確かめるため窓を開けるとさらにけたたましい音が鳴り響いていました。

騒ぎになるんじゃないか、と思う程大きな音だったのですが誰も起きてきません。
「こんな近くで工事なんてしてたっけ?」

と疑問に思いましたが、好奇心より眠さが勝ってその日は寝てしまいました。
一回きりならそのまま忘れていたと思います。
しかしそれが二日、三日と続くので流石に気になり親にこの辺で工事しているのかと聞いてみたところ、工事中の家は遠くに一軒あるだけで、家の近くに工事している家屋はないということでした。

先日「天狗倒し」の話を読んだ時にはかなりビビりました。
「天狗倒し」を知った後に起こったことなら夢か幻聴と考える方が自然だったかもしれませんが、実際には「天狗倒し」なんていう言葉も知らなかったのですから。
今年中に家から火が出ないことを祈るばかりです…。


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