これは去年の8月の話しです。
俺には4歳年上の、24歳の彼女がいます。
俺が1人暮らしをしているという事もあって、一昨年の冬頃から同棲を始めました。
それから去年の6月に、俺の仕事の事情で埼玉に引っ越す事になりました。
部屋は2LDKで何不自由なく2人で生活をしていました。
8月に入り、彼女が急に「背中が重くて吐き気がする」と言いました。
俺は霊感の強い方ですが、彼女の周りにはなにも見えませんでした。
そしてその日の夜、俺が次の日の仕事が朝早かったので、先に寝ていました。
彼女はしばらくゲームなどをしていたみたいです。
それからしばらくして、彼女もベッドに上がってきました。
彼女は壁側を向いて、俺と背中を合わせるようにして寝たそうです。
次の日の朝俺は仕事だったので、彼女を起こさず仕事に向かいました。
昼頃、職場で携帯を開くと、彼女からなんと20件の着信履歴、10件のメールが来ていました。
「なんだこいつ、気持ちわる」
と口に出しながらも電話をかけ直しました。
俺「もしぃ? おまえしつけぇよ、仕事中に電話かけてきたって出れねぇよ」
彼女「まぁくん助けてよ!」
俺「は? 何が? まだ背中痛いの?」
彼女「ってかさ、ウチ等の隣の部屋って、…誰か住んでる?」
俺「…俺、お隣りさん見たことないわ。なんで?」
彼女「ねぇ、引っ越そう?」
俺「はぁ? わけわからん! とりあえず仕事終わったらすぐかけるから!」
と言って電話をきり、仕事に戻りました。
そして仕事が終わって、電話をかけようとしたら圏外だったので、鬼ダッシュで帰宅しました。
家に着くと彼女は夕飯を作ってくれていました。
メシを食いながら、彼女に何があったのかを聞きました。
すると、
昨日の夜、眠くなってきた彼女は、ベッドに上がり壁側を向いて寝たそうです。
しかしなかなか眠れず、彼女がふと目を開けると、向いていた壁から、上半身だけを乗り出した裸の女性がこちらを見ていたそうです。
目を合わせないようにしていても、目を背く事ができなかったそうです。
いい年した女が泣いてすがってきました。
彼女は昔からよくストーカーや※漢の被害にあっていたので、1人でいるのがかなり苦手だそうです。
それを聞いて俺は次の日休みをもらい、彼女が寝るまで起きてる事にしました。
彼女は疲れていたので、ベッドに上がりしばらくすると寝てしまいました。
が、今度は逆に俺がなかなか眠れず、しばらくぼぉーっとしていると、
隣の部屋? から
「ピチャ、ピチャ、ピチャ、ズルッ」
と、変な音が聞こえてきました。
いくら霊感が強くても、奇妙な事があったら俺もそりゃビビります。
なんか変だと思い、寝ている彼女を起こしました。情けないけど怖かったんで笑。
寝起きでイライラしている彼女に小声で、
「なんか嫌な予感するから一緒に起きててよ!」
と言うと彼女はすぐに目を覚まし、一緒に壁側を向いて静かにしていました。
するとまた、
「ピチャ、ピチャ、ピチャ、ズルッ」
と聞こえてきました。
彼女も聞こえたらしく、小声で
「昨日もこういう音がしたから隣に誰か住んでるか気になったの!」
と言った直後、壁から人の吐息が聞こえてきました。
霊感はありますが、霊には慣れてないのでマジびびってました!
すると今度は2人して金縛りにあい、声が出ませんでした。
焦った俺は1回彼女の顔を見ると、彼女は壁の方から目を逸らさず、目を大きく開いていました。
そして彼女の目線を追うようにして壁を見ると、彼女の話してた通りのものが俺にも見えました。
本当に壁から上半身だけを乗り出して、こちらを見ている裸の女性を。
しかも何故かめちゃめちゃ睨まれてました。
気がつくと昼で、彼女は先に起きていました。
俺「なぁ、やべぇな、あれ…」
彼女「コクリ(うなずく)」
俺「ってかさ、俺久しぶりに夢見たの、なんかさ、俺、ピチャ、ピチャ、ズルッの音の原因わかった気がすんの」
彼女「あたしも!!」
「?!?!」
2人して同じ夢を見ました。
夢の中の視点が、壁から上半身だけを乗り出した女、つまりあの女が見ているものを夢で見たのです。
内容はこうです。
なぜか風呂場に立っていて、いきなり自分の髪の毛をひっぱるのです。
そして何十本も抜けた髪をビニール袋に包み、そのあと足と指の爪を歯で噛みちぎり、それもビニール袋に入れました。
そのあと歯磨き粉を付けずに歯ブラシで歯を磨き、磨き終わった歯ブラシを洗わずに同じビニール袋に入れたのです。
すると、誰かが帰ってきました。
何故か慌ててベランダに向かい、そこで夢は終わってしまいました。
俺と彼女はかなりビビって、大家さんに電話をし家に来てもらいました。
さっそく大家さんに昨日あった事を話すと、なにも知らないと言うのです。
納得のいかない俺は大家さんにお願いして、隣の部屋の鍵を貸してもらいました。
そして大家さんと一緒に隣の部屋を開けました。
部屋の中は全然普通でただの空っぽな部屋でした。
しかし、風呂場に入った瞬間、急に体が冷えました。
昨日見た夢の部屋と一緒だ。
俺は気になって風呂場を徹底的に探りました。
すると、天井にあるダクト? が少しだけ開いていたのです。
俺はビビりながらダクトを開け、中を覗きました。
中には、ビニール袋がありました。
なんか嫌な予感がしながら恐る恐る中を開けました。
その中身は夢で見たものとまるっきり同じでした。長い髪の毛、オレンジのマニキャアで塗られた爪、歯ブラシ。
俺と彼女の異変に気付いた大家さんは「どうしたの?」と言いたい様な顔をしていました。
俺はこのビニール袋を夢でも見た事を話しました。
そのビニール袋は大家さんが警察に届けてくれました。
それから2~3週間は特になにもなく、普通に暮らしていたのですが、ある日、彼女がまた背中が痛いと言うのです。
嫌な予感がしましたが気にせずその日は眠りにつきました。
次の日の夕方仕事から帰って、彼女にまた夢を見た事を話しました。
今回は彼女は見ていなかったようで、内容が、またこの日の夢も、あの女の視点の夢でした。
まず、空っぽの部屋の窓際で裸のままうつぶせになっていました。
しばらくすると顔を上げ、俺等の部屋の壁の裏側まではいずって行きました。
その途中、何回か「ピチャッ、ピチャッ」という音が聞こえました。
そして壁の前に着くとゆっくり立ち上がりました、この時「ズルッ」と言う音がしたのです。
すると壁に顔を近づけ、
「はぁ、はぁ」
と息を吐くのです。
そして壁に向かっていくと貫通し、そこには女を見てビビっている、布団にくるまった俺がいました。
ビビっている俺は気絶したのか、ぐったりしていました。
すると俺の部屋に入り、風呂場でいきなり自分の髪の毛をひっぱり、あのビニール袋の中身とまったく同じものを作り、ダクトの上に隠したあとベランダを摺り抜けて行く夢を見ました。
次の日、朝一で姉ちゃんにその事を話すと、わざわざ家まで来てくれました。
姉ちゃんは部屋に入ってすぐに口を開きました。
「これ生き霊じゃない?」
俺「?? え?」
姉「これ生き霊だよ絶対。前に隣に住んでた人、男でしょ?」
俺「わからんから大家さんに聞いてみる」
大家さんに連絡すると、確かに男でした。
姉「いるんだよこーゆうタチ悪い生き霊とか。あんた引っ越すしかないよ」
そー言われ、9月に引っ越しました。まぁ近所に引っ越しただけなんですが。